レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2020年07月29日
- 登録日時
- 2021/12/03 12:58
- 更新日時
- 2021/12/03 15:35
- 管理番号
- 9000032169
- 質問
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解決
夏目漱石に『安重根事件公判速記録』(満洲日日新聞社)を贈った、伊藤好望(イトウ コウボウ)という人物について知りたい。夏目漱石とはどんな関係性なのか。
- 回答
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『安重根事件公判速記録』を贈った伊藤好望は、満洲日日新聞社長の伊藤幸次郎の別名。学生時代の漱石の同級生で、漱石の大連滞在中に講演をしてほしいと依頼し、実現させた人物。
1865(慶應元)年-1928(昭和3)年。
東京大学予備門に漱石と同じ1884(明治17)年に入学。1889(明治22)年に帝国大学に入学するが、学業を怠り一度退学処分を受けたが復学し、1896(明治29)年に帝国大学卒業。
東洋汽船に就職するが、1909(明治42)年に辞職。同9月に中村是公の世話で、満洲日日新聞社二代目社長に就任するが、翌年1910(明治43)年1月に退任している。その後、日本鋼管会社の設立に加わり支配人に就任した。
なお『定本漱石全集』には日本鋼管株式会社の取締役とあるが、『日本鋼管株式会社七十年史』によると設立時は支配人であり、のちに取締役になった模様。
また伊藤幸次郎について『荊堂 伊藤幸次郎』(長尾半平編 財団法人四皕荘 1932(昭和7)年)が刊行されているが、当館には所蔵なし。
詳細は参考資料をご確認ください。
- 回答プロセス
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1.漱石に関する辞典、人名辞典等を確認 → 該当する人名は確認できず。
2.当館OPAC、及び国立国会図書館サーチで検索。キーワード「漱石」「満州」「伊藤」
→雑誌「新潮」2013年2月号 pp.7-96 黒川創「暗殺者たち」内
pp.66-67 『安重根事件公判速記録』を贈った伊藤好望は、漱石の同級生で、満洲日日新聞社長の伊藤幸次郎の別名である旨、記載有り。
3.人物辞典等を再度確認
→『夏目漱石周辺人物事典』p.10 満洲日日新聞社長伊藤幸次郎から大連滞在中一度講演をしてもらいたいと依頼があった、と記載有り。(この内容は、漱石著「満韓ところどころ」に記述されている。)
雑誌「新潮」2013年2月号 p.14に1909年9月に二代目社長に就任と有り。
『日本人物情報大系20 満洲編10』(皓星社 1999)p.254 株式会社満洲日日新聞社 の欄に、明治42年に社長就任、明治43年1月に退任したと記載有り。
4.『定本 漱石全集』12巻で「満韓ところどころ」を確認。同巻の注解に「満洲日日の伊藤君」について説明あり。また20巻にも説明があると言うことで確認したところ、伊藤幸次郎の経歴について記載あり。伝記も刊行されているが、当館には所蔵なし。
日本鋼管の取締役であったことは『日本鋼管株式会社七十年史』(日本鋼管株式会社七十年史編纂委員会編纂 日本鋼管 1982)でも確認。
- 事前調査事項
- NDC
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- 日本文学 (910 10版)
- 個人伝記 (289 10版)
- 参考資料
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- 新潮社, 2013.2. 新潮 2013年2月号(110巻2号) (p.66,14)
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芳賀 登/[ほか]編集 , 芳賀‖登. 日本人物情報大系 20. 皓星社, 1999.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I005846279-00 , ISBN 4774402699 (p.254) -
夏目金之助 著 , 夏目, 漱石, 1867-1916. 定本漱石全集 第12巻. 岩波書店, 2017.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I028456802-00 , ISBN 9784000928328 (p.288,704) -
夏目金之助 著 , 夏目, 漱石, 1867-1916. 定本漱石全集 第20巻. 岩波書店, 2018.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I028997479-00 , ISBN 9784000928403 (p.598) -
日本鋼管株式会社. 日本鋼管株式会社七十年史. 日本鋼管, 1982.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001588945-00 (口絵,p.5)
- キーワード
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- 夏目漱石
- 伊藤好望
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 人物
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000308540