レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 20211011
- 登録日時
- 2021/12/17 00:30
- 更新日時
- 2021/12/17 19:58
- 管理番号
- 中央-2021-35
- 質問
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未解決
「鶏卵は1日に2つまでしか食べてはならない」という俗信が生まれた理由を知りたい。知り合いに尋ねたところ、「昔は鶏卵が高級だったから」、「コレステロールを摂り過ぎないようにするため」、「卵業界に打撃を与えようとしたネガティブ・キャンペーンだ」等の回答を得たが、裏付ける資料は見つからなかった。
- 回答
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都立図書館蔵書検索や、オンラインデータベース、インターネット等を<卵><個><摂取>等のキーワードを組み合わせて検索し、該当した資料を調査した。
鶏卵を食べ過ぎないようにという俗信が生まれた理由をコレステロールの過剰摂取を避けるため、とする資料が複数見出せたが、コレステロール以外を理由とする資料は見出せなかった。
情報1
「タマゴを読み解く-正しい知識で健康に-」(タマゴ科学研究会)
(http://japaneggscience.com/information.html 最終アクセス日:2021年10月7日)
「卵を食べるとコレステロール濃度が上昇し、動脈硬化性疾患のリスクが高まると長年にわたり信じられてきた。」(p.17)と述べ、そのきっかけを1968年のアメリカ心臓協会の発表と、1913年のロシアの実験結果の発表としている。
情報2
「「学びの時間」FM東広島 ラジオ講座 」(広島大学マスターズ)
(https://masters.hiroshima-u.ac.jp/oz/manabinojikan-ichiran.html 最終アクセス日:2021年10月7日)
「第14講「身近な卵の話」」(松田治男)(2019年9月放送)
「卵はコレステロールが多いからと敬遠する消費者が今でもいる。卵のコレステロール悪玉説は、約50年前に「コレステロールの摂取量は1日300ミリグラム以下で、卵は1週間に3個まで」という勧告(米国)が発端だった。」とある。
情報3
「学びの扉 卵は食べ過ぎても大丈夫?」(女子栄養大学)
(https://www.eiyo.ac.jp/jissen/study/tamago.html 最終アクセス日:2021年10月7日)
「卵はコレステロールを含むので敬遠しているという方も多いのではないでしょうか。」、「女子栄養大学の食事法(四群点数法)では、いずれの年代(成人)においても、過剰摂取は避け、1日1個を適量として摂取されることをお勧めしています。」とある。
資料1
『朝日新聞』1978年11月11日 東京朝刊 23面
「鶏卵業者、広告にかみつく「ご主人は二、三日に一個」 根拠なく誤解招く」
女子栄養大学出版部発行の雑誌『栄養と料理』に掲載された広告に書かれた文言「コレステロールの気になるご主人には、二、三日に一個の割合ぐらいにして下さい」に対し、全国鶏卵消費促進協議会が厳重抗議し、掲載しないよう働きかける、と報じている。
資料2
p.182-184「全主婦必読の結論!タマゴ論争「1日1個か2個か、2日に1個か」」
資料1と同じく、雑誌掲載広告と、それに対する日本卵業協会の反応を取り上げ、各専門家へのインタビューなどを掲載している。
資料3
『毎日新聞』1971年4月1日 東京朝刊 13面
「常識のウソ 卵は一日三個以上は有害」(石垣純二)
「無責任で無知な医者やシロウトが、卵にはコレステロールが多いから、一日三個以上食べると体によくないなどとしゃべったり、書いたりするので、善男善女が信用し、卵の数を制限したりする。」と記述がある。
資料4
p.70に「コレステロールに対する誤解から、卵に対する抵抗感が日本人にはまだまだ根深く残っている」と記述がある。
資料5
p.69に「「コレステロール」が含まれているという理由から、「「たまご」は1日1個しか食べてはいけない」といった誤解をしている人が意外と多いのですが、これは間違いです。」と記述がある。
資料6
p.118「Q63 卵の食べ過ぎは? A 卵に限らず食べ過ぎは要注意です。」やp.119「Q64 卵は、1日にいくつくらい食べたら? A 人によって差があります。」に関連する記述がある。
資料7
p.96に「なお、コレステロールが卵に含まれているので高血圧者によくないといわれるが問題にする必要はない。」と記述がある。
情報4
「医学報道と医学啓蒙の構造 : 医学用語「コレステロール」の活字メディアにおける語られ方を事例として」(松山圭子)(東京大学学位論文データベース)
(http://gakui.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/cgi-bin/gazo.cgi?no=113077 最終アクセス日:2021年10月7日)
戦後日本における「コレステロール」の普及や報道の経緯について、当時の新聞・雑誌記事等を引用しながら論じ、鶏卵適正摂取量の論争にも触れている。
論文要旨はインターネット上で閲覧可能。全文は「国立国会図書館デジタルコレクション」で閲覧できる。
「国立国会図書館デジタルコレクション」(国立国会図書館)
(https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/3157584 最終アクセス日:2021年10月7日)
国立国会図書館内・図書館向けデジタル化資料送信サービス参加館で公開されている。
資料8
p.216-231「卵と乳・乳製品」(江原絢子)に、日本における卵と乳・乳製品の受容について記述がある。
卵を食べることについては、大正末期から昭和のはじめにかけて主婦であった人への聞き書きをまとめた『日本の食生活全集』(農山漁村文化協会)から各地の日常食における卵の使い方を調べ、かなり一般化した習慣となりつつあったことが認められるとしている。また、1946年度から1995年度にかけての1人1日当たりの卵の摂取量の変化を折れ線グラフで示している。(p.229)
ただし、1日に食べてよい卵の個数に関する言説については記述が見出せなかった。
【調査したデータベース】
・ジャパンナレッジ Lib(ネットアドバンス)
・レファレンス協同データベース(国立国会図書館)https://crd.ndl.go.jp/reference/
・CiNii Articles(国立情報学研究所)https://ci.nii.ac.jp/ja
・国立国会図書館オンライン(国立国会図書館)https://ndlonline.ndl.go.jp
・聞蔵Ⅱビジュアル(朝日新聞社)
・ヨミダス歴史館(読売新聞社)
・毎索(毎日新聞社)
・雑誌記事索引集成データベース ざっさくプラス(皓星社)
・MAGAZINEPLUS(日外アソシエーツ)
・Web OYA-bunko 公立図書館版(大宅壮一文庫)
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
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- 畜産製造.畜産物 (648 9版)
- 衛生学.公衆衛生.予防医学 (498 9版)
- 参考資料
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- 【資料1】朝日新聞 689号(1978年11月) / 朝日新聞社
- 【資料2】雑誌:週刊現代 20巻49号(1978.12.7) / 講談社 / 1978.12
- 【資料3】毎日新聞 22巻 4号 通巻256号(1971年4月) / 毎日新聞社
- 【資料4】まるごとわかるタマゴ読本 / 渡邊乾二/著 / 農山漁村文化協会 / 2019.8 <648.3/5009/2019>
- 【資料5】たまご大事典 2訂版 / 高木伸一/著 / 工学社 / 2020.7 <648.3/5006/2020>
- 【資料6】卵のハテナQ&A / 山中良忠/著 / 東京農業大学出版会 / 2004.10 <648.3/5002/2004>
- 【資料7】乳・肉・卵 / 河野友美/編 / 真珠書院 / 1968 / (食品事典) <R/5880/シ/2>
- 【資料8】講座食の文化 第3巻 調理とたべもの / 石毛直道/監修 / 味の素食の文化センター / 1999.3 <3838/3275/3>
- キーワード
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 質問者区分
- 登録番号
- 1000309179