レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2023年8月19日
- 登録日時
- 2023/11/03 14:50
- 更新日時
- 2023/12/03 16:51
- 管理番号
- 島根郷2023-019
- 質問
-
未解決
八重垣神社の前にある夫婦椿(連理玉椿)の説明に、クシナダヒメが地面に立てた櫛から生えた椿だという由来が書かれていたが、この由来はいつ頃確立したのか。
※八重垣神社は島根県松江市佐草町にある古社。鳥居の前や境内に、2本が互いに絡み合った椿があり、「夫婦椿」や「連理の椿」などと呼ばれている。
- 回答
-
当館所蔵の、八重垣神社に関する資料や、県内の椿に関するもの、古い名所案内、絵葉書などにあたったが、該当の由来がいつ確立したか、明確な記述は見つけることができなかった。
調査した内容を伝え、回答とした。
〇連理玉椿の由来が確認できた一番古いものは、資料1である。
これは、地元の私鉄一畑電鉄が発行した沿線案内で、発行年は明記されていないが、資料2:p.506-507の路線図と照らし合わせると、昭和10年4月1日~昭和12年3月の路線図と合致するので、この期間に発行されたと考えられる。
資料1には、連理の玉椿について、次の説明が書かれている。
「伝説によると稲田姫命がご両親なる脚摩乳、手摩乳のついて居た二本の杖を立てて置かれたのが芽を吹きだしたもの」
〇八重垣神社発行の資料で、連理玉椿の由来が確認できた最も古いと思われるものは、資料3であった。
神社境内各所を写した絵葉書8枚と「八重垣神社説明」がケースに入ったもので、境内で販売していたものだと考えられる。
「説明」の「連理の玉椿」には、由来について、資料1と同じ文章が書かれている。
ケースには、「一一.九.九参拝」と読めるメモ書きがあるが、資料の状態から昭和11年ではないかと推測される。
しかし、時代によっては、異なる由来が紹介されることもある様子。
資料4は資料3と同じく、八重垣神社境内で販売されていた可能性のある絵葉書セットである。
昭和62年1月に同神社から寄贈されており、発行もこの頃だと思われる。
「連理玉椿 鏡の池」の絵葉書には、由来について「素盞嗚尊が持たれた椿の枝が連理になったといわれ」とある。
〇連理の椿の存在は、江戸時代に書かれた資料にも記述が見られた。
資料5の原本は、松江藩松平家三代綱近の命で編纂された出雲地方(現在の島根県東部)の地誌で、享保2(1717)年に完成した。
p.110-112「佐草 八重垣神社」の項には、「鳥居の前に連理の椿あり(p.112)」と書かれている。
江戸期に成立したほかの出雲地方の地誌類(資料6~8)には、連理の椿の記述は見られなかった。
〇八重垣神社の由緒について、江戸期の八重垣神社由緒が、資料9:p.1-4に抜粋されているが、連理の椿については書かれていなかった。
資料10には、明治初期に県に提出された由緒が載っているが、椿については触れられていなかった。
〇小泉八雲は松江に居住していた時、八重垣神社も訪れている。
資料11:p.385-386に、玉ツバキについての記述がある。
二本が幹のまんなかで合していることや、ツバキは一般的に寿命が長いことに触れ、夫婦愛の象徴、また恋人たちの縁結びの神として崇められていると述べているが、由来は書かれていない。
〇八重垣神社に関する古文書類にもあたったが、内容は寄進状や安堵状といった政治的な内容で、神社の由緒に関する文書は見当たらなかった。
また、椿についても触れられていなかった。
当館で所蔵している同神社文書には、資料12所収の翻刻と、資料13の原本の複製がある。
資料14の佐草家は出雲大社の上官を長らくつとめた家であるが、出自は八重垣神社の近くで、この資料にも八重垣神社に関する文書が含まれている。
文書名から、神社の由緒が載っている可能性があると判断できるものはなかった。
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
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- 神社.神職 (175 8版)
- 中国地方 (217 8版)
- 伝説.民話[昔話] (388 8版)
- 参考資料
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【資料1】出雲御案内 : 八重垣神社 大庭大宮 熊野大社. 一畑電鉄自動車, 19??.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I074814843-00 (当館請求記号:貴重092.92/634 ※貸出禁止資料) -
【資料2】一畑グループ100周年事業実行委員会社史編纂委員会 編 , 一畑電気鉄道株式会社. 一畑電気鉄道百年史. 一畑電気鉄道, 2016.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I027240673-00 (当館請求記号:郷貸出686.3/イ16) -
【資料3】八重垣神社〔絵葉書〕. 八重垣神社.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I069330343-00 (当館請求記号:貴重091.7/611 ※貸出禁止資料) -
【資料4】〔八重垣神社〕 編 , 〔八重垣神社〕. 出雲八重垣本宮. 〔八重垣神社〕.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I069505048-00 (当館請求記号:貴重091.7/158 ※貸出禁止資料) -
【資料5】芦田伊人 編 , 蘆田, 伊人. 雲陽誌. 雄山閣, 1971. (大日本地誌大系)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I069476984-00 (当館請求記号:郷貸出6291.7/ア71) -
【資料6】小糠しのぶ 解読 , 小糠, しのぶ. 『懷橘談』<乾・坤>写本 : 2016年度文化庁「文化遺産を活かした地域活性化事業」. 出雲の石神信仰を伝承する会, 2017.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I074964947-00 (当館請求記号:郷貸出291.7/オ17) -
【資料7】富永芳久 編 , 富永芳久. 出雲國名所集. 岡田群玉堂, 1852.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I069535769-00 (当館請求記号:099.1/27 ※貸出禁止資料) -
【資料8】出雲鍬 意宇郡.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I069535626-00 (当館請求記号:貴重092.9/166/3 ※貸出禁止資料) -
【資料9】島根県史蹟名勝天然紀念物調査報告 第7輯. 島根県, 1935.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I036374136-00 (当館請求記号:092.9/21/7 ※貸出禁止資料) -
【資料10】意宇郡(松江市 八束郡)神社明細帳 複写.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I069435633-00 (当館請求記号:C1/1488 ※貸出禁止資料) -
【資料11】小泉/八雲 著 , 平井/呈一 訳 , 平井‖呈一. 日本瞥見記 上 第2版. 恒文社, 1986.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I023023838-00 (当館請求記号:郷貸出H938/14-b/1) -
【資料12】島根県教育委員会 編 , 島根県教育委員会. 出雲意宇六社文書 復刻版. 島根県教育委員会, 2000.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I069334046-00 (当館請求記号:郷貸出175.9/シ00) -
【資料13】八重垣神社文書・神魂神社文書.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I069363299-00 (当館請求記号:貴重092/278 ※貸出禁止資料) -
【資料14】島根県古代文化センター 編 , 島根県古代文化センター , 島根県古代文化センター. 佐草家文書目録. 島根県古代文化センター, 2003. (島根県古代文化センター調査研究報告書 ; 18)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000004273502-00 (当館請求記号:郷貸出029.9/シ03)
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【資料1】出雲御案内 : 八重垣神社 大庭大宮 熊野大社. 一畑電鉄自動車, 19??.
- キーワード
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- 八重垣神社
- 椿--島根県
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 登録番号
- 1000340653