レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2022/01/28
- 登録日時
- 2022/03/16 00:30
- 更新日時
- 2022/03/16 00:30
- 管理番号
- 6001054029
- 質問
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解決
帝王切開後に経腟分娩するときのリスク(デメリット)について知りたい。
- 回答
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帝王切開後の経膣分娩には、子宮破裂や児死亡率の増加などのリスク(デメリット)があります。
以下の資料に記述がありました。
文中の「TOLAC」とは帝王切開を経験した方が、その後の妊娠で経膣分娩する(試みる)ことです。
<図書>
・『標準産科婦人科学(Standard Textbook)』(綾部琢哉/編集 板倉敦夫/編集 医学書院 2021.3)
p.581「前回帝王切開の分娩管理」に「TOLACにおいて最も問題となるのは、前回帝王切開創部における子宮破裂である。一般的に、帝王切開既往のない自然子宮破裂の頻度は、約17,000例に1例(0.006%)と考えられているが、TOLACを行うと約1%に子宮破裂が発生するとされている。よって、帝王切開の既往のある妊婦が経膣分娩を希望した場合には、子宮破裂のリスクを念頭においた分娩管理が必要となる。」という記述があります。
p.581-582「TOLACのメリットとデメリット」に「TOLACが不成功となった場合には、手術分娩に伴うデメリットを負うことに加え、母体には子宮破裂、子宮摘出などの手術、輸血、感染のリスクが増大し、児には臍帯動脈血pHの低下、低アプガーApgarスコア、感染リスクが増加する。母体死亡は稀であるが、児死亡率は約0.5%と考えられ、これは予定帝王切開の約1.7倍のリスクである。」という記述があります。
・『安心すこやか妊娠・出産ガイド:妊娠・出産のすべてがこの1冊でわかる』(関沢明彦/監修 昭和大学病院総合周産期母子医療センター/編 メディカ出版 2020.6)
p.208「TOLACのリスク」に「帝王切開をした場合、切開した部分が弱くなっているために、経膣での分娩の途中で急に子宮破裂を起こすことがあります。子宮破裂が起きた場合は開腹手術が必要で、時には子宮出血の止血が困難なために子宮摘出を余儀なくされる場合もあります。このため、施設によっては安全策として「帝王切開後の分娩は再び帝王切開」を勧めています。しかし、TOLACで子宮破裂を起こす頻度は約0.5%でそれほど高くはありません(完全子宮破裂が起こった場合の母体死亡率は0.01%、児の死亡率は0.5~0.6%と報告されています)。一方で、TOLACを選択した場合に、赤ちゃんが新生児仮死の状態で生まれてくる頻度は2.2%で、帝王切開をした場合より2倍以上多いというデータも報告されています。そのような事情で、近年、TOLACを希望する妊婦さんは減少し、また、TOLACを実施しない施設も増えています。」という記述があります。
・『ウィリアムス産科学 2版』(F.Gary Cunningham/[ほか]編 岡本愛光/監修 佐村修/[ほか]監訳 南山堂 2019.5)
p.730-731「帝王切開後試験分娩と選択的反復帝王切開の危険性」に「子宮破裂のリスクは予想以上にあるといわれており、ACOG(1988、1998、1999、2017a)の診療ガイドラインでは、TOLACを支持するだけではなく、より注意深く行うように促す方向に改訂している。TOLACもERCDも、どちらも母体と胎児に対して危険性・有益性をはらんでおり、必ずしもどちらがよいと言い切れないことがあるのが難しいところである。」という記述があります。
p.731-732「母体のリスク」「胎児と新生児のリスク」にTOLACでの母体、胎児、新生児のリスクについて詳しい記述があります。
<web>
・「産婦人科診療ガイドライン産科編2020」(2022/1/28現在)
http://www.jsog.or.jp/modules/about/index.php?content_id=16
p.199-201「帝王切開既往妊婦が経腟分娩(TOLAC, trial of labor after cesarean delivery)を希望した場合は?」の項のp.199に「TOLAC における子宮破裂率は0.2~0.7%と報告されているため、実施にあたっては文書による説明と同意を取得する。母体死亡率に関するシステマティックレビューでは、TOLAC は選択的帝王切開に比べて母体死亡率を有意に減少させる(それぞれ0.004%、0.013%)。TOLAC では選択的帝王切開に比べて周産期死亡率がそれぞれ0.13%と0.05%、新生児死亡率がそれぞれ0.11%と0.06%で有意に高い。また母児合併症のリスクは、TOLAC が不成功となった場合、特に高くなる。」という記述があります。
[事例作成日:2022年1月28日]
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
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- 婦人科学.産科学 (495 10版)
- 参考資料
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- 標準産科婦人科学 第5版 綾部/琢哉‖編集 医学書院 2021.3 (581-582)
- 安心すこやか妊娠・出産ガイド 改訂4版 関沢/明彦‖監修 メディカ出版 2020.6 (208)
- ウィリアムス産科学 2版 F.Gary Cunningham‖[ほか編] 南山堂 2019.5 (730-732)
- http://www.jsog.or.jp/modules/about/index.php?content_id=16 (産婦人科診療ガイドライン産科編2020(2022/1/28現在))
- キーワード
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- 帝王切開(テイオウセッカイ)
- 経膣分娩(ケイチツブンベン)
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- その他
- 質問者区分
- 個人
- 登録番号
- 1000313657