レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2022年11月30日
- 登録日時
- 2023/04/13 15:02
- 更新日時
- 2023/12/03 14:54
- 管理番号
- 島根郷2023-005
- 質問
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1.昭和29年7月12日~19日に、佐藤春夫が島根県を旅行しているが、その詳細が知りたい。地元の新聞記事などで報道はないか。
2.佐藤春夫は、島根県立益田高等学校の校歌を作詞しているが、そのいきさつなどを知りたい。
- 回答
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当館所蔵資料を紹介し、回答とした。
1.昭和29年7月12日~19日の、佐藤春夫島根県旅行について
〇地元新聞(資料1)での報道
・7月12日3面:「佐藤春夫氏が津和野着」
佐藤夫妻は、7月11日午前11:57津和野着の列車で到着。
佐藤氏のコメントも掲載されている。
・7月13日2面:「森於莵氏が記念館へ」
森氏と佐藤夫妻は12日(11日の誤記?)正午津和野着後、津和野郷土館や稲荷神社内の茶室を訪れた。
12日は、詩碑除幕式後、旧中学校(現高校)に立ち寄る。その後春夫氏は津和野町鷲原の神代氏を訪ねた。
※森鷗外は島根県鹿足郡津和野町の出身
・7月13日3面:「きのう森鷗外三十三回忌」
佐藤春夫氏は13日午前9:43発の電車で、益田市に向かった。益田高等学校校歌の作詞についての打ち合わせのため。
・7月14日3面:「秘められていた鷗外の死因」
12日の行事の最後に、記念講演会があり、佐藤春夫氏も講演したとのこと。
・7月15日3面:「佐藤氏八雲旧居へ」
14日午前11:39松江着、皆美館で休憩後、小泉八雲旧居と菅田庵を訪れた。同夜は森於莵氏と合流し皆美館に宿泊。
・7月19日4面:「文学紀行石見路から出雲路へ」
森於莵氏、佐藤春夫氏らの対談記事。佐藤氏の発言によると、日付は不明だが、現在の松江市内では、布志名焼の船木道忠氏や、出雲民藝紙の安部栄四郎氏を訪ね、玉造温泉の長楽園に行っている。
また、恒松安夫知事の案内で、出雲大社に行った旨がある。
さらに、滞在をのばして、安来市の月山富田城や、松江市の熊野大社、八重垣神社などにも立ち寄るつもりであるとほのめかしている。
7月9日が森鷗外三十三回忌であることから、7月8日まで新聞をさかのぼったところ、以下の関連記事も見つかった。
・7月9日2面:「森鷗外をしのぶ」というコーナーに佐藤春夫氏が「思い出」を投稿している
〇資料2 p.16「佐藤春夫氏に従いて 月山にて」
金津十四尾氏が詠んだ和歌である。
タイトルや和歌の内容から、資料1:7月19日4面で、春夫氏がほのめかしていた月山への立ち寄りが実現したのではないかと推測される。
2.佐藤春夫による益田高等学校の校歌作詞について
〇資料3 p.21-22 校歌の由来
「生徒会総合誌」に掲載された文章の転載。
作詞依頼については、以下の内容がある。
・「佐藤春夫氏が森鷗外の句碑除幕式のため、津和野に来られた」
・「開校されて、まだ日の浅い本校には校歌、校旗がなかったので、「本校にも校歌を」という声がもり上」っていた
・「ぜひ佐藤氏に作詞をお願いしようと、急速に話が決まり、当時の校長吉田正男先生が特にお願いして、益高まで足を運んでもらうこととなった」
続いて、稿料についてのやり取りが紹介されている。
この文章は、以降の益田高等学校周年誌にも転載・引用されている。
※鹿足郡津和野町と益田市は隣接している
〇資料4 p.175-177「校歌の制定」
これによれば、佐藤春夫に依頼した作詞は、昭和29年10月1日に益田高等学校に届けられ、11月2の文化祭で、音楽部により発表されたとのこと。
歌詞に先立って届いた、佐藤春夫氏の手紙が紹介されている(学校新聞『益高新聞』の転載)。
また、p.134-135には、卒業生による校歌の思い出が綴られている。
〇資料5 p.198-202「校歌制定」では、以下の記述がある。
「この時期益田高校の校歌を作りたいという声があがるが、予算等の面でなかなか実現は難しかった。たまたま、佐藤春夫が森鷗外の句碑除幕式のために津和野に来ることを知った本校では、佐藤春夫に作詞を依頼しようと話が決まり、本校に来校してもらう運びとなったのである」
資料3に掲載の生徒会総合誌の文章と、資料4掲載の卒業生の思い出が転載されているほか、当時の生徒会長が「校歌誕生秘話」の寄稿が抜粋紹介されている。
- 回答プロセス
- 事前調査事項
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下の資料は調査済とのこと。
・『定本佐藤春夫全集』第2巻、別巻1
・『国文学解釈と鑑賞』第67巻3号「佐藤春夫文学散歩」
- NDC
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- 詩歌 (911 8版)
- 大学.高等.専門教育.学術行政 (377 8版)
- 参考資料
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- 【資料1】山陰新報 (※マイクロ資料)
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【資料2】出雲文化 第1巻第2号. 出雲文化刊行會, 1954.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I069321486-00 (当館請求記号:090.5/37/1-2 ※貸出禁止資料) -
【資料3】島根県立益田高等学校 編 , 島根県立益田高等学校. 益田高等学校創立60周年記念誌. 島根県立益田高等学校, 1974.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I069477841-00 (当館請求記号:0903.7H3/466 ※貸出禁止資料) -
【資料4】創立70周年記念誌編纂委員会 編 , 益田高等学校 (島根県立). 益高創立70周年記念誌. 島根県立益田高等学校, 1982.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002169134-00 (当館請求記号:0903.7H3/466/82 ※貸出禁止資料) -
【資料5】島根県立益田高等学校創立百周年記念事業実行委員会校史刊行部 編 , 益田高等学校 (島根県立). 益田髙等学校百年史. 島根県立益田高等学校, 2013.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I025804327-00 (当館請求記号:0903.7H3/466/13 ※貸出禁止資料)
- キーワード
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- 佐藤春夫
- 島根県立益田高等学校
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000332028