レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2011年01月30日
- 登録日時
- 2011/02/12 15:23
- 更新日時
- 2023/06/22 16:42
- 提供館
- 岐阜県図書館 (2110001)
- 管理番号
- 岐県図-1284
- 質問
-
未解決
中日新聞2011年1月23日11面「こころの一作」で、うさぎカフェ店長・倉田直基氏が「かちかち山」の続編(ウサギがタヌキに仕返しされる)があり、「ウサギは自分から命を差し出して連鎖を止め」るといった内容のものがあると紹介していたが、この続編にあたる本の情報はないか。
- 回答
-
質問の内容に該当する作品は見つけられなかった。
以下は調査の詳細。
1 当館での所蔵(読みくらべ絵本33冊)を確認したが、該当のものは見つからなかった。
2 国際子ども図書館の児童書総合目録であらすじを検索したが、該当のものは見つからなかった。
3 筒井敬介『かちかち山のすぐそばで』(フレーベル館,1991)のあらすじ・解題には、下記の情報がありましたが、質問の内容には該当しない。
「ウサギが倒した木の下敷きとなってしっぽをなくしたオオカミはおこって、ウサギをたべた。タヌキはオオカミに感謝した。カチカチ山のあとのお話」
4 「かちかち山」をキーワードに、内容を確認した作品については、たぬきが泥舟で水に沈む等、たぬきをこらしめる、たぬきが改心する、うさぎが尻尾を切られる内容で終っておりそれに続く展開の作品は見つけられなかった。
5 昔話としての「かちかち山」を調査しましたところ、おばあさんを殺されて悲しむおじいさんのために、うさぎがたぬきにしかえしをするという現在の絵本に多いポピュラーなストーリーのもととなった民話・昔話を解説・収録する資料がある。
1)関敬吾『日本昔話大成 第1巻』(角川書店,1979)には、各地で伝えられている様々な形の「かちかち山」が紹介されていたがここで言う、続編にあたる内容は収録されていない。
2)神立幸子『日本の昔話絵本の表現 「かちかち山」のイメージの諸相』(てらいんく,2004)には、江戸期から戦後にわたる「かちかち山」の内容の変遷がまとめられていたが、たぬきがうさぎにしかえしをしてうさぎが命を差し出す等の内容はなかった。
ただし、水に沈められたたぬき(もしくは熊等)をうさぎが引き上げて、ある家でそれを煮て食べているところを家人に見つかって追いかけられ、刃物を投げつけられて尻尾を切られる。それ以来うさぎの尻尾は短い、という内容の昔話は各地に残っていることが上記の資料等からわかる。
6 「かちかち山」のストーリー構造の分類もすでに研究者の間で行われており、上記資料1)や3)関敬吾『昔話と笑話』(岩崎美術社,1977)や柳田國男の著作にも構造についての記述はありますが、たぬき(または熊など)が沈められた後の展開としては、上述の尻尾を切られるというストーリーが主で、
「うさぎが命を差し出して、(しかえしの)連鎖をとめる」というものは見つからなかった。
調査済み資料は下記の通り。
・読みくらべ絵本「かちかちやま」33冊
・関敬吾『日本昔話大成1』(角川書店,1979 7書庫:388.1/セ)
・『日本昔話通観 第28巻』(同朋舎出版,1988 7書庫:388.1/ニ)
・稲田浩二[ほか]編『日本昔話事典』(弘文堂,1978 児研:10.4/コ)
・神立幸子『日本の昔話絵本の表現』(てらいんく,2004 児研:11.4/カ)
・日本民話の会編『ガイドブック日本の民話』(講談社,1983 児研:11.4/ガ)
・柳田国男『柳田國男全集 9』(筑摩書房,1998 9書庫:380.8/ヤ)
・柳田国男『柳田國男全集 13』(筑摩書房,1998 9書庫:380.8/ヤ)
・柳田国男『柳田國男全集 29』(筑摩書房,2002 9書庫:380.8/ヤ)
7 新聞記事に掲載されているうさぎカフェ店長:倉田直基氏に直接確認を試みたが、店が28日まで休みで連絡が取れなかった。質問者には連絡先を紹介。
【追記】2023年6月15日
レファレンス協同データベース事業サポーターより情報提供あり
・『世界大百科事典』平凡社(2007.9)
→p.368に以下の記述あり
親敵討腹鞁 おやのかたきうてやはらつづみ
「黄表紙。2冊。朋誠堂喜三二(ほうせいどうきさんじ)作,恋川春町画,1777年(安永6)刊。〈かちかち山〉の後日譚で,子狸に親の敵とねらわれた兎が義理に迫られて切腹し…」
・毎日新聞 2017.11.16 地方版/秋田 26頁
木曜の窓:リレーコラム おとぎ話の続き=土井敏秀 /秋田
「ほかの「カチカチ山」もないかな、と探すと「続き」というべきものがあった。それは江戸時代中期の「黄表紙」(絵入りのこっけい本)の「親敵討腹鞁(おやのかたきうてやはらつづみ)」。ウサギはおばあさんの敵を討ちタヌキを殺したが、今度はタヌキの子どもがウサギを狙う――という設定だ。」
(中略)
「ウサギは川魚料理店に隠れているのをタヌキの子に見つかってしまう。だが敵討ちは「孝の道の義理」と納得し切腹するのだが、タヌキは一刀両断。だが、これで終わりではなく、ウサギは「ウ(鵜)」と「サギ(鷺)」になって飛び立っていくのだ。ウサギは新たに二つの命を産んだのである。これは「復讐(ふくしゅう)の連鎖」を断ち切ったことにならないか。…」
追調査を行った結果、「親敵討腹鞁」を収録した資料が当館に所蔵されていた。
・『日本ジュニア文学名作全集 1』日本ペンクラブ/編 汐文社(2000.3)
・『児童文学名作全集 1』日本ペンクラブ/編 福武書店(1987.1)
・『日本古典文学全集 46』小学館(1976)
・『近代日本文学大系 第12巻』国民図書株式会社/編 国民図書(1927)
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
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- 伝説.民話[昔話] (388 9版)
- 参考資料
- キーワード
- 照会先
- 寄与者
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- レファレンス協同データベース事業サポーター
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 質問者区分
- 図書館
- 登録番号
- 1000077947