レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2018年4月26日
- 登録日時
- 2018/08/02 12:42
- 更新日時
- 2022/05/13 14:58
- 管理番号
- 2018-017
- 質問
-
未解決
文化5年(1808年)以前の江戸において、貸本屋に従事していた人の名前がわかる史料を読みたい。
この種の資料として代表的なものである『画(絵)入読本外題作者画工書肆名目集』では、当時の江戸の各貸本屋の代表者である世話役の名前まではわかるが、その下で働いていた人たちについては人数しかわからなかった。
- 回答
-
『読本類出版手留』に「貸本世利本渡世の者ニ而手広にいたし候者」として18名の名前が挙げられています。
刊行年は不明ですが、松本隆信「画入読本外題作者画工書肆名目集 解題・翻刻」(『西鶴:研究と資料』, 至文堂, 1957, p.153-179)では、『画(絵)入読本外題作者画工書肆名目集』と同種の史料として扱われています。
写本が東北大学図書館の狩野文庫に所蔵されており、以下のマイクロ資料は当館にも所蔵されています。
『東北大学附属図書館所蔵狩野文庫マイクロ版集成 [第4門 語学・文学]』(丸善, 1992)
→こちらの番号「DHH-029」のリールに『読本類出版手留』が所収されています。
その他、お探しの史料は確認できませんでした。
調査内容については、回答プロセスをご参照ください。
- 回答プロセス
-
1. 貸本屋について確認
(1)本学契約データベースJapanKnowledge Libを検索(検索キーワード:貸本屋)
→貸本屋の概要と、参考文献の情報が得られた。
①「貸本屋」(『国史大辞典』より)
→「書籍を損料(講売料)を取って貸すことを営業とする家、およびその人をいう。(中略)江戸時代の中期以後になると、新刊書籍の出るたびごとに、それを荷負って、申込者の家をめぐり歩いて配本する方法と、家にいて借り手の来るのを待つ二とおりの商法が行われた。」とある。また、参考文献として以下のものが挙げられている。
・今田洋三『江戸の本屋さん:近世文化史の側面』(日本放送出版協会, 1977)、
→p.152-153に貸本屋が当時どれくらいいたかを確認する資料として、『画入読本外題作者画工書肆名目集』と『江戸繁昌記』が紹介されている。
『画入読本外題作者画工書肆名目集』については、「文化五年(一八〇八)の記録によると、貸本屋も地域毎に組を作らされており、(中略)十二組、合計人数六百五十六人となっている。」とある。
また『江戸繁昌記』については、「天保期(一八三〇年代)には、(中略)江戸の貸本屋八百軒と伝えられている。」とある。
・長友千代治『近世貸本屋の研究』(東京堂出版, 1982)
→p.1-43の第一章「一 貸本屋誕生の背景」「二 貸本屋の出現」「三 貸本屋の展開」を参照したところ、前述の文化5年の『画入読本外題作者画工書肆名目集』以前で、当時の貸本屋に従事していた人の名前がわかるリストに類する史料は確認できなかった。文化5年以前に貸本屋が存在していたことは、文献の挿絵や、俳句の中に登場する貸本屋から考察されていた。
p.43に「専業かどうかは不明で、その正確な数はつかめない。」「江戸時代の貸本屋というのは、多くは本屋や行商本屋の兼業」とある。
②「貸本屋」(『世界大百科事典』より)
→「貸本屋は,江戸時代寛永年間(1624-44)以降,しだいに民衆向けのかな書き中心の小説,実用書,娯楽読物が出版されるようになり,それらを売り歩く行商本屋の兼業として始まったとみられる。(中略)貸本屋は08年(文化5)江戸で656軒(《画入読本外題作者画工書肆名目集》),同じころ大坂で約300軒(《慶長以来大坂出版書籍目録》)という記録もあるが,本屋との兼業者も含めるとこの数をはるかに上回ると思われる。」とある。
※『慶長以来大坂出版書籍目録』について、国立国会図書館オンライン、CiNii Books、日本古典籍総合目録データベース、東京大学史料編纂所所蔵史料目録データベースを検索したが、所蔵や翻刻の有無を確認できなかった。
(2)当館所蔵の以下の参考図書を確認
→探している史料に関する情報は特に得られなかった。
・『江戸時代館』(小学館, 2013)
・笹間良彦『復元 江戸生活図鑑』(柏書房, 1995)
・『江戸時代「生活・文化」総覧』(新人物往来社, 1992)
・『事典 しらべる江戸時代』(柏書房, 2001)
・渡辺信一郎『江戸の生業事典』(東京堂出版, 1997)
・『江戸学事典』(弘文堂, 1994)
・『江戸・東京学研究文献案内』(青弓社, 1991)
2. 「画入読本外題作者画工書肆名目集」を確認
(1)当館所蔵確認(検索キーワード:外題作者画工書肆名目集)
→本学OPACを検索したがヒットなし。
(2)他館所蔵確認(検索キーワード:外題作者画工書肆名目集)
①日本古典籍総合目録データベースを検索
→以下の書誌が1件ヒット。
http://base1.nijl.ac.jp/infolib/meta_pub/CsvDefault.exe?DEF_XSL=default&GRP_ID=G0001401&DB_ID=G0001401KTG&IS_TYPE=csv&IS_STYLE=default(参照:2018-08-01)
→『絵入読本外題作者画工書肆名目集』という表記で登録されている。慶應義塾大学図書館に写本が所蔵されていることと、上記翻刻資料の情報が確認できた。
※慶應義塾大学図書館OPACの検索では『絵入読本外題作者画工書肆名目集』の所蔵は確認できなかった。
http://kosmos.lib.keio.ac.jp/primo_library/libweb/action/search.do?vid=KEIO(参照:2018-08-01)
②国立国会図書館オンラインを検索
→以下の翻刻資料が見つかった。
・松本隆信「画入読本外題作者画工書肆名目集 解題・翻刻」(『西鶴:研究と資料』, 至文堂, 1957, p.153-179)
国立国会図書館デジタルコレクションにて公開あり。(図書館送信資料)
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1356956(参照:2018-08-01)
→p.176-177に「文化五辰年五月改○町々貸本屋世話役名前(○朱)組合惣人数高」の記載あり。p.177上段に「最寄分十弐組惣人数凡 〆六百五十六人程」とあり、プロセス1(1)②「貸本屋」(『世界大百科事典』より)の内容と一致する。
→p.154の解題に「本書と同種の伝本としては、今迄に知り得たものに上野図書館蔵、「読本類出版手留」写一冊がある。」とある。
3.『読本類出版手留』を確認
①本学OPAC、CiNii Books、NDLオンラインを検索したがヒットなし。
②WARP(国立国会図書館インターネット資料収集保存事業)にて「読本類出版手留」を検索
→『展観目録第31号』(東北大学附属図書館ホームページより)にて、東北大学附属図書館の所蔵情報を確認
→東北大学附属図書館OPACにて「読本類出版手留」を検索したところ、東北大学附属図書館狩野文庫の所蔵を確認
https://opac.library.tohoku.ac.jp/opac/opac_details/?reqCode=fromlist&lang=0&amode=11&bibid=TT21254670&opkey=B153310997738122&start=1&totalnum=1&listnum=0&place=&list_disp=20&list_sort=0&cmode=0&chk_st=0&check=0(参照:2018-08-01)
③『東北大学附属図書館所蔵狩野文庫マイクロ版集成 [第4門 語学・文学]』(丸善, 1992)
→リール番号「DHH-029」に『読本類出版手留』の所収あり。「貸本世利本渡世の者ニ而手広にいたし候者」として18名の名前が挙げられている。刊行年は不明。
※リール番号は『狩野文庫目録和書之部 : 東北大学附属図書館所蔵』(丸善, 1994)の総合索引にて確認
4. 関連文献の確認
→以下の本学所蔵資料を確認したが、探している史料に関する情報は特に得られなかった。
(1)本学契約データベースbookplusを検索(検索キーワード:貸本屋&江戸)
・長友千代治『江戸庶民の読書と学び』(勉誠出版, 2017)
・新藤透『図書館と江戸時代の人びと』(柏書房, 2017)
・秋田喜代美監修『本屋さんのすべてがわかる本〈2〉調べよう!日本の本屋さん』(ミネルヴァ書房, 2013)
・木越俊介『江戸大阪の出版流通と読本・人情本』(清文堂出版, 2013)
(2)国文学論文目録データベースを検索(検索キーワード:貸本)
・比企蝉人「出版元・古本屋・貸本屋〔川柳江戸職業往来〕」(『国文学』1964, 9(11), p.53-55)
・社会心理研究所「大衆文学の読まれ方―貸本屋の調査から―」(『文学』1957, 25(12), p.120-132)
・石井研堂「貸本屋の貸本標」(『書物往来』1925, 25(15))
・長友千代治「近世=行商本屋・貸本屋・読者」(『解釈と鑑賞』1980, 45(10), p.92-106)
・長友千代治「本屋の貸本屋, 貸本屋の出版」(『文学』1981, 49(11), p.83-94)
・宇田川真紀「江戸の民衆の読書と貸本屋」(『文献探索』1999, 98, p.67-71)
・木越俊介「上総屋利兵衛と貸本屋―寛政~文化期江戸戯作の一齣」(『国語と国文学』2002, 79(9), p.31-42)
・二又淳「貸本屋伊勢屋忠右衛門の出板活動」(『読本研究新集』2001, 3, p.120-160)
(3)本学契約データベース雑誌記事索引集成データベースを検索(検索キーワード:貸本屋&江戸)
・塚原渋翁談「江戸時代の軟文学(一)、江戸末期の貸本屋」(『あふひ』1910, 3, p.7-9)
5. 国立国会図書館リサーチ・ナビの調べ方案内「江戸時代の商人の名前を調べる」を参照し、以下の資料・データベースを確認
https://rnavi.ndl.go.jp/research_guide/entry/post-401.php(参照:2018-08-01)
・国立歴史民族博物館 江戸商人・職人データベース
https://www.rekihaku.ac.jp/up-cgi/login.pl?p=param/edos/db_param(参照:2018-08-01)
→検索項目「職種・所持株」内に「貸本屋」はなかった。
・田中康雄編『江戸商家・商人名データ総覧 7巻』(柊風舎, 2010)
→資料一覧表中のp.411「業種品目」が「本」の業種に「貸本屋」が挙げられていない。
・花咲一男編『諸国買物調方記 : 江戸十組問屋便覧・東京買物独案内』(渡辺書店, 1972)
→『諸国買物調方記』(1692年刊の複製)には、江戸時代初期~中期の江戸、京都、大阪の商人の名前が掲載されているとのこと。
→国立国会図書館オンラインの書誌によると、別名『万買物調方記』とある。
http://id.ndl.go.jp/bib/000001166361(参照:2018-8-23)
→国立国会図書館デジタルコレクションにて公開あり。判読は難しかったため、質問者に紹介までとした。
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2532535(参照:2018-8-23)
- 事前調査事項
- NDC
-
- 日本史 (210 9版)
- 読書.読書法 (019 9版)
- 参考資料
-
- 『国史大辞典』JapanKnowledge Lib(参照:2018-08-01)
-
今田洋三. 江戸の本屋さん : 近世文化史の側面. 日本放送出版協会, 1972. (NHKブックス)
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I077589903-00 (NCID:BN02046711) -
長友千代治. 近世貸本屋の研究. 東京堂出版, 1982.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001561836-00 (NCID:BN01579208) - 『世界大百科事典』JapanKnowledge Lib(参照:2018-08-01)
-
江戸時代館. 小学館, 2013. (ビジュアル・ワイド)
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I048097304-00 (NCID:BB13019498) -
笹間良彦. 復元江戸生活図鑑. 柏書房, 1995.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002409230-00 (NCID:BN12222027) -
江戸時代「生活・文化」総覧. 新人物往来社, 1992.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002178804-00 (NCID:BN07588937) -
しらべる江戸時代 : 事典. 柏書房, 2001.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000003032473-00 (NCID:BA53782971) -
渡辺信一郎. 江戸の生業事典. 東京堂出版, 1997.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002594860-00 (NCID:BA30616033) -
江戸学事典. 弘文堂, 1994.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002311573-00 (NCID:BN10483970) -
江戸・東京学研究文献案内. 青弓社, 1991.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002140243-00 (NCID:BN06845761) -
西鶴 : 研究と資料. 至文堂, 1957. (国文学論叢 ; 第1輯)
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000000973643-00
国立国会図書館デジタルコレクションにて公開あり。(図書館送信資料)
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1356956(参照:2018-08-01) (NCID:BN05816451) - 読本類出版手留
-
日本古典籍総合目録データベース
http://base1.nijl.ac.jp/infolib/meta_pub/CsvDefault.exe?DEF_XSL=default&GRP_ID=G0001401&DB_ID=G0001401KTG&IS_TYPE=csv&IS_STYLE=default(参照:2018-08-01) -
慶應義塾大学図書館OPAC
http://kosmos.lib.keio.ac.jp/primo_library/libweb/action/search.do?vid=KEIO(参照:2018-08-01) -
長友千代治. 江戸庶民の読書と学び. 勉誠出版, 2017.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I028549728-00 (NCID:BB24713804) -
新藤透. 図書館と江戸時代の人びと. 柏書房, 2017.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I028345035-00 (NCID:BB24207693) -
稲葉茂勝, 秋田喜代美. 調べよう!日本の本屋さん. ミネルヴァ書房, 2013. (本屋さんのすべてがわかる本)
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I050319530-00 (NCID:BB14393809) -
木越俊介. 江戸大坂の出版流通と読本・人情本. 清文堂出版, 2013.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I025025078-00 (NCID:BB13990314) -
比企蝉人. 出版元・古本屋・貸本屋--川柳江戸職業往来. 1964-09. 國文學 : 解釈と教材の研究 / 學燈社 [編] 9(11) p. 53~55
http://iss.ndl.go.jp/books/R000000004-I154494-00 (NCID:AN00089872) -
社会心理研究所. 大衆文学の読まれ方--貸本屋の調査から. 1957-12. 文学 / 岩波書店 [編] 25(12) p. 120~132
http://iss.ndl.go.jp/books/R000000004-I127410-00 (NCID:AN00220944) - 石井研堂「貸本屋の貸本標」(『書物往来』1925, 25(15)) (NCID:AN00356414)
- 長友千代治「近世=行商本屋・貸本屋・読者」(『国文学解釈と鑑賞』1980, 45(10), p.92-106) (NCID:AN00265261)
- 長友千代治「本屋の貸本屋, 貸本屋の出版」(『文学』1981, 49(11), p.83-94) (NCID:AN00220944)
-
宇田川真紀. 江戸の民衆の読書と貸本屋. 1999-02-23. 文献探索 (1998) p. 67~71
http://iss.ndl.go.jp/books/R000000004-I4706147-00 (NCID:AA11220274) -
木越 俊介 , 木越 俊介. 上総屋利兵衛と貸本屋--寛政~文化期江戸戯作の一齣. 2002-07. 国語と国文学 / 東京大学国語国文学会 編 79(7) (944) p. 31~42
http://iss.ndl.go.jp/books/R000000004-I6355214-00 (NCID:AN00088621) -
読本研究の会. 読本研究新集 第3集. 翰林書房, 2001.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000003039039-00 (NCID:AA11350713) - 塚原渋翁談「江戸時代の軟文学(一)、江戸末期の貸本屋」(『あふひ』1910, 3, p.7-9) (NCID:AN00399461)
-
国立国会図書館リサーチ・ナビ 調べ方案内「江戸時代の商人の名前を調べる」
https://rnavi.ndl.go.jp/research_guide/entry/post-401.php(参照:2018-08-01) -
国立歴史民族博物館 江戸商人・職人データベース
https://www.rekihaku.ac.jp/up-cgi/login.pl?p=param/edos/db_param(参照:2018-08-01) -
江戸商家・商人名データ総覧 第7巻. 柊風舎, 2010.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000010651457-00 (NCID:BB00830745) -
花咲一男編. 諸国買物調方記 : 江戸十組問屋便覧・東京買物独案内. 渡辺書店, 1972.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001166361-00 (NCID:BN02653066) -
東北大学附属図書館. 狩野文庫目録 : 東北大学附属図書館所蔵 和書之部 総合索引 (書名総索引・著者名総索引). 丸善, 1994.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002356176-00 (NCID:BN11677779) -
狩野文庫マイクロ版集成 東北大学附属図書館所蔵 DGD・001-DHL・009. 丸善, 1992.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002719844-00 (NCID:BN08886158) -
国文学研究資料館 国文学論文目録データベース
http://base1.nijl.ac.jp/infolib/meta_pub/G0038835RBN - 雑誌記事索引集成データベース
-
万買物調方記. 元禄5.
国立国会図書館デジタルコレクションにて公開あり。
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2532535(参照:2018-8-23)
- キーワード
-
- 貸本屋
- 江戸時代
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 日本史
- 質問者区分
- 教員
- 登録番号
- 1000239902