レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2023/06/03
- 登録日時
- 2023/07/02 00:30
- 更新日時
- 2023/07/20 18:27
- 管理番号
- 14821457
- 質問
-
未解決
漫画の効果背景の一種である集中線(フラッシュ,ラジアルとも呼称されることがあります)が,いつごろ,誰によって発明されたのか分かる資料を知りたい。
下記の雑誌記事には「・・・勢いを増す『集中線』も走った後の『流線』も、先生が編み出したものです」とあるが、手塚治虫が生み出したというのが定説なのか。
生誕90年「手塚治虫」秘話--“マンガの神様”が号泣した日.デイリー新潮.(2018.11.20)https://www.dailyshincho.jp/article/2018/11200600/?all=1
- 回答
-
以下のとおり調査しましたが、集中線を考案した時期および人物について記述した資料は見当たりませんでした。また、考案者が手塚治虫であると明言した資料も見当たりませんでした。
【 】内は国立国会図書館請求記号です。
お調べになられた記事の出典である以下の資料を確認しました。
・「没後20年「マンガの神様」手塚治虫が「号泣した日」」(『週刊新潮』54巻7号新潮社 2009.2.19 pp.48-51【Z24-21】)
「流線」等、漫画表現における「動き」について言及した資料に以下のようなものがあります。
資料1:三輪健太朗 著『マンガと映画 : コマと時間の理論』NTT出版, 2014.1【KC486-L73】
pp.295-323「第7章 運動」で、映画的技法について論じられています。
動きを表現した漫画の例として、手塚治虫の『新宝島』、宍戸左行の『スピード太郎』が紹介されています。
また、集中線について言及がある記事に、以下のようなものがあります。
資料2:「《朝日新聞デジタル》(小原篤のアニマゲ丼)ZZZは「ズズズ」と読むか」(『朝日新聞』2019年2月18日(朝日新聞デジタル専用記事※朝日新聞クロスサーチ(当館契約データベース)にて確認))
竹宮惠子氏とこうの史代氏の対談を取材した記事です。
対談中、オノマトペについての言及中に「研究者の立場からこんなこと言うのも何ですが、最初の例が何だったのか確定は難しい。」と司会の吉村氏の発言があります。
また、竹宮氏の発言として、「例えば『ハッと気づく』。昔はそのまま『ハッ』と字で描いたものが、やがてキャラクターの後ろに集中線を描くようになり、そのうちキャラクターを描かずにコマにフラッシュだけを描くようになったり。」との記載があります。
手塚治虫や彼が漫画に用いた「映画的技法」については、以下の資料に記述がありましたが、お求めの記述は見当たりませんでした。
資料3:竹内一郎 著『手塚治虫=ストーリーマンガの起源 (講談社選書メチエ ; 354)』講談社, 2006.2【KC486-H215】
pp.93-133「第二章 2 映画の影響」
pp.98-113の「手塚が導入した映画的技法」に該当する技法が32個例示されていますが、集中線については記載がありません。
また、pp.129-131に「紙芝居、絵物語との方法論の違い」という節があり、絵物語の作者である小松崎茂の作品について、「効果線は多用され、スピード感、疾走感で読者を惹きつける技術はふんだんに使われている。」とあります。
その他、漫画の歴史に関連した資料、手塚治虫に関連した資料等を確認しましたが、お求めの記述は見当たりませんでした。
【調査に使用した主な資料】
・こうの史代, 竹宮惠子, 吉村和真 著『マンガノミカタ : 創作者と研究者による新たなアプローチ』樹村房, 2021.10【KC486-M257】
・手塚治虫 著, 手塚プロダクション 監修, 堀田あきお インタビュー、マンガ用語集監修『手塚治虫のマンガの教科書 : マンガの描き方とその技法』興陽館, 2020.11【KC491-M2】
・伊藤剛 著『テヅカ・イズ・デッド : ひらかれたマンガ表現論へ(星海社新書 ; 53)』星海社, 2014.9【KC486-L129】
・手塚治虫, 石ノ森章太郎 [作], NHKプロモーション, 手塚プロダクション, 石森プロ 編『手塚治虫×石ノ森章太郎マンガのちから : 特別展』NHKプロモーション, 2013.6【KC486-L89】
・橋本英治, 山本忠宏, 泉政文, 尹性哲, 蔡錦佳 著, 大塚英志 編著『まんがはいかにして映画になろうとしたか : 映画的手法の研究』NTT出版, 2012.2【KC486-J318】
・米沢嘉博 著『手塚治虫マンガ論』河出書房新社, 2007.7【KC486-H286】
・二階堂黎人 著『僕らが愛した手塚治虫』小学館, 2006.12【KC486-H252】
・竹宮惠子 著『竹宮惠子のマンガ教室』筑摩書房, 2001.6【KC491-G59】
・藤子・F・不二雄 著『藤子・F・不二雄のまんが技法 (小学館文庫)』小学館, 2000.4【KC491-G50】
・清水勲 著『マンガ誕生 : 大正デモクラシーからの出発 (歴史文化ライブラリー ; 75)』吉川弘文館, 1999.9【KC486-G446】
・清水勲 著『図説漫画の歴史 (ふくろうの本)』河出書房新社, 1999.7【KC486-G432】
・手塚治虫 著『手塚治虫 : 僕はマンガ家 (人間の記録 ; 100)』日本図書センター, 1999.2【KC486-G382】
・夏目房之介 著『手塚治虫の冒険 : 戦後マンガの神々』筑摩書房, 1995.6【KC486-E553】
・桜井哲夫 著『手塚治虫 : 時代と切り結ぶ表現者 (講談社現代新書)』講談社, 1990.6【KC486-E158】
・石子順 著『手塚治虫マンガ漫画館』清山社, 1977.5 (第2刷)【KC486-L43】
・竹内オサム 監修, 日外アソシエーツ株式会社 編集『マンガ・アニメ文献目録』日外アソシエーツ, 2014.10【KC1-L1】
・「特集 マンガ批評の最前線」(『ユリイカ』38巻1号 青土社, 2006.1 pp.51-235【Z13-1137】)
【調査に使用した主なデータベース、インターネット情報等】
・国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/ja/
・国立国会図書館オンライン https://ndlonline.ndl.go.jp/
・CiNii Research https://cir.nii.ac.jp/
・HathiTrust Digital Library https://www.hathitrust.org/
・Googleブックス https://books.google.co.jp/
・皓星社 雑誌記事索引集成データベース(ざっさくプラス)(当館契約データベース)
・朝日新聞クロスサーチ(当館契約データベース)
・毎索(毎日新聞)(当館契約データベース)
・ヨミダス歴史館(読売新聞)(当館契約データベース)
・リサーチ・ナビ「マンガについて調べる」 https://rnavi.ndl.go.jp/jp/guides/post_900.html
インターネット情報等の最終確認日:2023年5月31日
- 回答プロセス
- 事前調査事項
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『集中線』は手塚治虫が生み出した(発明した)という情報に近いものについては、複数の記述を確認したが、はっきりと根拠が示された情報は見つけることが出来ませんでした。
呉恵京. "手塚治虫の実験アニメーションの表現技法." 国際日本学 6, p.181-202. 2009.
http://doi.org/10.15002/00022609
西村宏紀ほか. "感情表現におけるマンガ符号の役割: マンガ経験別にみるマンガ符号の受け取り方." 日本デザイン学会研究発表大会概要集 47. p. 424-425. 2000.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jssd/47/0/47_424/_pdf/-char/ja
【ほか調査済資料】
布施英利(2004)『マンガを解剖する(ちくま新書)』筑摩書房
竹内オサム(2008)『手塚治虫』ミネルヴァ書房
夏目房之介,竹内オサム編著.(2009)『マンガ学入門』ミネルヴァ書房
細木原青起(2019) 『日本漫画史 鳥獣戯画から岡本一平まで』岩波書店
澤村修治(2020)『日本マンガ全史 : 「鳥獣戯画」から「鬼滅の刃」まで(平凡社新書)』平凡社
清水勲(1991)『漫画の歴史(岩波新書)』岩波書店
清水勲(2003)『江戸のまんが(講談社学術文庫)』講談社
手塚治虫(2011)『手塚治虫クロニクル 1946~1967(光文社新書)』光文社
『手塚治虫を知るためのQ&A 100』(2008)芸術新潮.59巻3号
- NDC
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- 漫画.挿絵.児童画 (726)
- 参考資料
- キーワード
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 人文(レファレンス)
- 調査種別
- 文献紹介 事実調査
- 内容種別
- 質問者区分
- 登録番号
- 1000335218