レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2024/03/25
- 登録日時
- 2024/04/02 00:31
- 更新日時
- 2024/04/02 00:31
- 管理番号
- R1014406
- 質問
-
解決
堺市では、古くから酒造業が盛んであったとされている。ある時期を境に、酒造が衰退してしまった。その理由が記されている資料はあるか。
- 回答
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■は図書、□は雑誌、〇はWebサイト、●は新聞記事情報です
堺酒造業が衰退した理由については、以下の資料に記述があります。
■『清酒業の社会経済史:19/20世紀の眺望』(加藤慶一郎/著 御茶の水書房 2022.3)
p149-166「第7章 明治・大正期の堺酒造業:灘への進出を中心に」の中に、堺市酒造業の衰退について記述があります。資料によると、「明治31(1898)年~38(1905)年を経て、大正9(1920)年までが衰退期にあたる」とされています(p155)。
また、酒造業が衰退した理由として、以下が挙げられています。
「堺が酒造に必要な生産要素を、灘五郷近接地からの供給に依存していたこと(p164)」
「明治20年代以降の工業化進展による土地費用増大により、生産拡大が当地よりも灘五郷の方が容易に行えたこと(p164)」
「明治30年以降の堺酒造業の衰退は主に九州、中国地方及び台湾の市場でのシェアを失ったこと(p157)」
「清酒試験所における、醸造技術の革新が実現されなかったこと(p162)」
「堺地域の有力酒造家が他地域へ進出したこと(p164)」
■『堺市史 続編第2巻』(小葉田淳/編集 堺市役所 1971)
p8-9に大正期に堺市の酒造業が衰退した理由について「堺の水質は非常に悪く、醸造用に不向きでるというので、はるばる灘から仕込み水を輸送して作ったため、多大の経費がかかる。一方灘の本場で造石すると仕込み水の運賃が節約できるのみならず、販売も本場だけに都合がよい」ので「堺の酒造家たちは何れも灘へ走って酒をつくる」ために、堺市の造石数減少につながったと記述があります。
■『堺市史 続編第3巻』(小葉田淳/編集 堺市役所 1972)
p16に第2次世界大戦期の堺酒造業について「経済統制のため企業整備を余儀なくされ、昭和19(1944)年2月、約20軒の酒造家は(中略)資本金100万円の堺酒造有限会社に統合され」、戦災を免れた久世村に作られた醸造場を改造して生産を続けたが、21(1946)年4月には醸造量が450石まで減ったとされています。
●「堺造酒業 産額の減少をくい止めるため、高峰譲吉の指導で改良試験所を設置」(読売新聞 1886.7.6 朝刊 2頁)
明治19(1886)年、堺市に清酒改良試験所が設置された時の記事です。
「大阪府管下堺は従来造酒を以て名ある處なるも其の産額年を追ひて減少するは世上一般の不景気に因るものなりと雖も亦造酒家が従来の奮慣に安じて一も改良と図るなきに因る…」とあり、清酒の生産額減少は、酒造技術の改良が行われてこなかったことによると記述があります。
読売新聞(「ヨミダス歴史館」にて検索 最終確認日:2024.2.2)
●「灘五郷の清酒」(大阪毎日新聞 1903.2.26 朝刊 9頁)
明治26(1893)年から明治34(1901)年までの大阪の酒造高が掲載されています。
記事では、大阪の酒造高について「今日十萬石以上を醸造する地方にありても大阪愛知の如きは寧ろ年々減少の趨勢を呈せり」とあります。
毎日新聞(毎日新聞記事検索データベース「毎索」にて検索 最終確認日:2024.2.2)
また、堺市立図書館のホームページに、堺酒造衰退の経緯について記述があります。
〇堺市立図書館デジタル郷土資料展 「資料でみる『ものづくり・堺』のあゆみ:堺と酒造」
明治期・大正期の酒造業衰退の理由として
「良質の水が不足がちで、また市街地が密集する堺では酒造のための敷地を広げることが困難でした。このため堺の酒造家は、相次いで灘に進出」したことで、「しだいに堺の酒造は衰退」したとあります。
また、「戦前までは20数軒の酒造家が酒造りを行っていました。しかし戦時下において酒造が制限されて、18軒あった酒造業者は、昭和18年(1943)、堺酒造株式会社に一本化されました。戦争で多くの酒蔵は焼失し、戦後、堺酒造は新泉酒造と名前を変え、昭和47(1970)年に灘の酒造メーカーと合併して堺の酒造は消滅しました。」
とあります。
https://www.lib-sakai.jp/kyoudo/kyo_digi/monodukurisakai/monodukuri_syuzou.htm
最終確認部:2024.2.2
以下の資料にも、上記の資料と同様の記述があります。あわせてご紹介します。
■竹田芳則「鳥井駒吉と堺の酒造業の歴史」『フォーラム堺学』<21>(堺都市政策研究所 2015.3)p79-82
■三木弘・渡辺晴香「堺の酒造業について:SKT959の調査成果とその位置付け」『大阪文化財研究』<32>(大阪府文化財センター 2007.10)p132-133
■『大阪の民具・民俗史』(小谷方明/著 文化出版局 1982.9)
p343-347「堺の地酒」
□中居正弘「堺酒造の変遷」『大阪春秋』<121>33(4) (新風書房 2005.1-2006.1)p70-71
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
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- 食品工業 (588)
- 近畿地方 (216)
- 参考資料
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- B14065398 清酒業の社会経済史 加藤/慶一郎‖著 御茶の水書房 2022.3 588.52 978-4-275-02161-8
- B10703082 堺市史 続編 第2巻 小葉田/淳∥編集 堺市役所 1971 216.3
- B10703083 堺市史 続編 第3巻 小葉田/淳∥編集 堺市役所 1972 216.3
- B13187228 フォーラム堺学 第21集 堺都市政策研究所 2015.3 216.3 978-4-907907-20-4
- B14820519 大阪文化財研究 2007/10 32 大阪府文化財センター 2007.10.01
- B10614355 大阪の民具・民俗志 小谷/方明∥著 文化出版局 1982.9 383.93
- B14830868 大阪春秋 2005/01-2006/01 32(4)33(1-4)<117-121> 新風書房 2005.01.01
- 堺市立図書館デジタル郷土資料展 「資料でみる『ものづくり・堺』のあゆみ:堺と酒造」 https://www.lib-sakai.jp/kyoudo/kyo_digi/monodukurisakai/monodukuri_syuzou.htm 2024.2.2
- キーワード
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- 堺市
- 酒造業
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 質問者区分
- 登録番号
- 1000348605