レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2013年05月24日
- 登録日時
- 2013/05/29 16:16
- 更新日時
- 2013/05/29 16:16
- 管理番号
- 相-130002
- 質問
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解決
昭和2年3月1日、芥川龍之介が佐藤春夫、谷崎潤一郎らと文楽「狐火」を観たという文章を読んだのだが、当日の演目などで確認したい。
- 回答
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『義太夫年表 昭和篇 第一巻』(国立文楽劇場部事業推進課ほか編 和泉書院 平成24年4月)には、昭和2年3月1日の道頓堀弁天座での上演外題が収載されています。当日の上演外題には「本朝廿四孝 大序より四段目迄」とでており、「狐火」での外題はでていません。しかし四段目の「十種香の段」が外題として記載されておりますので、この段の切である「狐火」のほか、同じく外題として記載されている『心中天網島』の「北新地河庄の段」「紙屋内の段」、『御所桜堀川夜討』の「弁慶上使の段」、『伊達娘恋緋鹿子』の「八百屋お七半鐘場の段」を三人は観劇したと推論できます。また、佐藤春夫には、「文楽の人形芝居の狐火などを見に行った」という記述もあります。『定本佐藤春夫全集 第24巻』(臨川書店 2000年2月刊) 82頁
- 回答プロセス
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1 『演劇百科大事典 2』(平凡社 昭和38年8月)の「きつねび 狐火」の項目には、「本朝廿四孝」四段目「謙信館」狐火の段の略称という記述。(212頁)
2 「本朝廿四孝」で、改めて『演劇外題要覧』(日本放送協会編 日本放送出版協会 昭和46年12月)を閲覧したところ、四段目「謙信館の段」に「狐火」が記載。(351頁)
(1)○室町御所 ○誓願寺 ○室町御殿 (2)○下諏訪明神社頭 ○信玄館 (3)○桔梗ヶ原 ○勘助住家 (4)○道行(似合の女夫丸)〇和田山別墅 〇謙信館(「鐵鉄砲渡し」、「十種香」、「狐火」)(5)〇戦場
3 『通し狂言本朝廿四孝-第136回文楽公演-(国立劇場上演資料集435)』(国立劇場調査養成部調査資料課編 日本芸術文化振興会・発行 平成13年9月)に所収されている「本朝廿四孝上演年表」で「四段目」にかかる上演外題と場割をみると、上演外題が「大序より四段目迄」という場合、「狐火」は「十種香の段」に含まれているケースが多い。
4 『操浄瑠璃の研究 続編』「(近石泰秋著 風間書房 昭和40)の「第三章 近松時代浄瑠璃における三段目と四段目」の「二 三段目様式と四段目様式の対照」に、「本朝廿四孝」にかかる以下のような記述がある。
「四段目切は特別の工夫を凝らして是に庭園を加えたり、橋を設けたり、四季折々の草木を以て飾り立てたりして優美の趣を見せることが多いのである。「本朝本朝廿四孝」四段目切十種香の場の豪華な御殿、奥庭狐火の場の泉水に橋のかかった美しい庭園などの舞台装置はその代表的な例である。」(331頁)
5 併せて、「昭和2年3月1日」の日付を手掛かりに各人の「年譜」などを参照。
(1)芥川龍之介には、「僕は谷崎潤一郎、佐藤春夫の両氏と一しょに久しぶりに人形芝居を見物した。」とある。『芥川龍之介全集 第15巻』(岩波書店 2008年3月刊)(182頁)。その「人形芝居を見物」の注解として、1927年3月1日から上演された大阪弁天座の「心中天網島」とある。同資料第15巻 335頁
(2)佐藤春夫には、「一,ニ泊した時、誘われて主人夫妻とともに文楽の人形芝居の狐火などを見に行った」という記述がある。『定本佐藤春夫全集 第24巻』(臨川書店 2000年2月刊) 82頁
- 事前調査事項
- NDC
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- 人形劇 (777 9版)
- 参考資料
- キーワード
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- 本朝廿四孝
- 十種香
- 近松半二
- 狐火
- 芥川龍之介
- 佐藤春夫
- 谷崎潤一郎
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 内容種別
- 質問者区分
- 登録番号
- 1000131766