レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2023年02月05日
- 登録日時
- 2024/03/07 14:46
- 更新日時
- 2024/03/07 14:46
- 管理番号
- 9000041868
- 質問
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解決
『高白斎記:箋註』(広瀬広一/箋註 甲斐郷土史研究会 1940年)の本文の中で、四角で囲ってある部分は何か。また、この原本(底本)はどこかで所蔵しているのか。
- 回答
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・「高白斎記」(別名「甲陽日記」)は「柴田仲助が、その先祖である栗原式部大輔、栗原左兵衛の55年間にわたる日記を1745(延享2)年に筆写したもの」であることが、奥書に書かれている。
・しかし、本書『高白斎記:箋註』(広瀬広一/箋註 甲斐郷土史研究会 1940年)の「例言」によると、「高白斎記」は、もとは武田信玄の近臣・高白斎駒井政武の日記で、柴田仲助がその先祖栗原氏の武功を「甲陽軍艦」などによって挿入したものである。
・『高白斎記:箋註』では、柴田仲助が挿入したとされる部分を四角で囲み、追記には傍線を引いており、その部分を除くと、高白斎駒井政武の日記となり、武田信玄の事績を知る上で貴重な資料となる、と書かれている。
・なお、『山梨県史 資料編6-[1] 中世』(山梨県/編集 山梨日日新聞社 2001年)の解説では、「高白斎記」は「武田家のある役務担当者(あるいは駒井高白斎か)による「引付」を基本材料として、形式・字句などを整え、作成された編纂物であると考えるのが適当だろう」としている。
・『山梨県史 資料編6-[1] 中世』の解説や『武田史料集(第二期戦国史料叢書)』(清水茂夫/校注 人物往来社 1967年)の「解題」によると、原本である加藤竹亭蔵書・辻乙三郎氏所蔵本は、1945(昭和20)年の戦火で焼失したとのことである。
- 回答プロセス
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1.該当資料『高白斎記:箋註』を確認。
・「例言」によると、「高白斎記」(別名「甲陽日記」)は栗原左兵衛の日記だと「尾書」されているが、実は高白斎の日記を栗原の記と偽り、柴田仲助が父祖・栗原氏の武功を「甲陽軍艦」などによって「攙入」したもの。『高白斎記:箋註』において四角で囲んだ部分は、柴田仲助が「攙入」した部分で、追記部分については傍線を付して明らかにしたことが書かれている。
また、『高白斎記:箋註』の原本は、加藤竹亭の旧蔵書を、現在は辻乙三郎氏が所有しているとある。
※「攙入」:ざんにゅう。混ぜ入れること、混ぜ込むこと。
2.『山梨百科事典』(山梨日日新聞社/編集・発行 1989年)を確認。
・pp.346-347に「高白斎記」の項目、解説がある。「広瀬広一は「箋註高白斎記」を著し、この書がもと、武田信玄の近臣の高白斎駒井政武の日記であることを検討の結果、明確にした」とある。
3.「高白斎記」の活字版が収められている資料を確認。
(1)『武田史料集(第二期戦国史料叢書)』(清水茂夫/校注 人物往来社 1967年)p.66の「解題」には、「高白斎記」の由来のほか、『高白斎記:箋註』の底本である写本・辻乙三郎氏所蔵本は、1945(昭和20)年の戦火で焼失し、現在見ることができるのは、『甲斐志料集成』収載のものと『高白斎記:箋註』だけであると書かれている。
(2)『甲斐志料集成 第4巻 歴史篇1』(甲斐志料集成刊行会/編 歴史図書社 1981年)pp.1-2の「目次並解説」では、著者は栗原左兵衛としている。
(3)『山梨県史 資料編6-[1] 中世』(山梨県/編集 山梨日日新聞社 2001年)pp.3-8の解説にも、『高白斎記:箋註』が底本とした辻乙三郎氏所蔵の写本(加藤竹亭旧蔵書)は、1945(昭和20)年の甲府戦災で焼失したとある。「高白斎記」については「本書は、武田家のある役務担当者(あるいは駒井高白斎か)による「引付」を基本材料として、形式・字句などを整え、作成された編纂物であると考えるのが適当だろう」としている。また、広瀬広一氏による辻本の転写本を謄写したと思われる謄写本が東京大学史料編纂所にあり、『山梨県史』ではこれを底本としている。
※「引付」:ひきつけ。後日の証拠や備忘のため書きとどめておく記録や文書。
(4)『新編 信濃史料叢書 第8巻』(信濃史料刊行会/編集・発行 1974年)には解説なし。
4.次のデータベース等を確認するが、「高白斎記」の原本、別系統本等は確認できなかった。
・山梨県立博物館webサイト収蔵資料検索 http://wwws.museum.pref.yamanashi.jp/Art/freeword
・国立国会図書館サーチ https://iss.ndl.go.jp/
・日本古典籍総合目録データベース
※2023.3.1から国書データベースに統合 https://kokusho.nijl.ac.jp/
・JAPANSEARCH https://jpsearch.go.jp/
※各webサイトの最終アクセスは2023.2.9
- 事前調査事項
- NDC
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- 中部地方 (215 10版)
- 日記.書簡.紀行 (915 10版)
- 参考資料
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山梨日日新聞社 編. 山梨百科事典 増補改訂版. 山梨日日新聞社, 1989.
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000008014791 (pp.346-347.請求記号K03/ヤマ/.資料番号0102028446.) -
清水茂夫 校注.武田史料集.新人物往来社,1969.
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000001-I19111009952214855 (p.66.請求記号K24/タケ/.資料番号0101956258.) -
甲斐志料集成刊行会 編.甲斐志料集成. 第4巻.復刻版.歴史図書社,1981.
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000001-I19111009210182188 (p.29.請求記号K08/カイ/4.資料番号0101903078.) -
山梨県. 山梨県史 資料編6. 山梨日日新聞社, 2001.
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000001-I2611B10487689 (pp.3-6.請求記号K20/ヤマ/.資料番号0103583126.)
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山梨日日新聞社 編. 山梨百科事典 増補改訂版. 山梨日日新聞社, 1989.
- キーワード
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- 「高白斎記」
- 「甲陽日記」
- 「高白斎日記」
- 「高白斎筆記」
- 照会先
- 寄与者
- 備考
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『高白斎記:箋註』以外に「高白斎記」(または「甲陽日記」)が確認できるものは次とおり。
・『甲斐志料集成 第4巻 歴史篇1』(甲斐志料集成刊行会/編 歴史図書社 1981年)〈資料番号01019988722〉pp.29-49
・『武田史料集(第二期戦国史料叢書)』(清水茂夫/校注 人物往来社 1967年)〈資料番号0106816655〉pp.65-109
・『新編 信濃史料叢書 第8巻』(信濃史料刊行会/編集・発行 1974年)〈資料番号0100241629〉pp.29-47
・『山梨県史 資料編6-[1] 中世』(山梨県/編集 山梨日日新聞社 2001年)〈資料番号0103583118〉pp.83-101
・謄写本『甲陽日記』※東京大学史料編纂所所蔵
※所蔵史料目録データベース(Hi-CAT)で閲覧可https://wwwap.hi.u-tokyo.ac.jp/ships/w01/detail/full-disp/00010186?page=1&itemsperpage=200 ※2023.2.9確認
- 調査種別
- 書誌的事項調査
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000347117