レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2022/12/08
- 登録日時
- 2023/01/09 14:50
- 更新日時
- 2023/03/11 11:35
- 管理番号
- 奈県図情22-1211
- 質問
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解決
宮内庁が管理している陵墓が、いつ、どのような経緯で宮内庁の管理になったのか分かる資料を探している。特に第5代孝昭天皇陵について知りたい。
- 回答
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『国史大辞典』の孝昭天皇の項目に「掖上博多山上陵」についての記述があり、「元禄の江戸幕府の探陵のさい当所を陵にあてた」と書かれています。
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孝昭天皇
『日本書紀』『古事記』に第五代と伝える天皇。和風諡号は観松彦香殖稲尊。『日本書紀』によれば懿徳天皇の子で、母は安寧天皇皇子息石耳命の女の皇后天豊津媛命。懿徳天皇二十二年立太子、同三十四年父天皇が世を去ると翌年即位、都を掖上池心宮に遷し、尾張連の遠祖瀛津世襲の妹の世襲足媛を皇后として孝安天皇をもうけ、在位八十三年、百十三歳(記では九十三歳)で没したという。→掖上池心宮(わきのかみのいけごころのみや)(関 晃)
掖上博多山上陵(わきのかみのはかたのやまのえのみささぎ)
奈良県御所市大字三室字博多山にあり、南南東に向く円丘である。『日本書紀』孝安天皇三十八年八月条によれば、天皇を崩後三十八年にして「掖上博多山上陵」に葬っているが、『先代旧事本紀』には崩御の翌年に葬ったとあるので、前者は改葬したものかとの説もある。『延喜式』諸陵寮の制は「在大和国葛上郡、兆域東西六町、南北六町、守戸五烟」とし、遠陵となっている。後世所伝を失ったが、当所の丘上には古くより天皇を祀る小祠があり、元禄の江戸幕府の探陵のさい当所を陵にあてた。その後幕末修陵の時、丘上の小祠を丘下の東側に移し修補を加えた。
[参考文献]
谷森善臣『山陵考』(『(新註)皇学叢書』五)、上野竹次郎『山陵』上
(中村一郎)
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下記の2点にも孝昭天皇陵についての記述がありますが、治定の時期については記載がありませんでした。
①「山陵考」p.97(『新註皇學叢書 第5巻』収録)
なお、この資料は『国史大辞典』に以下のように解説されています。幕末の山陵治定の論拠となったようです。
「山陵考証の書。谷森善臣著。四巻。山城・大和両国の山陵の所在について考証したもので、各上下二巻からなり、山城五十五陵、大和三十五陵を収めている。配列は国別に歴代順に従い、陵ごとにその所在と形状を述べ、典拠となる資料や従来の説を示しつつ、実地踏査の知見に基づいて考証している。善臣はこの書の執筆に先立って文献を渉猟し、山陵の徴証となる記事とその所在についての考説を蒐集して、『諸陵徴』『諸陵説』と題する二書を編し、また一方しばしば現地の探査を試みて、実地について具に検討を加えている。このように周到な基礎的調査を踏まえて作成された本書は、従来の考証に比して精密かつ具体的であり、江戸時代の山陵に関する考証は、この書によって大成されたということができる。善臣は文久二年(一八六二)に着手されたいわゆる文久の修陵に「調方」として参画しているが、そのころには本書の大綱はほぼ完成していたと見られ、幕末の山陵治定の論拠とされた。慶応三年(一八六七)十月山陵奉行戸田忠至(ただゆき)が修陵の成果を絵図に画いて献上した際に、この書が絵図に添えられたので『文久山陵図考証』ともいわれる。『(新註)皇学叢書』五、『勤王文庫』三に収める。なお、国学者大沢清臣は、善臣の書に除かれた河内・和泉・摂津・丹波などの諸国の山陵について考証し、明治十一年(一八七八)に同名の書『山陵考』を著わしている。宮内庁書陵部に写本を蔵する。(戸原 純一)」
②『「天皇陵」総覧 愛蔵保存版』
治定の時期が書かれている陵墓もありますが、孝昭天皇陵は記載がありません(「欠史八代」にあたり多くの学者がその存在を認めておらず、陵墓についても適切な遺構がなく、議論の対象にならないため)。
陵墓の治定やその問題点については下記の資料に詳しく書かれています。
『幕末・明治期の陵墓』
『天皇陵の近代史 (歴史文化ライブラリー:83)』
『日本古代の陵墓』
『天皇陵 (古代史研究の最前線. Frontiers of research on Japanese ancient history)』
- 回答プロセス
- 事前調査事項
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陵墓データベース – 國學院大學 古典文化学事業 は確認済。
https://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=ref_view&id=1000208325
- NDC
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- 系譜.家史.皇室 (288)
- 参考資料
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国史大辞典編集委員会 編. 国史大辞典 第5巻 (けーこほ). 吉川弘文館, 1985.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001708653-00 , ISBN 4642005056 -
物集高見 編 , 物集, 高見, 1847-1928. 新註皇学叢書 第5巻. 広文庫刊行会, 1931.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000039-I001874210-00 -
国史大辞典編集委員会 編. 国史大辞典 第6巻 (こまーしと). 吉川弘文館, 1985.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001769026-00 , ISBN 4642005064 -
水野正好ほか著 , 水野, 正好. 「天皇陵」総覧 愛蔵保存版. 新人物往来社, 1994.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000096-I001674439-00 , ISBN 4404020953 -
外池昇 著 , 外池, 昇, 1957-. 幕末・明治期の陵墓. 吉川弘文館, 1997.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002590699-00 , ISBN 4642036725 -
外池昇 著 , 外池, 昇, 1957-. 天皇陵の近代史 オンデマンド版. 吉川弘文館, 2017. (歴史文化ライブラリー ; 83)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I028577337-00 , ISBN 9784642754835 -
堀田啓一 著 , 堀田, 啓一, 1934-. 日本古代の陵墓. 吉川弘文館, 2001.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000003014025-00 , ISBN 4642023690 -
洋泉社編集部編 , 洋泉社編集部. 天皇陵. 洋泉社, 2016. (古代史研究の最前線 = Frontiers of research on Japanese ancient history / 洋泉社編集部編,)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000096-I005091221-00 , ISBN 9784800308108
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国史大辞典編集委員会 編. 国史大辞典 第5巻 (けーこほ). 吉川弘文館, 1985.
- キーワード
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- 陵墓
- 孝昭天皇
- 孝昭天皇陵
- 掖上博多山上陵
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000326895