レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 20170827
- 登録日時
- 2018/11/30 00:30
- 更新日時
- 2024/03/11 09:49
- 管理番号
- 0001003022
- 質問
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解決
沖縄で乾杯の際に「カリー」という発声をするが、いつ頃から使われ始めたか。
- 回答
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(2024.3.8追加・修正)
沖縄で「カリー」は縁起の良いことの意(資料①~③)だが、これを乾杯の発声として提唱したのは、オリオンビール株式会社の元副社長である比嘉良雄氏といわれている。参照した資料には、「沖縄には乾杯の習慣はなかったようで、だから当然言葉もない。「なければ造るべし」と、外間守善法政大教授にソソノカされて、俄然その気になった」(資料④)、「…沖縄独特の乾杯のやり方はないものか…「カリーではどうでしょう」と提案したのが琉舞のお師匠さん玉城節子さんだった。…比嘉さんは、「カリー布教」を昭和六二年、オリオンビール副社長時代に始めた。」(資料⑤)との記述がある。比嘉良雄氏が副社長を務めていたのは1987(昭和62)年から1991(平成3)年(資料⑥)であり、同時期から使われ始めたと考えられる。
なお、1990年の第1回世界のウチナーンチュ大会※では、ペルー県人会顧問の伊芸銀勇氏が「公の場で初めて『カリー』と発声し、乾杯のカリーが定着した大会だった」(資料⑦⑧)との記録がある。また、1998年発刊の『沖縄コンパクト辞典』には、「最近では、乾杯の音頭の発声に「かりー」として使われたりする。」(資料①)との記述がある。2006年には、県内での認知を広めようと、前述の比嘉良雄氏を構成員とする「カリー」推進協議会を発足する動きもあった(資料⑨)。
※世界のウチナーンチュ大会:移民など海外の沖縄県系人とのネットワークの継承、発展などを目的として5年に1回開催されるイベント。
①
『沖縄コンパクト辞典』(琉球新報社/編 琉球新報社、1998.9)
p121 「かりゆし」の項に、「沖縄方言で縁起のよいこと、めでたいことの意。…最近では、乾杯の音頭の発声に「かりー」として使われたりする。」との記述がある。
②
『琉球語辞典』(半田 一郎/編著 大学書林、1999.11)
p270 「Karii《名》【嘉例】めでたい[縁起のよい]こと」の用例に、「Karii (sabira) !乾杯(しましょう)!」との記述がある。
③
『うちなーぐち活用辞典』(宮良 信詳/著編 国立国語研究所言語変異研究領域、2021(令和3).3)
p77 「かりー<嘉例、縁起が良いこと>」の用例に、「ちかぐろー うゆうぇーをぅてー さき ちじに かみてぃ 「かりー」 んでぃ いちょーん。(近頃はお祝いの席では酒を頭上に上げて「嘉例(乾杯)」と言っている)。」との記述がある。
④
『琉球弧 あまくま語り』(中村 喬次/著 南方新社、2004.9)
p97-98 「カリーさびら!」の項の中に、「…紳士は、NHK沖縄放送局の比嘉良雄局長。乾杯の音頭を指名されるたびに、これ[カリー]をやる。(略)「私がビール屋(前オリオンビール副社長)だったころから、これやってますから、かれこれ十年になりますよ。…」(略)沖縄には乾杯の習慣はなかったようで、だから当然言葉もない。「なければ造るべし」と、外間守善法政大教授にソソノカされて、俄然その気になったという」との記述がある。
⑤
『オキナワなんでも事典』(池沢 夏樹/編 新潮社、2003.7)
p139-141 「かりゆし」(中村 喬次/文)の項に、「乾杯の音頭にこれを取りこんで、自ら布教にこれつとめているのが比嘉良雄氏である。…ヤマトゥ→ヤマトのおしきせでない、沖縄独特の乾杯のやり方はないものか…「カリーではどうでしょう」と提案したのが琉舞のお師匠さん玉城節子さんだった。…比嘉さんは、「カリー布教」を昭和六二年、オリオンビール副社長時代に始めた。」との記述がある。
※「あまくま琉球」(https://amakuma.ryukyu/kariyushi/)(最終アクセス日:2024年3月8日)にも同一の記事あり。
⑥
『オリオンビール50年のあゆみ』(オリオンビール株式会社50周年記念誌編集委員会/編 オリオンビール、2008.10)
p300-301「役員任期の変遷」に、代表取締役副社長として「比嘉良雄 1987.6-1991.6」との記述がある。
⑦
『琉球新報[原紙]』(琉球新報社/編・刊、2016.3)
2016年3月23日朝刊30面 「第6回世界のウチナーンチュ大会 <10月26日~30日>県人大会成功へ光文堂が200万円」の記事に、「第1回大会はペルーの大先輩、伊芸銀勇先生が公の場で初めて『カリー』と発声し、乾杯のカリーが定着した大会だった」との記述がある。
⑧
『世界のウチナーンチュ大会写真集』(世界のウチナーンチュ大会実行委員会/編 世界のウチナーンチュ大会実行委員会、1990.8)
p40 レセプション大会(コンベンションセンター)にてグラスを掲げる伊芸氏の写真(1990年8月23日撮影)が収録されており、「乾杯のことばは、三ヶ国語。カリー。サルー。サウジ。(略)ペルー県人会顧問の伊芸銀勇氏が音頭をとった。」とのキャプションが付いている。
⑨
『琉球新報[マイクロフィルム複製本] 2006年10月1日〜15日[平成18年]』(琉球新報社/編、2018.3)
2006年10月3日夕刊3面 「世界に響け「カリー」/ウチナーンチュ大会向け推進協」の記事に、「提唱者の一人で20年以上『カリー』の定着に取り組んでいる比嘉良雄さん」、「…「カリー」の乾杯を、世界のウチナーンチュ大会の開催を機に一基に普及させようと、このほど「カリー」推進協議会が発足した。」「(協議会の嶺井政治会長)は「南米では『カリー』が認知されているが、県内ではまだまだ。大会を機に、県内どこでも乾杯は『カリー』となるよう広めていきたい」との記述がある。
以下の資料には、「カリー」と乾杯について該当する記述はなかった。
⑩『沖縄事始め物語』(山城 善三/著 旭広研、1971.7)
⑪『沖縄語辞典』(国立国語研究所/編 5刷 大蔵省印刷局、1976.9)
⑫『沖縄大百科事典 上 ア〜ク』(沖縄大百科事典刊行事務局/編 沖縄タイムス社、1983(昭和58).5)
⑬『沖縄事始め・世相史事典』 (山城 善三/編著、佐久田 繁/編著 月刊沖縄社、1983.12)
⑭『沖縄いろいろ事典』(ナイチャーズ/編、垂見健吾[ほか]/著 新潮社 1992.3)
⑮『沖縄語辞典』(国立国語研究所/編 9刷 大蔵省印刷局、2001.3)
⑯『日常会話のウチナーグチ6500 沖縄語ミニ辞典』(玉城 雅巳/著 南風社、2002.6)
⑰『沖縄語辞典 那覇方言を中心に』(内間 直仁/編著,野原 三義/編著 研究社、2006.5)
⑱『沖縄民俗辞典』(渡邊 欣雄 [ほか]/編、岡野 宣勝/編、佐藤 壮広/編、塩月 亮子/編、宮下 克也/編 吉川弘文館、2008.7)
⑲『うちなあぐち大字引(うふじいふぃち)沖縄語大辞典』(比嘉 清/著編 南謡出版、2019(令和1).11)
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
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- 言語 (8)
- 参考資料
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- 沖縄コンパクト辞典 琉球新報社/編 琉球新報社 1998.9 , ISBN 4-89742-017-2 (p121)
- 琉球語辞典 半田 一郎/編著 大学書林 1999.11 , ISBN 4-475-00144-7 (p270)
- うちなーぐち活用辞典 宮良 信詳/著編 国立国語研究所言語変異研究領域 2021(令和3).3 , ISBN 4-910257-05-1 (p77)
- 琉球弧あまくま語り 中村 喬次/著 南方新社 2004.9 , ISBN 4-86124-022-0 (p97-98)
- オキナワなんでも事典 池沢 夏樹/編 新潮社 2003.7 , ISBN 4-10-131819-0 (p139-141)
- オリオンビール50年のあゆみ オリオンビール株式会社50周年記念誌編集委員会/編 オリオンビール 2008.10 (p300-301)
- 世界のウチナーンチュ大会写真集 世界のウチナーンチュ大会実行委員会/[編] 世界のウチナーンチュ大会実行委員会 1990.8 (p40)
- 琉球新報 [マイクロフィルム複製本] 2006年10月1日~15日[平成18年] 琉球新報社/[編] [沖縄県立図書館] [2018.3] (10月3日夕刊3面)
- キーワード
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- カリー
- 嘉例
- 乾杯
- 比嘉良雄
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000246686