レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2011/03/09
- 登録日時
- 2012/07/01 02:00
- 更新日時
- 2012/07/03 17:56
- 管理番号
- 千県中千葉-2012-0001
- 質問
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未解決
伊藤左千夫の小説「野菊の墓」の中で、民子の死後政夫が墓参をする場面がある。その時に、お祖母さんに「政夫さん、あなた力紙を結んでください」と言われ「僕は懐にあった紙の有りたけを力杖に結ぶ。」と書かれている。民子の実家である戸村家は市川市にあると思われるが、墓所等で力紙を結ぶ風習が明治時代の市川市内であったのか、それはどのような意味があるのか知りたい。また、その風習が残っている地域があれば県内のどの区域か知りたい。
- 回答
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力紙、力杖については『日本国語大辞典 第8巻 第2版』(小学館 2001)p1307とp1309に次の記述があり、出典として『野菊の墓』が挙げられている。
p1307力紙 葬列の道具の一つである力杖(ちからづえ)に結びつける紙。洗米などを包んでいった紙を細かく折って用いる。
p1309力杖 葬列の道具の一つ。死者が冥途への旅に使うと考えられている杖。茨城県から千葉県にかけて、墓参の時洗米などを包んでいった紙を細かく折り、力杖などに結びつけて供養する習俗がある。
その他に『千葉県の歴史 別編民俗2』( 千葉県史料研究財団 (各論)2002)や『千葉大百科事典』(千葉日報社 1982)などの該当しそうな箇所や、一般的な民俗や習慣に関する事典を調査したが、力紙についての説明は見つからなかった。
また、地方誌も調査したが力紙について書かれた記事は見つからなかった。
- 回答プロセス
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『市川市史 第四巻 現代・文化』(市川市史編纂委員会 1975)において p604-610では市川市と伊藤左千夫との関係が、p662-666では葬制について書かれているが、力紙については記述なし。
以下の資料にも力紙についての記述なし
『野菊の如き君 左千夫とたみ子』(江畑耕作著 新地書房 1982)
『市川民俗誌』(萩原法子著 崙書房 1985)
『葬と供養』(五来重著 東方出版 1992)
小倉博「<民俗>成田市域の葬送習俗覚書」(『房総の郷土史』通巻4号1976.3 p90-94)
- 事前調査事項
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伊藤左千夫「野菊の墓」(『野菊の墓 他六編』(伊藤左千夫著 新学社 1968))より抜粋
「葬《ほうむ》りをしてから雨にも逢わないので、ほんの新しいままで、力紙《ちからがみ》なども今結んだ様である。お祖母さんが先に出でて、<略>
僕は懐《ふところ》にあった紙の有りたけを力杖に結ぶ。この時ふっと気がついた。民さんは野菊が大変好きであったに野菊を掘ってきて植えればよかった。」
- NDC
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- 通過儀礼.冠婚葬祭 (385 9版)
- 参考資料
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- 『日本国語大辞典 第8巻 第2版』(小学館 2001) (9102950574)
- キーワード
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- 力紙
- 力杖
- 葬祭
- 葬制
- 野菊の墓
- 千葉県-市川市
- 伊藤左千夫
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000108031