レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 登録日時
- 2020/01/18 18:12
- 更新日時
- 2020/02/15 10:18
- 管理番号
- 2020.1-5
- 質問
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未解決
松本清張『小説日本芸譚』の「千利休」という短編の中に、千利休が着ている衣服の表現として「布子色の綿帯」という言葉が出てくるが、この「布子色」とはどのような色か。
- 回答
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■色として「布子色」という言葉をお調べした資料から見つけることはできませんでした。ただし「布子(ぬのこ)」については、辞典類や資料などから「木綿の綿入れ。古くは麻布の袷または綿入れをいう。(資料①)」「粗末な衣服である、麻布で作った綿入れ。(資料②)」などのように記載されていました。
①『広辞苑』(新村 出/編 岩波書店 2018.1)
②『時代別国語大辞典 室町時代編』(三省堂 2000.3)
③『日本大百科全書24』(小学館 1994)
p797「綿入れ」の項目に、「(中略)一般に綿入れといえば綿入れ長着をさす。古くは綿布の長着に綿を入れたものを布子、絹布の長着に綿を入れたものを小袖といった。」との記載あり。
④『日本語大辞典』(講談社 1995.7)
p1656「ぬのこ【布子】」の項目に、「木綿地の綿入れ。古くは、麻布の袷や綿を入れた衣服をいった。」との記載あり。
⑤『最新きもの用語辞典』(文化出版局/編 文化出版局 1983.9)
p259「ぬのこ[布子]」の項目に、「麻や木綿の綿入れ。〈子〉のつく衣類は中入れを意味するが、元来、麻に苧屑(おくそ)や蒲(がま)の穂綿などを入れたもので、上物の絹の綿入れ、小袖と区別した。そのため、粗末な着物、身分の低い人の着物という意味を含んでいる。」との記載あり。
⑥『きもの用語大辞典』(装道きもの学院/編 主婦と生活社 1979.12)
p389「ぬのこ 布子」の項目に、「昔は、麻布や木綿(ゆう)などの植物繊維で仕立てた衣服のことをいった。または、下襲(したがさね)に用いた襖子(おうし)のこと。その後は、一般に木綿製の綿を入れた粗末な衣服の名称となった。」との記載あり。
・当時の衣服について調査
⑦『復原戦国の風景:戦国時代の衣・食・住』(西ケ谷 恭弘/著 PHP研究所 1996.4)
p190~「衣服としての小袖の普及」の項目に、
p191「上下身分関係を問わず常服となった小袖は、生地の丈夫な木綿が戦国期後半以降に一般化するが、それ以前は「布子」と呼ばれた麻布の小袖であった。」との記載あり。
■国立国会図書館レファレンス協同データベース事業サポーターの方から、以下の情報がありました。
みんぱくリポジトリで、下記論文が公開されていました。
デザイナーからみた民博の展示技法
岩城 晴貞
国立民族学博物館調査報告 (16), 29-55, 2000-10-27
http://doi.org/10.15021/00002174
この論文に次の箇所がありました。
p.32
②利休ねずみ
「・・・『長闇堂の記』という著書があって・・・墨染布子色という色を、利休ねずみとよんで世の中でもてはやすようになったという記述がある。その利休ねずみという色は、たがいにあい矛盾する要素、たとえば赤と緑といった、はげしく対立する色を相殺して、ダイナミックな平衡状態にした色です。ですから利休ねずみにはグリーンがかったもの、紫がかったもの、いろいろな種類の利休ねずみがある。・・・」
「利休ねずみは、ただ色をいうだけでなく、じつはさまざまな、矛盾するかにみえる要素の平衡的共有状態をいうのです。・・・」
(『民博誕生』梅悼忠夫編より)
参考:
コトバンク
利休鼠 りきゅうねずみ
https://kotobank.jp/word/%E5%88%A9%E4%BC%91%E9%BC%A0-193033
国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/
続群書類従 第19輯 管絃部.蹴鞠部.鷹部.遊戯部 塙保己一 編 (続群書類従完成会
, 1926)
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/936476
巻567
『長闇堂記』
p.1331 下段
「墨染布子色のわた帯」
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/936476/671
- 回答プロセス
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その他、調査した主な資料は以下のとおり。
・日本の伝統色について
『日本の色辞典』(吉岡 幸雄/著 紫紅社 2000.6)
『色の名前事典』(福田 邦夫/著 主婦の友社 2001.5)
『色の用語事典』(長谷井 康子/著 新星出版社 2006.10)
『日本色名大鑑』(上村 六郎/著 山崎 勝弘/著 甲鳥書林 1943)
『色の手帖』(永田 泰弘/監修 小学館辞典編集部/編集 小学館 2002.5)
『日本色彩事典』(武井 邦彦/[著] 笠間書院 1978)
『よくわかる色彩用語ハンドブック』(内田 洋子/共著 宇田川 千英子/共著 早稲田教育出版 2002.12)
『色名事典』(清野 恒介/著 島森 功/著 新紀元社 2005.7)
『日中韓常用色名小事典』(日本ファッション協会/監修 日本色彩研究所/編著 クレオ 2007.12)
『日本史色彩事典』(丸山 伸彦/編 吉川弘文館 2012.5)
『日本の伝統色:色の小辞典』(日本色彩研究所/編 福田 邦夫/著 読売新聞社 1987.5)
『奇妙な色名事典』(福田 邦夫/著 青娥書房 1993.11)
『色の歴史手帖:日本の伝統色十二カ月』(吉岡 幸雄/著 PHP研究所 2003.9)
『日本の伝統・色とかたち 衣』(日竎 貞夫/写真 グラフィック社 1987.11)
『色の名前』(近江 源太郎/監修 ネイチャー・プロ編集室/構成・文 角川書店 2000.4)
『とりあわせを楽しむ日本の色』(コロナ・ブックス編集部/編 平凡社 2009.9)
『日本人の愛した色』(吉岡 幸雄/著 新潮社 2008.1)
『色の名前で読み解く日本史』(中江 克己/著 青春出版社 2003.2)
『歴史にみる「日本の色」』(中江 克己/著 PHP研究所 2007.12 )
『日本の色:眼で遊び、心で愛でる』(学研 2004.3)
『日本の色』(コロナ・ブックス編集部/編 平凡社 2006.9)
『すぐわかる日本の伝統色』(福田 邦夫/著 東京美術 2005.8)
『和みの百色』(吉岡 幸雄/著 PHP研究所 2005.6)
『着物と日本の色:着物で綴る日本伝統色』(弓岡 勝美/監修・コレクション パイインターナショナル 2017.12)
『着物と日本の色:帯の配色篇』(弓岡 勝美/編・コレクション 藤井 健三/監修 ピエ・ブックス 2008.2)
『着物と日本の色:夏篇』(弓岡 勝美/編・コレクション 藤井 健三/文 ピエ・ブックス 2006.6)
『日本の染と織』(伊藤 佐智子/著・アートディレクション パイインターナショナル 2011.7)
『色で巡る日本と世界』(城 一夫/監修 色彩文化研究会/著 青幻舎 2015.10)
『京の色事典330』(藤井 健三/監修 コロナ・ブックス編集部/編 平凡社 2004.12)
『色彩用語事典』(清野 恒介/編著 恵美 和昭/[ほか]著 新紀元社 2009.9)
・当時の衣服について
『法衣史』(井筒 雅風/著 雄山閣 1982)
『総合服飾史事典』(丹野 郁/編 雄山閣 1980.10)
『歴世服飾図説』(高橋 健自/著 思文閣 1975)
『江戸衣装図鑑』(菊地 ひと美/著画 東京堂出版 2011.11)
『原色日本服飾史』(井筒 雅風/著 光琳社出版 1982.7)
- 事前調査事項
- NDC
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- デザイン.装飾美術 (757)
- 小説.物語 (913)
- 参考資料
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新村出 編 , シンムライズル. 広辞苑 第7版. 岩波書店, 2018-01-12.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000099-I000085269-00 , ISBN 9784000801317 -
室町時代語辞典編修委員会 編. 時代別国語大辞典 室町時代編 4. 三省堂, 2000.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002870649-00 , ISBN 4385136033 -
日本大百科全書 24 2版. 小学館, 1994.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002800319-00 , ISBN 4095261242 -
講談社カラー版日本語大辞典 第2版. 講談社, 1995.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002477139-00 , ISBN 4061250027 -
文化出版局編 , 文化出版局. 最新きもの用語辞典. 文化出版局, 1983-09.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000074-I000051206-00 -
装道きもの学院 編 , 装道きもの学院. きもの用語大辞典. 主婦と生活社, 1979.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001437049-00 -
西ケ谷恭弘 著 , 西ケ谷, 恭弘, 1945-. 復原戦国の風景 : 戦国時代の衣・食・住. PHP研究所, 1996.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002490665-00 , ISBN 4569550029
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新村出 編 , シンムライズル. 広辞苑 第7版. 岩波書店, 2018-01-12.
- キーワード
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- 松本清張
- 小説日本芸譚
- 布子
- 伝統色
- 色彩
- 照会先
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- 北九州市立松本清張記念館
- 寄与者
- 備考
- 北九州市立松本清張記念館の方へ問い合わせたところ、「『小説日本芸譚』が「日本芸譚」として連載されたのが1957年で、作品を書くために参考にしたであろう資料についてはおそらく残っていません。そういったものから根拠を示すことはできません。」との回答をいただきました。
- 調査種別
- 内容種別
- 質問者区分
- 登録番号
- 1000272743