レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2022/10/21
- 登録日時
- 2022/11/03 00:30
- 更新日時
- 2022/11/17 15:39
- 管理番号
- 13162886
- 質問
-
解決
『新編国歌大観 第二巻私撰家集編』p.567
四五三二 あき風のたたまくをしく見ゆるかな庭のこぐさの花のにしきは
について、「たたまく」と「たままく」のいずれが正しいのか、確認したい。
- 回答
-
以下のとおり、お尋ねの和歌について、各資料の記載状況を調査しました。
資料1~2-1では「たたまく」(資料2-1については、資料2-2により判断)、資料3~7では「たままく」とされています。
資料1においては、永青文庫蔵本により、「たたまく」を採用したとの記載がありました。当該資料の校訂においては、「たたまく」を正しいと判断したようです。
【 】内は国立国会図書館請求記号、書誌事項末尾に◎を付した資料は国立国会図書館デジタルコレクションの国立国会図書館内/図書館・個人送信資料、☆を付した資料は同インターネット公開資料です。
資料1:佐藤恒雄 編著『藤原為家全歌集』風間書房, 2002.3【KG135-G77】
* p.401:ご照会の和歌は「あきかぜのたたまくをしく見ゆるかなにはのこぐさの花のにしきは」とされています。また、注に「底本二句「たまゝくおしく」、永本により訂す」とあります。
*pp.1-17「凡例」:夫木和歌抄について、「静嘉堂文庫蔵本を底本とし、宮内庁書陵部蔵本(書)と永青文庫蔵本(永)寛文五年刊本(板)を参照校訂して使用する」とあります(p.9)。
資料2-1:永青文庫 編『細川家永青文庫叢刊 第5巻』汲古書院, 1983.6【KG16-131】
* 内容細目:「夫木和歌抄. 上(巻1~20)」
* p.218:原本二丁が1頁に収められており、資料2-2によると、上段の影印にご照会の和歌が掲載されているようです(解読は行っていません)。
* p.2「凡例」:「本書は、永青文庫蔵『夫木和歌抄』(写本十九冊)を写真複製したものである」とあります。
資料2-2:永青文庫 編『細川家永青文庫叢刊 別冊 (夫木和歌抄初二句索引)』汲古書院, 1985.8【KG16-131】
* 資料2-1および2-3の索引です。p.4に「あきかせの」>「たたまくをしく」としてご照会の和歌の掲載箇所への言及(「⑪二一八上3」)があります。凡例(pp.3-5)のp.3によると、掲載箇所は、巻・頁・段及び各段における位置(その段で何首目かということ)を示しているとのことです。
資料2-3:永青文庫 編『細川家永青文庫叢刊 第6巻』汲古書院, 1983.9【KG16-131】
* pp.887-909福田秀一「解題」:「三、本文の特徴(一)―永青文庫本によって流布本系の本文を訂し得る例など―(pp.891-901)」を概観しましたが、お尋ねの和歌についての言及はありませんでした。
* 内容細目:「夫木和歌抄. 下(巻21~36)」
資料3:[藤原長清 撰]『夫木和歌抄 2 (図書寮叢刊)』宮内庁書陵部, 1985.2【KG135-112】
* p.一二五(p.129)※ページ付が2種類あり( )内は下部のページ番号です:ご照会の和歌は「秋風のたまゝくおしき見ゆる哉 庭のこくさの花のにしきは」とされています。
* p.一(p.3)「凡例」:「底本には、江戸初期の写本である書陵部蔵桂宮本二六冊」を用いたとあります。
資料4:国民図書株式会社 編『校註国歌大系 第21巻 (夫木和歌抄 上)』講談社, 1976.10【KH9-223】
* p.326:ご照会の和歌は「秋風のたままくをしくみゆるかな庭のこぐさの花の錦は」とされています。
* p.1「例言」:「本書は、片岡寛光が契沖自筆校本竝に古寫本によりて比校し、狩谷望之(掖齋)所藏本によりて石橋眞國がこれに書入れを爲したる學習院所藏本に據り、中山泰昌が校訂しました」とあります。
資料5:山田清市, 小鹿野茂次 著『夫木和歌抄 : 作者分類 本文篇』風間書房, 1967【911.147-Y194h】◎
* p.30:ご照会の和歌は「あき風のたままくおしく見ゆるかな庭のこくさの花のにしきは」とされています。
* pp.3-5「凡例」:本文の底本は、静嘉堂文庫蔵本によるとされており、対校に「書陵部蔵本、及び北岡文庫蔵本を以て校異を施し、原則として、書陵本は底本本文の右側、北岡本は底本本文の左側に示した」とあります(p.3)。
資料6:安井久善 編著『藤原為家全歌集』武蔵野書院, 1962【911.148-H993h-Y】◎
* p.431:ご照会の和歌は「秋風のたままくをしくみゆるかな 庭のこくさの花の錦は」とされています。
* p.401:「私撰集に入る歌の部」>「夫木和歌抄」「〔底本、図書刊行会本〕」とあります。
資料7:勝田長清 撰『夫木和歌抄 [本編] (国書刊行会刊行書)』国書刊行会, 1906【911.108-Ka724h】☆
* p.313:ご照会の和歌は「あき風のたまゝくをしくみゆるかな庭のこくさの花のにしきは」とされています(https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/991240/165)。
* pp1-3「例言」:「本書は寛文五年板を底本とし、契沖阿闍梨校本、淸水濱臣校本、黑川眞道氏藏古寫本等により校訂せり」とあります(p.3:https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/991240/2)。
[その他の調査済資料およびウェブサイト]
「新編国歌大観」編集委員会 編.『新編国歌大観 第2巻 (私撰集編)』角川書店, 1984.3【KH9-485】(貴館調査済資料ですが、念のためご紹介します。)
* 目次p.4に「夫木和歌抄(静嘉堂文庫蔵本)」とあります。
* pp.879-884「解題」>「16夫木和歌抄」:底本を静嘉堂文庫本としたが、永青文庫本・書陵部本・寛文板本も参照し、多くの校訂を加えた旨記載があります(p.879)。また、歌句の訂正について、「仮名一字二字の誤写を校合本によって訂したものなどは到底あげきれない」とあります(p.883)。
* (参考)ジャパンナレッジ(当館契約データベース)のセレクトコンテンツである『新編国歌大観』を「たたまく」で検索すると50首以上の和歌がヒットし、その中に「秋ぎりのたたまくをしき山ぢかなもみぢの錦おりつもりつつ」(『拾遺和歌集』)という歌があります。『新日本古典文学大系 7』【KH2-E3】(『拾遺和歌集』を収録)のp.56に同歌の収録があり、歌の意味のほか、「立たまく」が「立たむ」のク語法であることなど、文法上の解説があります。
人間文化研究機構国文学研究資料館文学形成研究系「本文共有化の研究」プロジェクト 編『夫木和歌抄データベース (研究成果報告 ; 平成17年度)』人間文化研究機構国文学研究資料館, 2006.3【YU9-H417】
夫木和歌抄研究会 編『夫木和歌抄 : 編纂と享受』風間書房, 2008.3【KG135-J3】
* pp.465-489「伝後小松院筆『夫木和歌抄』影印・翻刻」
* pp.491-518「後崇光院筆『拾葉抄』解題・翻刻」
* pp.519-571「叡山文庫本『夫木和歌抄』解題・翻刻」
* pp.573-605「『鳥類八百首』解題・翻刻」
* 上記の翻刻を概観しましたが、該当の和歌の掲載は確認できませんでした。また、pp.431-447に「『夫木和歌抄』伝本書目」の掲載があります。
佐藤恒雄 著『藤原為家研究』笠間書院, 2008.9【KG136-J3】
和歌文学会 監修『コレクション日本歌人選 052』笠間書院, 2012.6【KG712-J98】
中村幸彦 [ほか]編『角川古語大辞典』角川書店【KF6-21】
* 第4巻に「たまま・く」という項目の立項(p.214)があります。
* 第5巻に助動詞「まく」の立項(p.383)があります。
古典籍総合目録データベース(http://base1.nijl.ac.jp/infolib/meta_pub/G0001401KTG)
* 夫木和歌抄:http://dbrec.nijl.ac.jp/KTG_W_55403
国際日本文化研究センター>データベース>和歌・連歌・俳諧(https://www.nichibun.ac.jp/ja/db/category/waka/)
以下の資料はデジタル化作業中のため確認できませんでした。
山田清市, 小鹿野茂次 著『夫木和歌抄 : 作者分類 本文篇 改訂版』風間書房, 1981.9【KG135-75】
藤原長清 [撰]『夫木和歌抄 1(図書寮叢刊)』明治書院, 1984.3【KG135-104】
藤原長清 [撰]『夫木和歌抄 2 (図書寮叢刊)』明治書院, 1985.3【KG135-104】
藤原長清 [撰]『夫木和歌抄 4 (図書寮叢刊)』明治書院, 1987.3【KG135-104】
ウェブサイトの最終アクセスは、2022年10月20日です。
- 回答プロセス
- 事前調査事項
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レファレンス協同データベースの国立国会図書館のレファレンス事例では、「たままく」となっている。
https://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=ref_view&id=1000175961
ただし、確認資料は『新編国歌大観 第二巻私撰家集編』のp.567で、『新編国歌大観』では「たたまく」と記載されている。
また、同ページに「参考」として挙げられている「国立国会図書館平成18年度レファレンス研修資料」(http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1000927)では「たたまく」となっている。
利用者がお持ちのいけばなの雑誌には「たままく」となっているよう。
国立国会図書館デジタルコレクションの『夫木和歌抄 36巻目録1巻. [11]』(51コマ)でも「たままく」と見えるが、横に朱書きがある。
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2562683/51
- NDC
-
- 詩歌 (911 10版)
- 参考資料
- キーワード
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 人文(レファレンス)
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 質問者区分
- 登録番号
- 1000323406