レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2015/03/04
- 登録日時
- 2016/12/24 00:30
- 更新日時
- 2016/12/24 09:30
- 管理番号
- 横浜市中央2464
- 質問
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解決
わらび餅は、本来わらび粉から作られるものだが、現在はほとんどのものがわらび粉以外で作られているときいた。
このことについて書いてある資料を見たい。
また、わらび粉以外の材料で作られていても、食品表示の原材料名を「蕨粉」と表示してよいのか。
- 回答
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1 わらび餅の材料及びわらび粉について書かれた資料
(1) 『日本名菓辞典』守安正/著 東京堂出版 1971年
p.362~364「蕨餅」
わらび餅の歴史、わらび餅と葛餅との関係について書かれています。
材料については、江戸初期の『料理物語』に「蕨の粉一升に水一升六、七合」と記されていることが書かれています。
また、わらび餅を名物としていた日坂宿(現・掛川市)の石屋のわらび餅について、室町時代の『東国紀行』(宗牧)と江戸時代の『丙辰紀行』(林道春)や『東海道名所記』(浅井了意)の記述を比較し、室町時代には本当の蕨粉を使用していたが、江戸時代から葛粉製のものを「わらび餅」として売っていたのではないかと考察しています。
(2) 『事典 和菓子の世界』中山圭子/著 岩波書店 2006年
p.150~151「わらび餅」
「さつま芋から作る甘藷澱粉を使っていることが多い。蕨粉は今や入手しにくい貴重な品で、非常に高価なためだ。餡入りの上生菓子として本物の蕨粉製の餅を作っている菓子屋もあるが、数は限られる。」
p.272「蕨粉」
蕨の根からとる澱粉。近年は入手しにくくなっており、「わらび粉」「わらびもち粉」として市販されているものは、甘藷澱粉やタピオカ澱粉であることが多い。
(3) 『澱粉科学の事典』不破英次/〔ほか〕編 朝倉書店 2003年
p.392 蕨澱粉について記載があり、「「蕨粉」の名で市販されている商品の中には甘藷澱粉などほかの澱粉で代用しているものも多い」とあります。
(4) 『料理食材大事典』主婦の友社/編 主婦の友社 1996年
p.920「わらび粉」「わらび餅」の項に、それぞれの製法について記述があります。
「わらび粉」の項目に「わらび餅粉として、イモでんぷんを主材料にしたものが市販されている」とあります。
「わらび餅」の項目には、「わらび粉(またはわらび粉50gとくず粉15gを合わせたもの)」とあります。
(5) 『菓子の事典』小林彰夫/編 朝倉書店 2000年
p.209「わらびもち」
製法が書かれています。材料の粉は「わらび粉」とあります。
これらの資料の、わらび餅の材料に関する記載をみると、古くは蕨の粉から作られていたが、現在ではほかの澱粉が使用される場合が多いことが分かります。
また、わらび粉に関する記載をみると、ほかの澱粉を主材料とした粉が「蕨粉」「わらび粉」等の名称で市販されることも多いことが分かります。
つまり「ほかの澱粉が主材料だが「蕨粉」等の名称で市販している粉」を 材料にわらび餅が製造されるケースも多いということになります。
そうした場合、原材料名に使用した粉の市販名称どおり「蕨粉」と記載される可能性も考えられます。
そこで、次に食品表示の原材料名の表示基準について、関連資料を確認しました。
2 食品表示の原材料名の表示基準について書かれた資料
(1) 加工食品品質表示基準(消費者庁ホームページ)
http://www.caa.go.jp/foods/pdf/kijun_02_120611.pdf
p.2
「原材料名
使用した原材料を、ア及びイの区分により、次に定めるところにより記載すること。
ア 食品添加物以外の原材料は、原材料に占める重量の割合の多いものから順 に、その最も一般的な名称をもって記載すること。ただし、2種類以上の原材料からなる原材料(以下「複合原材料」という。)については、次に定めるところにより記載すること。
(ア) 複合原材料の名称の次に括弧を付して、当該複合原材料の原材料を当該複合原材料の原材料に占める重量の割合の多いものから順に、その最も一般的な名称をもって記載すること。
ただし、当該複合原材料の原材料が3種類以上ある場合にあっては、当該複合原材料の原材料に占める重量の割合の多い順が3位以下であって、かつ、当該割合が5%未満である原材料について、「その他」と記載することができる。
(イ) 複合原材料の製品の原材料に占める重量の割合が5%未満である場合又は複合原材料の名称からその原材料が明らかである場合には、当該複合原材料の原材料の記載を省略することができる。」
(2) 食品表示法等(消費者庁ホームページ)
http://www.caa.go.jp/foods/index18.html
食品表示基準について(平成27年3月30日消食表第139号)
本体
http://www.caa.go.jp/foods/pdf/160331_tuchi1-hontai.pdf
p.7(加工食品1 義務表示事項(4) 添加物 ③その他)
加工デンプンを材料とする場合の添加物表示について記載があります。
「水・砂糖・香料・色素以外は加工デンプンだけからなる「わらび餅」(中略)はそのまま食品として喫食されるものであり、(中略)添加物製剤ではなく、加工食品と解される。このため、「餅」や「わらび餅」等の加工食品の表示に当たっては、添加物として加工デンプンを表示する必要がある。」
(3) 『製菓原材料入門 食品知識ミニブックスシリーズ』
早川幸男/著 日本食糧新聞社 2014年
p.142~「製菓原材料と表示」
義務表示項目のひとつに「原材料名」があります。
p.147「原材料の名称は(中略)一般消費者が分かる一般名を使用しなければならない」
(4) 『食品表示Q&A 制度の概要と実務に役立つ事例』
食品表示研究会/編 中央法規出版 2007年
p.70「最も一般的な名称」の判断について、個別の品質表示基準の中に、具体的に例示がない場合は「その固有名称を、食品衛生法(中略)等の公的基準で定義されている名称や「日本標準商品分類」「日本食品標準成分表」中の名称等を参考にして表示してください。」と解説しています。
(5) 『新食品表示の法律・実務ガイドブック 基礎からわかる』
石川直基/著 レクシスネクシス・ジャパン 2014年
食品表示作成の実務に関する資料です。原材料名についても解説があります。
これらの資料の記載から、原材料名の表示につき次のようなルールが確認できます。
・原材料に占める重量の割合の多いものから順に記載する
・最も一般的な名称をもって記載する
・複合原材料(2種類以上の原材料からなる材料)の場合、(省略できる場合を除き)複合原材料の原材料を記載する
・わらび餅は加工デンプンを材料とする場合、加工デンプンを添加物として表示する
ただし、具体的にどのように記載するかは個別に判断が必要であり、
「ほかの澱粉が主材料だが「蕨粉」等の名称で市販している粉」を
「蕨粉」の名称で原材料名に記載することが表示基準に適当合致か否か
について判断できる情報は得られませんでした。
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
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- 食品.料理 (596 8版)
- 食品工業 (588)
- 衛生学.公衆衛生.予防医学 (498)
- 参考資料
- キーワード
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 内容種別
- 質問者区分
- 登録番号
- 1000204687