レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2017年03月28日
- 登録日時
- 2017/10/31 18:15
- 更新日時
- 2018/06/03 11:48
- 管理番号
- 埼久-2017-067
- 質問
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解決
『中島敦全集4』(文治堂書店)の「弟子」に出てくる語の読み、意味、図版を見たい。
- 回答
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以下の資料を紹介した。
1 語の読みと意味
『李陵、弟子、山月記 旺文社文庫特製版』(中島敦著 旺文社 1969)
上記の資料で確認できなかった「垂冠」の読みは、
『大漢和辞典 第3巻』(諸橋轍次著 大修館書店 1984)の「垂」の項にあり。
(1)蓬頭突鬢(ほうとうとつびん)
(2)垂冠(すいかん)(注)大漢和辞典の表記は「スイクワン」
(3)短後(たんこう)の衣
(4)圜冠句履(えんかんこうり)
(5)〔玉偏に夬〕(けつ) (注)表示環境に依存するため、画像に偏旁を付記。
(6)几(き)
なお、「荘子」の「説剣篇第三十」に(1)、(2)、(3)、「田子方篇第二十一」五に(4)、(5)の語が確認できる。
2 図
『大きな活字の全訳漢辞海』(佐藤進[ほか]編 三省堂 2011)
p922に(5)、p154-155に(6)についての図版が確認できる。
(1)から(4)はなし。
- 回答プロセス
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1 作品の出現箇所を特定する。
『中島敦全集 4』(中島敦著 文治堂書店 1961)
p236 11行目「燕角の弧に朔蓬の やがら(たけかんむりに「幹」)をつがへて」
p237 7行目「鳥號の弓に(其に糸)衞の矢をつがへ」
p238 14行目「西の方大行の嶮に攀ぢ、霍山の頂を極めよ。」
p240 8行目「烏漆の弓も粛愼の矢もいらぬ。」
p241 15行目「古の名人・げい(羽に廾)と養由基の二人を」
2 現代語訳や注を調べる。
『李陵、弟子、山月記 旺文社文庫特製版』(回答資料)
3 参考図書を調べる
(1)『大きな活字の全訳漢辞海』(回答資料)
(2)『中国人名事典 古代から現代まで』(日外アソシエーツ株式会社編集 日外アソシエーツ 1993)
げい(羽に廾)も養由基もなし。
(3)『中国歴史文化事典』(孟慶遠〔ほか〕編著 小島晋治訳 新潮社 1998)
p225「げい(羽に廾)」の項あり。「神話・伝説中の弓射の名人。」
p1009「ようゆうき 養・由基」あり。「生没年不詳 春秋時代の弓の名人」
(4)『現代中国地名辞典』(和泉新編 学習研究社 1981)
p65「かくざん【霍山】」あり。
p312「たいがくさん【太岳山】」あり。
p315「たいこうさん【太行山】」あり。
(5)『精選中国地名辞典』(塩英哲編訳 凌雲出版 1983)
p112-113「かくざん 霍山」あり。
p510「たいこうさん 太行山」あり
(6)『大漢和辞典 第3巻』(回答資料)
4 原典に出ている語か確かめる
(1)《Wikipedia》「名人伝」(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%90%8D%E4%BA%BA%E4%BC%9D ウィキメディア財団)の「原典」
「『列子』を主な素材としている。紀昌、飛衛、甘蠅は『列子』湯問第五篇に弓の名手として登場する。弓の技量を示す作中の逸話は『列子』黄帝篇・仲尼篇、『戦国策』等に別々にあるものを中島が再構成。」とあり。
(2)『中島敦の作品研究 国文学研究叢書』(浜川勝彦著 明治書院 1976)
p255「「名人伝」も又、中国古典によっており、ほとんど全体が『列子』を典拠としている」とあり。
(3)『中国古典文学大系 第4巻 老子』(平凡社 1994)
p324-325 列子 湯問篇 の十四に「飛衛に弓術を学んだ紀昌」あり。
p324「燕の国の獣の角で作った弓、北辺に生じる蓬を〔やがら〕(たけかんむりに幹)とした矢で」とあり。
p325 注13「「燕角」は燕の地方で産する獣の角。」
p287-291 列子 仲尼篇の十三に「公孫竜の詭弁」あり。
p287「烏号という名弓に「き(其に糸)衛の地で作られた上質の矢をつがえて」
p289注18「「烏号の弓は(中略)柘(やまぐわ)で作った弓。」「き(其に糸)衛は箭の出ずる所なり」
5 霍山が掲載されている地図を探す
(1)『地図で知る中国・東アジア』(稲畑耕一郎〔ほか〕編集 平凡社 1994)
p43 B-5に霍山あり。安徽省なので、お探しの霍山とは違うか。
(2)『中国国勢地図』(中国地図出版社編 帝国書院 1987)
p43 D-2に霍山あり。山西省なので、こちらか。ただ、この地図では太岳山の一部に見えるが、「名人伝」の文章では、太岳山の右にある太行山として霍山は書かれている。
〈その他調査済み資料)
『山月記 スラよみ!現代語訳名作シリーズ 2』(中島敦作 小前亮現代語訳 理論社 2014)
『李陵 旺文社文庫』(中島敦著 旺文社 1978)
『李陵 角川文庫』(中島敦著 角川書店 1978)
『近代文学鑑賞講座 15 中島敦・梶井基次郎』(角川書店 1959)
ウェブサイトの最終アクセス日は2018年3月30日。
- 事前調査事項
- NDC
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- 日本文学 (910 9版)
- 参考資料
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- 『李陵、弟子、山月記 旺文社文庫特製版』(中島敦著 旺文社 1969)
- 『大漢和辞典 第3巻』(諸橋轍次著 大修館書店 1986) , ISBN 4-469-03123-2
- 『大きな活字の全訳漢辞海』(佐藤進[ほか]編 三省堂 2011) , ISBN 978-4-385-14053-7
- キーワード
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- 中島 敦(ナカジマ アツシ)
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 人物 言葉
- 質問者区分
- 個人
- 登録番号
- 1000224116