レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2020年08月25日
- 登録日時
- 2021/02/09 13:39
- 更新日時
- 2021/02/18 14:47
- 管理番号
- Q2020Y0239
- 質問
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解決
以下の内容の児童文学書を探している。主人公が作者の先生等に再会できたのか気になっている。
1.1968年~1971年の間に、名古屋市立鶴舞小学校の児童図書に存在した。
2.40数年前に読んだ。
3.内容は、上野の戦災孤児の主人公と周囲の人達の物語。
4.覚えているあらすじ
① 語り手=作者は主人公の担任となった小学校の教師。
② 主人公は空襲で家族を失い、上野の浮浪孤児となる。
③ ある晩、八百屋の軒先のむしろに潜り込み、一夜を過ごそうとしたところ、八百屋のおじさんに見つかり育てられることになる。
④ 八百屋の夫婦には子が無く、主人公を実子のように慈しみ育てる。
⑤ 主人公は小学校に通学し、そこで作者=語り手の先生と出会う。
⑥ 主人公の性格は明るく親しみやすく、クラスに溶け込んだ。
⑦ いくつかの孤児生活時のエピソードがあったと思うが、覚えていない。
⑧ クラスで上野公園(博物館?)の見学に行った日に浮浪孤児を目撃し、そこから主人公の態度に鬱屈が現れる。
⑨ ある日、主人公は何の痕跡もなく八百屋からも学校からも消えた。
⑩ 八百屋の夫婦、先生、クラスの皆は主人公を探すが見つからない。
⑪ ラジオの「尋ね人の時間」で彼の名を呼び、学校、八百屋の夫婦へ無事でいるならその事だけでも知らせてほしいと、繰り返し呼びかけるが反応はなかった。
⑫ 物語の最後は次のような文章で終わっている。
「あれから〇年(十数年)経ちました。彼の消息は分かりません。
今では彼も立派な大人となり、皆さんのお父さんと同じ年頃になっているでしょう。
皆さんの周りにお父さんと同じような年の「○○君」という人がいないでしょうか?
もし、彼が孤児だった、上野で暮らしていた、そのような事を話していたら、どうか私に教えて下さい。
私たちは○○君をいつまでも連絡を待っています。」
- 回答
-
お探しのものと思われる資料が見つかりました。
・金沢嘉市 著, 久米宏一 絵. 一まいの卒業証書. あすなろ書房, 昭和44【Y7-1581】
小学校教師である語り手の「わたし」が、クラスに入ってきた浮浪児の少年、山本数行(以下、「数行」)との思い出について書いた児童書です。
ご照会の条件(4.あらすじ)との合致状況については、次のとおりです。
① 合致しています。
② 数行が疎開先から戻ってくると、家は焼け落ち、両親は亡くなっていました。孤児収容所を逃げ出し、東京の新橋駅に流れ着きます。
③ 新橋駅近くのくだもの屋の店先にあったリヤカーの下に潜り込もうとしたところを、店の主人がみつけて引き取ります。
④ 夫婦には3歳の息子がいます。「くだもの屋の安藤さんは、ふうふそろって気のいい人で、とりわけおばさんのやさしさは、だれにたいしても、おかあさんのようでした。(p.18)」という描写があります。
⑤ 合致しています。
⑥ 数行が自分の考えを、ひょうきんな仕草や言葉でストレートに主張したことで、場が和んだ場面があります。
⑦ 物語の前半で、くだもの屋に引き取られる前の生活が描かれています。
⑧ 昔の浮浪児の仲間に声をかけられるのがいやで上野にお使いに行くのをしぶるという描写があります。その後、ある出来事がきっかけで、数行は一度くだもの屋を飛び出します。しばらくのち、新橋駅で浮浪児に戻っている数行が見つかります。「わたし」が誘うと、もとの生活に戻れることを喜ぶ数行でしたが、この間にできていた子分たちと別れる段になると、落ち込んでいる様子が描かれています。
⑨ その後、多摩川の花火大会を見に行く、と言い置いて、数行は再び姿を消します。
⑩ 合致しています。(数行を探すシーンは2回登場します。)
⑪ ラジオ番組の「たずねびとのじかん」で「桜川小学校の六年生、山本数行さん。クラスのお友だちと金沢先生がまっています。れんらくしてください」と放送してもらったがれんらくはなかったという場面があります。
⑫ 本文は次のように締めくくられています。
「もう、二十年ちかくも前のことです。
(中略)
いまはもう、大きくなり、三十さいをすぎた、りっぱなおとなになっているはずです。(中略)
みなさんたちの中で、三十さいをすぎた、山本数行を知っている人があったら、ぜひ教えてくださいませんか。おねがいします。(pp.82-83)」
(調査方法)
ご照会事項から、調査対象を1955年から1971年までに出版された日本の著者による児童書と設定しました。
テーマから作品を検索できる参考図書のうち、調査範囲に合致する戦争児童文学やノンフィクション物語を掲載している次のものを確認したところ、(エ)にて回答を得ました。
(ア)東京子ども図書館 編. 物語の森へ (児童図書館基本蔵書目録 ; 2). 東京子ども図書館, 2017.5【UP49-L55】
(イ)初見健一 著. 昭和こども図書館 : 今でも読める思い出の児童書ガイド. 大空出版, 2017.7【UG71-L129】
(ウ)よい本をすすめる"あめんぼの会" 編著. 私が選ぶ戦争児童文学 2(よみもの編1) (こなかった明日). 白石書店, 1989.3【UG71-E13】
(エ)日本子どもの本研究会ノンフィクション部会 編. ノンフィクション子どもの本900冊. 一声社, 1987.5【UP49-33】
- 回答プロセス
- 事前調査事項
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・インターネット「本の探偵」「児童図書のフォーラム」(定期的に調査)
・愛知県図書館、名古屋市図書館、鶴舞小学校
- NDC
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- 小説.物語 (913)
- 参考資料
- キーワード
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- ストーリーレファレンス
- 児童文学
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 資料情報課(レファレンス)
- 調査種別
- 内容種別
- 質問者区分
- 登録番号
- 1000293641