レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2020/07/24
- 登録日時
- 2020/09/16 00:30
- 更新日時
- 2020/09/16 00:30
- 管理番号
- 6001045369
- 質問
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解決
中国清朝・雍正帝時代の陶磁器の底につけられた「雍正御製」の銘款が見たい。
- 回答
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次の資料に、「雍正御製」の銘款が掲載されていた。
(図書)
・『中国古瓷铭文 : 陶瓷研究·鉴赏丛书』(李正中・朱裕平/编著 山东美术出版社 2006.1)
中国で刊行された中国古代磁器の銘刻についての研究書(テキストは簡体字)。
「4 歴代陶磁款識」の【大清雍正年制】斗彩、琺瑯彩の中で1点「雍正御製」の銘款(p188)と琺瑯四季花卉杯の底部の写真(p189)がある。所蔵施設等は不明。
「2 中国古磁銘文実録」のp85に「清雍正、乾隆年号款」の解説があり、「琺瑯彩磁上題写的櫂款為“雍正年製”四字或“雍正御製”四字(後略)」と書かれている。
ただし、「3 中国古磁銘文索引」には「雍正年製」(p152)のみで「雍正御製」は含まれていない。
次の資料では、「雍正御製」の銘款がついた器の写真のみ掲載。
・『明清瓷器真赝对比鉴定 : 真赝对比丛书』(程庸/著 学林出版社 2017.1)
テキストは簡体字。p52の清雍正藍地琺瑯彩牡丹万寿無疆紋碗(2002年クリスティーズ香港で競売にかけられた品)の解説に「底書“雍正御製”」とあるが、銘款部分の写真はなし。それ以外の掲載品では、「御製」の銘款はp50の「康煕御製」のみ(写真あり)。雍正帝時代のものはいずれも「大清雍正年製」。
その他中国陶磁器関連資料を調査したが、いずれの銘款も「雍正年製」もしくは「大清雍正年製」で、「御製」の文字が付されたものは「康煕御製」のみ。「雍正御製」の銘款がある陶磁器や、銘款の写真が掲載された資料は見つからなかった。
■主な調査資料
・『世界陶磁全集 15 清』(座右宝刊行会/編集 小学館 1983.12)
・『陶磁大系 46 清の官窯』(平凡社 1974)
「銘のいろいろ」(p118-120)として写真(単色)が掲載されており、雍正款はp119に12件掲載。
・『中国陶磁史』(葉哲民/原著 出川哲朗/監訳 徳留大輔/訳 科学出版社東京 2019.10)
「第十二章 清代陶瓷業の繁栄 第二節 景徳鎮窯の復興と発展」(p607-654)中心に確認。
・『清代乃瓷器 図録篇』(田路周一/著 博宝館 1976)
・『静嘉堂蔵清朝陶磁 : 景徳鎮官窯の美』(静嘉堂文庫美術館/編集 静嘉堂文庫美術館 2006.9
掲載品及び銘一覧(p117-120)とも「雍正御製」の銘はなく、いずれも「大清雍正年製」。
・『清代御窑瓷器 : 故宫博物院藏 卷一下册』(耿宝昌/主编 故宫博物院古陶瓷研究中心/编 紫禁城出版社 2005.10)
1冊全て雍正帝時代の中国の故博物院所蔵陶磁器だが、「雍正年製」「大清雍正年製」のみ。
・『景徳鎮磁器 (京都書院アーツコレクション177)』(京都書院 1998.8)
その他、台湾の故宮博物院関連資料や日本で開催された中国陶磁展の図録等も確認した。
(Web)
インターネット上では、ネットオークションなどに出品された中国陶磁器で「雍正御製」が散見される。公的な美術館や博物館所蔵のものがないか調査したところ、台湾の国立故宮博物院のオープンデータに数点掲載されているのが見つかった。
■国立故宮博物院オープンデータ: 器物典蔵資料検索系統(2020/7/24現在)
http://antiquities.npm.gov.tw/
款識「雍正御製」で検索すると、11件ヒット。そのうち数件に銘款が見える写真があるが、銘款の部分だけを拡大した写真はなかった。
(例)・清 雍正 洋彩瓷紅地開光花卉鍾:3枚目に底部の写真(2020/7/24現在)
http://antiquities.npm.gov.tw/Utensils_Page.aspx?ItemId=314578
なお、次の資料に、陶磁器の銘款についての解説があり、「雍正御製」の銘についての一説に触れていた。この資料もあわせて提示。
・『清代乃瓷器:研究と解説』(田路周一/著 博宝館 1979)
「第四章 清代瓷器に関する『十話』第七話 名款=款識というこの罠(わな)」(p86-88)
p86には、明清朝の陶瓷器の製作時期や素性を鑑別するためには、底裏の銘款が重要な役割を果たしている旨、そして「宮廷の直営する窯の製品には、それが官窯であることの証標として、皇帝治世の銘、年号を使用した」(p87)と説明している。続いて「(一)紀年 言うまでもなく官窯で、康熙又は乾隆等の治世年号。これには通常、六字款―大清乾隆年製―と、四字款―康熙御製乃至雍正年製―とがある」、「(因みに“御製”の款識は、康熙大帝の治世のものに限り、それ以外の大帝と呼ばれなかった雍正以降の治世のものには、その使用が憚(はば)かられたのである。従ってもし“雍正御製”などの銘款は、偽物だという有力な説がある。)」と書かれている。
[事例作成日:2020年7月24日]
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
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- 陶磁工芸 (751 10版)
- 参考資料
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- 中国古瓷铭文 李正中,朱裕平∥编著 山东美术出版社 2006.1 (188-189)
- 明清瓷器真赝对比鉴定 程庸著 学林出版社 2017.1 (52)
- 清代乃瓷器 研究と解説 田路/周一∥著 博宝館 1979 (86-88)
- http://antiquities.npm.gov.tw/ (国立故宮博物院オープンデータ: 器物典蔵資料検索系統(2020/7/24現在))
- http://antiquities.npm.gov.tw/Utensils_Page.aspx?ItemId=314578 ((例)清 雍正 洋彩瓷紅地開光花卉鍾:3枚目に底部の写真(2020/7/24現在))
- キーワード
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- 銘款(メイカン)
- 款識(カンシ)
- 官窯(カンヨウ)
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- その他
- 質問者区分
- 個人
- 登録番号
- 1000287186