レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 登録日時
- 2023/03/31 17:39
- 更新日時
- 2023/03/31 17:39
- 管理番号
- 0001003621
- 質問
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解決
上江洲倫完が琉球で最初に種痘を行った人物ということがわかる資料はあるか。また、上江洲の種痘法は琉球でどのように広がっていったのか。
- 回答
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琉球で最初に種痘を行ったのは上江洲倫完であるが、その方式は「人痘種痘法」あるいは「支那式人痘吹鼻法」と呼ばれるもので、後年に仲地紀仁が行った牛痘とは別の方式である。
人痘種痘法の広がりについては、1778年に天然痘が流行した際に2人の医生に方法を教え、藩命により3人で三地域を回り種痘を行っている。その後天然痘の流行が起こった際に、その対策として種痘が実施されていたようである。
下の資料を案内した。
①
『琉球の種痘』(金城 清松/著 琉球史料研究会 1963.3)
序文1p 「…わが沖縄においては、それに先だつこと二十三年の一七六六年(明和三年。琉球尚穆王十五年)に、すでに那覇西村の医師上江洲倫完によって実施成功したのである。」とある。
p15 「医宗金鑑の我が邦に輸入せられたのは一七五二年(宝暦二年乾隆一七年尚穆王元年)で出版後十年目である…琉球にて上江洲倫完が種痘したのは一七六六年で、種痘心法の翻刻より十二年前である。」とある。
p24-25 「因て風気流行遅緩するを思惟し遂に種痘の法を用いたので、家の男女七人始めて染まり痘にかかった。但し軽くして全く癒えたが、これより世上火速に時行(はやる)した。これが琉球に於ける始めての種痘で、日本に於て緒方春朔が始めて種痘を施したのより二十三年も前である。次に一七七八年(安永七年乾隆四三年尚穆王二十七年)の痘瘡流行に際し、命により上江洲倫完は本島三地方に種痘を施した。同家系譜によると…種痘の法を施用し医生川上、仲村渠をして其法を伝授せしむ、川上、仲村渠、国頭、島尻を巡行せしむ、われは中頭を巡行し種痘の法を施行す。」とある。
p26 「我が琉球に於ては一七六六年(明和三年乾隆三一年尚穆王一五年)上江洲倫完始めてこれを施行したが、これは我琉球防疫史上注目すべきもので、日本の緒方に先立つこと二十三年で、日本に於て医宗金鑑の種痘篇翻訳、種痘心法の刊行せられたより十三年前である。而も一七七八年(安永七年乾隆四三年尚穆王二十七年)の流行には本島全部に渉り種痘を施行しているが殊にそれは藩庁の命によってなされており、如何に琉球が防疫に意を注いでいたかが解る。」とある。
p29-30 「日、支、琉、支那式人痘種痘表」に、琉球では「上江洲倫完鼻乾苗種痘法初めて実施 一七六六」「上江洲倫完等琉球本島全部に種痘を施す 一七七八」「痘流行上江洲倫完種痘す 一七九一」「痘流行、種痘施行 一八四一」とある。
②
『沖縄疾病史』(稲福 盛輝/著 第一書房 1995.9)
p198-199 「年次別流行年表」(p197-200)より、上江洲倫完が種痘を行った1766年以後も1年から数年おきに天然痘の流行が発生していることがわかる。しかし、そのたびにどのような対応がとられたかについては一部の年を除いて記載されていない。例として、p199に「1792年(寛政4、尚穆41) 渡嘉敷島に大流行す。当時小嶺某が能く治療を心得ていたので阿波連、渡嘉敷両間切で治療したので、これによって死亡するものはなかったようである。宮古の伊良部間切でも流行が見られた。」とある。
p213-214 「沖縄においては、1766年(明和3、尚穆15)に上江洲倫完が薩摩留学中、当時沖縄で痘瘡が流行していたので藩命により、長崎の医師からその治療法、痘痂の取り集め方、痘のうつし方を学んで帰国し、琉球王府の命令により、人痘吹鼻法を用いて痘瘡を急速に流行させた。これが沖縄初の人痘種痘法である。これは本土より23年も前に実施された。また、1778年(安永7,尚穆27)…さらにこの年の痘瘡の流行は、沖縄全島にわたり、藩命によって種痘を実施しており、これらの事項は沖縄痘瘡貿易史上特筆すべきことである」とある。
③
『沖縄医学史 近世・近代編』 (稲福 盛輝/著 若夏社 1998.12)
p87 「第9章 近世期に活躍せる医師達」(p79-106)の中の、「3 上江洲家、1)上江洲(新嘉喜)倫完」の項に「明和3・尚穆15年(1766)に薩摩に留学し…彼が留学中琉球では疱瘡が流行していたので長崎医師に従い種痘について学んで帰国し、鼻乾苗種痘を施し、その後の流行毎に一般住民に施行した。」とある。
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
- 参考資料
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- 琉球の種痘 金城 清松/著 琉球史料研究会 1963.3 (序文、p15、p24-26、p29-30)
- 沖縄疾病史 稲福 盛輝/著 第一書房 1995.9 (p198-199、213-214)
- 沖縄医学史 近世・近代編 稲福 盛輝/著 若夏社 1998.12 (p87)
- キーワード
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- 上江洲倫完
- 種痘
- 人痘種痘法
- 支那式人痘吹鼻法
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000331319