レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2017/10/20
- 登録日時
- 2018/04/12 09:05
- 更新日時
- 2018/12/26 18:28
- 管理番号
- ASN2017-14
- 質問
-
未解決
淡路島にある「三原池」(みはらのいけ)が地図に載っているか。地図はできるだけ古いものが良い。
みはらの池の位置関係が分かる資料でも良い。
【情報源】
『紫式部集』第34番歌 「言い絶えば さこをは絶えめ なにかをの みはらの池を つつみしもせむ」
上記歌の本歌と推測される歌
『好忠集』348 「氷りする みはらの池の 池堤 おほはぬ箱の 鏡とぞ思ふ」
(みはらの池には諸説ある。例:摂津、武蔵)
- 回答
-
当館所蔵資料にて、淡路島にある「三原池(みはらのいけ)」を確認する事ができませんでした。
近世より兵庫県にてため池が作られたこともあり、淡路国図の詳細の確認等も含め、
郷土資料を所蔵している施設へ訪問利用して調査する事が必要かもしれません。
また、当館に所蔵がなかった論文の本文を確認すると、関連情報が見つかるかもしれません。
- 回答プロセス
-
●作品から、「みはらの池」の淡路説があるか情報を探す
1.基本事項を確認する
1-1 レファレンス資料から探す <分類:910(日本文学)、9111(日本文学-和歌)>
【★1】JapanKnowledge <キーワード:紫式部集、三原池、三原 / 全文検索:三原、池 など>
「紫式部集」(『国史大辞典』)
「平安時代中期の紫式部の家集。一巻。式部晩年の自撰に成る。総歌数百二十八首。(中略)
若いころの友人との別離に始まり、恋・旅・雑詠・哀傷など、ほぼ全生涯にわたる。」
参考文献あり
「紫式部集」(『群書類従』)
「1から61は少女時代より出仕に至るまでの体験を年次を追って回想撰述したものらしい。」
【★2】『和歌の歌枕・地名大辞典』
p.1641「三原の池」
[典拠] 『夫木』廿三に、みはらの池、摂津 10835 氷居るみはらの池の池堤覚えぬ箱の鏡とぞ思ふ
[原歌] 『好忠集』348の歌
[地理] 「三原の池」は「原」に接頭語のついた「み原の池」のことかともいう
【★3】『日本古典文学大辞典』
6巻p.156「好忠集」→「曽丹集」
4巻p.52「曽丹集」
曽根好忠の家集。曽根好忠集、好忠集。現存形態の集は他撰と考えられ、平安末期までには成立か。
4巻p.56「曽根好忠」
平安時代の歌人。生没年未詳。延長8年(930)から数年前までの誕生か?
長保5年(1003)70数歳で生存していたか?中古三十六歌仙の一人。家集に「曽丹集」がある。
次の資料では、「みはらの池」の情報を確認できず
『平安朝文学事典』(岡一男編 東京堂出版 1972.5 91023/O36)
『王朝文化辞典』(山口明穂,鈴木日出男編 朝倉書店 2008 9103/Y24)
『王朝文学文化歴史大事典』(小町谷照彦,倉田実編著 笠間書院 2011.11 91023/KO56-1)
2.作品の解釈本、研究書などを確認する
2-1.【★1】参考文献より
次の資料は、「みはらの池」は摂津国や所在不明などと解釈している。
『紫式部集評釈』(竹内三千代著 桜楓社 1969.6 911138/MU56-1)
巻末索引より掲載ページ確認。
p.92 「みはらの池」は実在したか不明。
『枕草子』「池は」の段の「はらの池は玉藻な刈りそと・・・」や風俗歌「をしたかべ鴨さへ来ゐる
はらの池や、・・・」などの「はらの池」に接頭語「み」をつけたものか。
『和歌色葉』に「摂津 はらの池」とある。
以下の資料も同様な方法で確認できる。
『紫式部集全評釈』(南波浩著 笠間書院 1983.6 911138/MU56-3)
『紫式部集の解釈と論考』(木船重昭著 笠間書院 1981.11 911138/MU56-7)
2-2. OPAC検索 <タイトル検索:紫式部集、紫式部、好忠集、曾丹集、和歌、歌枕 など>
次の資料は、「みはらの池」は摂津国や所在不明、摂津の国の歌枕などと解釈している。
『紫式部集全釈』([紫式部原著];笹川博司著 風間書房 2014.6 911108/SH33/39)
巻末の「主要語彙索引」から「みはらのいけ」のページを確認
p.168 「みはらのいけ」の「み」は美称の接頭語。「原の池」に同じ。
『五代集歌枕』に「はらの池 摂津」など。
【他出】『夫木和歌抄』(鎌倉時代成立)みはらのいけ、摂津 家集 紫式部
『歌枕名寄』(原形は鎌倉時代成立)御原池 紫式部
以下の資料も同様な方法で確認できる。
『曾禰好忠集の研究』(神作光一著 笠間書院 1974.8 911138/SO42)
『曾禰好忠集全釋』(神作光一,島田良二著 笠間書院 1974.8 911138/SO42) 参考文献掲載あり
『「曾禰好忠集」注解』(川村晃生,金子英世編 三弥井書店 2011.11 911138/SO42-2)
『王朝和歌論考』(島田良二著 風間書房 1999.10 91113/SH36-1)
『平安和歌歌枕地名索引』(ひめまつの会編著 大学堂書店 1972.2 91113/H59)
『日本うたことば表現辞典 12:歌枕篇上巻』
(日本うたことば表現辞典刊行会編 遊子館 9111/O69-1/12)
『紫式部と和歌の世界』([紫式部著];上原作和,廣田収編 武蔵野書院 2012.4 911138/MU56-12)
など
次の資料は「みはらの池」の情報を確認できなかったが、参考文献、文献目録、研究年表は活用できる。
『紫式部の方法』(南波浩編 笠間書院 1983.6 911138/MU56-3)
『「紫式部」と王朝文芸の表現史』(高橋亨編 森話社 2012.2 91023/MU56-7)
『紫式部集からの挑発:私家集研究の方法を模索して』
(廣田收,横井孝,久保田孝夫著 笠間書院 2014.5 911138/MU56-11)
『紫式部集大成:実践女子大学本・瑞光寺本・陽明文庫本』
(久保田孝夫,廣田收,横井孝編著 笠間書院 2008.5 911138/MU56-6)
次の資料では、「みはらの池」の情報を確認できず
『和歌文学の世界 第2巻』(和歌文学会編 笠間書院 1974.10 911104/W17/2)
『紫式部集の新解釈』(徳原茂実著 和泉書院 2008.11 911138/MU56)
『紫式部集・紫式部日記の研究』(河内山清彦著 桜楓社 1980.2 911138/MU56-8)
『王朝文学の研究』(今井源衛著 パルトス社 1995.4 9133/I43-1)
『平安朝和歌 : 読解と試論』(藤岡忠美著 風間書房 2003.6 91113/F65-1) など
3. 論文を探す
3-1. [2-2]の参考文献より
以下の関係論文は当館に所蔵がないため、本文を確認する必要がある。
原田敦子“紫式部集「かひ沼の池の歌語り」私論”大阪成蹊女子短期大学研究紀要(24) 1987.3
廣田収“『紫式部集』の地名”同志社国文学(31) pp.1-16 1988.12 など
3-2. データベースから探す
<キーワード:紫式部集△三原池、みはら池、好忠集、曽根好忠、氷りする△みはらの池 など>
【★4】CiNii Articles、【★5】JAIRO、【★6】国文学論文目録データベースで、関連論文を確認。
以下の論文本文を確認したが、「みはらの池」の情報を確認できず
神作光一“曽弥好忠集に見られる地名考”文学論藻 (43), pp.1-21, 1969-12
西山秀人“『源氏物語』の表現づくり:曾禰好忠歌の受容について“
『創る』(上田女子短期大学公開講座編 上田女子短期大学 1996.8)pp.13-25 など
以下の関係論文は当館に所蔵がないため、本文を確認する必要がある。
神作光一“曽禰好忠集の表現--枕詞を中心として”文学論藻 (34), pp.14-27, 1966-10 など
以下のデータベースを確認したが、関連論文を確認できなかった。
Google scholar http://scholar.google.co.jp/
J-STAGE https://www.jstage.jst.go.jp/browse/-char/ja/
国立国会図書館デジタルコレクション http://dl.ndl.go.jp/
●「地名」から情報を探す
1.基本事項を確認する
1-1. レファレンス資料から探す <分類:291(地理・地誌・紀行-日本)>
【★1】JapanKnowledge <キーワード:三原池、三原 / 全文検索:三原、池 など>
「三原(兵庫)」(『日本大百科全書(ニッポニカ)』)
兵庫県淡路島中南部、三原郡にあった旧町名(三原町(ちょう))。2005年(平成17)市制施行して
南あわじ市。淡路島最大の三原平野に位置し、古代には淡路の国府が置かれ政治の中心であった。
「みはらぐん【三原郡】兵庫県」(『日本歴史地名大系』)
[近世] 水利として三原川水系の用水のほか、浦壁(うらかべ)大池(現三原町)をはじめ
大小多数の溜池が築造される。
「溜池」(『国史大辞典』)
主に灌漑に充てる目的から、雨水・渓流などを貯溜するために築造された池。
【★7】『日本歴史地名大系 兵庫県の地名1』
p.1141 「文献解題・用語解説」
近世以前に成立の地誌類、記録類、郷村帳、絵図類などを掲載。調査すべき原典資料の把握に役立つ。
「淡路国名所図絵」(所蔵あり 29164/A33)「淡路常磐草」「阿波・淡路両国絵図」(所蔵なし)など
【★8】『角川日本地名大辞典 28兵庫県』
p.1445 「三原郡」 郡名の由来
①天皇の御猟場で、それが御原と称され、三原と記されるようになったとする説(淡路常磐草)
②単なる原に美称の「み」を付し、「みはら」と称していたものが、のちに尊敬の意の「み」に
解されたとする説
巻末に「兵庫県参考図書目録」… 『三原郡史』(1979)、『三原文化』(1969)など
三原の地名の由来等の記述はあるが、「三原池」に関する記述なし
『日本古代史地名事典』p.730「三原郡」(みはらのこおり)参考文献あり。
『平安時代史事典』
『日本地名大事典 下:せ-わ』
『日本史大事典 1:あ〜お』
『日本歴史地図 原始・古代(下)』
『古代地名大辞典』
『大日本地名辭書 再版 第1巻』
2. 一般図書(兵庫県史・郷土資料)を探す
2-1.【★7】【★8】の参考文献より
国立国会図書館デジタルコレクション http://dl.ndl.go.jp/
三原の地名の由来等の記述はあるが、「三原池」に関する記述なし
『三原郡史』
(三原郡史編纂委員会編 三原郡町村会事務所 1979.3 書誌ID:000001412894 図書館送信参加館内公開)
『兵庫県史. 第1巻 (原始・古代編)』
(兵庫県史編集専門委員会編 兵庫県 1974 書誌ID:000001231135 図書館送信参加館内公開)
『淡路島の民俗』(和歌森太郎編 吉川弘文館 1964 書誌ID:00000106142 図書館送信参加館内公開)
『淡路常盤草. 巻之5-6』(仲野安雄著 広瀬永太郎 1887 書誌ID:000000602916)
2-2. OPACから探す <キーワード:兵庫県△歴史、近畿地方△荘園、荘園△地図 など>
次の資料では「三原池」を確認できず
『日本古代荘園図』(金田章裕[ほか]編 東京大学出版会 1996.2 2103/KI42)
『近畿地方の荘園』(網野善彦[ほか]編 吉川弘文館 2001.11 2104/A45-11/8)
『兵庫県の歴史』(今井修平[ほか]著 山川出版社 2004.8 21008/KE51/28)
3. 地図を探す
3-1. OPAC検索 <件名:絵図、古地図、歴史地図 など>
【★9】『国絵図の世界』
p.251-「淡路国」
資料中の地図写真からは詳細を確認できないが、所蔵元に訪問し確認するという方法もある
次の資料では「三原池」を確認できず
『地図で読む江戸時代』(山下和正著 柏書房 1998 291/Y44/A)
p.78 「淡路国全図」(明治3年刊行 原図は幕末)
『寛永十年巡見使国絵図日本六十余州図』(川村博忠編 柏書房 2002 291/KA95-1)
p.55淡路國
『古地図が語る大災害』(本渡章著 創元社 2014 216/H84)
『地図でみる西日本の古代』
(島方洸一企画・編集統括;金田章裕[ほか]編集委員 平凡社 2009.5 2103/SH37)
3-2. Web情報
【★10】国土交通省 国土地理院
A.地図・空中写真閲覧サービス
Home > 地図・空中写真閲覧サービス > 「住所検索」から「淡路三原」で検索
> 淡路三原郵便局、県立淡路三原高等学校がヒット
クリックしておおよその場所の地図を出し、三原周辺の地図を閲覧。
主だった池の名称を確認できる。
表示の数字をクリック→ 国土地理院が整備した地図や空中写真などを表示
オレンジ数字…都市整備部都市計画課計画係、ピンク数字…空中写真
青数字…国土基本図、緑数字…2.5万地形図
B.古地図コレクション
Home >古地図コレクション > 国図 > 「淡路国図 全」
細部までは確認できず
参照:平井松午「淡路国」(【★9】収録の地図と同様)
4. 論文を探す
4-1. データベースから探す <キーワード:淡路△三原△池、兵庫△ため池 など>
【★5】JAIRO、【★11】J-STAGEで、関連論文を確認。
以下の論文本文を確認したが、「三原池」の情報を確認できず。
浅田増美,一ノ瀬友博“兵庫県淡路島のため池の分布特性とその管理に関する研究“
農村計画学会誌 Vol.20 No.20-suppl pp.79-84 2001
南埜猛“兵庫のため池“兵庫地理 51 pp.11-19 2006.03.31 など
以下のデータベースを確認したが、関連論文を確認できなかった
CiNii Articles https://ci.nii.ac.jp/
Google scholar http://scholar.google.co.jp/
国立国会図書館デジタルコレクション http://dl.ndl.go.jp/
5. Web情報 <キーワード:淡路△三原池 など>
【★12】兵庫県ホームページ
食・農林水産 > 農山漁村 > 防災・保全 > 県民局・県民センターの情報「淡路島のため池保全活動」
> 淡路ため池ものがたり(第1~2章)
「日本一ため池が 密集する地域「淡路島」」 各ため池の築造史なども簡単に掲載
以上
<Web最終確認日:2018/11/07>
- 事前調査事項
-
『紫式部集』注釈書、『日本古代史地名事典』、『角川日本地名大辞典』、『日本歴史地名大系』、『歌枕辞典』
- NDC
-
- 日本 (291 10版)
- 近畿地方 (216 10版)
- 詩歌 (911 10版)
- 参考資料
-
- 【★1】JapanKnowledge(ジャパンナレッジ)[契約DB] (百科事典・辞書・ニュース・学術サイトURL集などを検索可能)
-
【★2】吉原栄徳 著 , 吉原, 栄徳, 1933-. 和歌の歌枕・地名大辞典. おうふう, 2008.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000009373535-00 , ISBN 9784273034351 (当館請求記号:911107/Y87) -
【★3】日本古典文学大辞典編集委員会/編. 日本古典文学大辞典 第5巻. 岩波書店, 1984.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I000103233-00 , ISBN 4000800655 (当館請求記号:9103/N773/5) - 【★4】CiNii Articles <http://ci.nii.ac.jp/> (学術論文情報を検索の対象とする論文データベース・サービス)
- 【★5】JAIRO <http://jairo.nii.ac.jp/> (日本の学術機関リポジトリに蓄積された学術情報を横断的に検索できるデータベース・サービス)
- 【★6】国文学論文目録データベース <http://base1.nijl.ac.jp/~rombun/> (国文学研究資料館が提供する日本文学研究論文の総合目録データベース)
-
【★7】日本歴史地名大系 第29巻 1 (兵庫県の地名 1). 平凡社, 1999.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002922529-00 , ISBN 4582490603 (当館請求記号:291/N773/29-1) -
【★8】「角川日本地名大辞典」編纂委員会 編纂. 角川日本地名大辞典 28 (兵庫県). 角川書店, 1988.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001938640-00 , ISBN 4040012801 (当館請求記号:291/KA14/28) -
【★9】国絵図研究会 編 , 国絵図研究会. 国絵図の世界 : Kuniezu:province maps of Japan made by the Tokugawa Government. 柏書房, 2005.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000007861718-00 , ISBN 4760127542 (当館請求記号:291/KU43) - 【★10】国土交通省 国土地理院 <http://www.gsi.go.jp/> (2万5千分1地形図、空中写真等をデジタルデータとした「電子国土基本図」を閲覧できる)
- 【★11】J-STAGE <https://www.jstage.jst.go.jp/browse/-char/ja> (日本の学協会が出版した最新の論文を簡単に検索し、閲覧することができるデータベース・サービス)
- 【★12】兵庫県ホームページ <https://web.pref.hyogo.lg.jp/> (兵庫県の暮らしや環境などを確認できるサイト。)
- キーワード
-
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- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 地名
- 質問者区分
- 学生
- 登録番号
- 1000234595