レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2019年01月15日
- 登録日時
- 2019/02/04 14:56
- 更新日時
- 2022/05/13 16:02
- 管理番号
- 2018-096
- 質問
-
未解決
湯地定基(ゆち/ゆじ/ゆぢ さだもと、初代根室県令)と新島襄は同時期にアメリカに留学しているが、帰国した後にも交流があったか。
湯地(留学中の変名は工藤十郎 Zuro, Kudo)は新島のアーモスト大学在学中に、新島の勧めで洗礼を受けている。
2人の帰国後の書簡や、新島が湯地に言及した文献があるか。
- 回答
-
留学中の交流については、新島が工藤十郎(湯地定基)に言及した書簡が見つかりましたが、帰国後の交流については文献が見つかりませんでした。
詳しくは回答プロセスをご覧ください。
- 回答プロセス
-
1.同志社に関する基本文献の確認
・『同志社百年史』(通史編2)
人名索引を確認。
→「湯地定基」「工藤十郎」記載なし。
・『同志社山脈:113人のプロフィール』
人名索引を確認。
→「湯地定基」「工藤十郎」記載なし。
2.新島襄の留学について確認
J.D.デイヴィス著, 北垣宗治訳『新島襄の生涯』(淡交社, 1975)
付録・新島襄略年譜(p.218-229)によると、1865年(慶応元年)~1874年(明治7年)。
3.新島襄の研究文献の確認
キーワード:「工藤十郎 新島襄」または「湯地定基 新島襄」
CiNii Aeticles [参照 2019-03-14]
→参考になりそうな資料は見当たらず。
Google Scholar [参照 2019-03-14]
→結果は5件。そのうち関連のありそうな論文を確認。
(1)吉原 重和. 新島襄と吉原重俊(大原令之助)の交流. 新島研究:Neesima studies, 2013, no.104, p.3-31.
https://doors.doshisha.ac.jp/duar/repository/ir/16218/ [2019-01-07 参照]
→留学中の交流についての情報が見つかる。
冒頭のp.3に「吉原はモンソン到着早々にアンドーバーの新島襄の元を単身で訪れて・・・・・・同じ薩摩藩留学生の湯地定基も加えて新島襄とモンソンの薩摩藩留学生たちとの交流は続いた。」とあり。
p.7~「Ⅲ 新島襄との交流」
p.8の薩摩藩からの留学生6名の中に湯地定基(工藤十郎)の名前が見られ、p.9以降の新島襄の書簡およびその解説中に湯地との交流について書かれている部分がある。
「湯地」について触れられている書簡の日付は以下の3つ。
・1867年12月1日
・1868年11月14日
・1869年3月17日
参考文献に書かれていた『新島襄の手紙』には上記日付のものは掲載なし。
→『新島襄の手紙』の典拠となっている下記資料を確認。
・『新島襄全集』3・4巻(書簡編)(→3.へ)
・『新島襄の生涯と手紙』(新島襄全集10巻)
p.89~「フリント夫人あて アーモスト 一八六七年十二月一日」の手紙が掲載されており、その中に「モンソンからの二人の日本人」(p.89)とあり、手紙の後の解説(p.90)に「この手紙の中でふれられている日本人は、偽名のもとに・・・・・・薩摩藩主がこの国に派遣した六人のうちの二人なのであった。・・・・・・彼らのうちの一人は・・・・・・クラーク学長と連携した人で、エゾの知事に任命された」とある。これについては巻末の注解に「89・・・・・・一八六七年のカタログには・・・・・・クドー・ジューローの五名があがっている・・・・・・クドーは湯地定基であったことが判明している」「90・・・・・・**エゾの知事とはむろん北海道開拓使長官の黒田清隆をさす。・・・・・・湯地定基との混同であろう」とある。
(2)小川原正道「初代日銀総裁・吉原重俊の思想形成と政策展開」(『法學研究: 法律・政治・社会』(2014), 87(9), p.1-26)
慶応義塾大学学術リポジトリで閲覧できる。
http://koara.lib.keio.ac.jp/xoonips/modules/xoonips/detail.php?koara_id=AN00224504-20140928-0001 [参照 2019-03-14]
本文には新たな情報はないが、新島と吉原の交流の参考文献として挙げられている資料があるため確認。
本井康博著『マイナーなればこそ』(新島襄を語る9)(思文閣出版, 2012)
p.196~「薩摩と同志社」
p.203「モンソン・グループとの交流」に、薩摩藩が1866年に5名の留学生をモンソン・スクールに送り出したこと、新島襄はそのうちの大原令之助(吉原重俊)・工藤十郎(湯地定基)と特に親しくしていたようだということが書かれている。
またp.205以降、薩摩藩留学生と新島の交流について、新島による記述がまとめられている。
塩崎哲著『アメリカ「知日派」の起源』(平凡社, 2001)
人名索引に「湯地定基」あり。
「第4章 西からの訪問者たち―日本人留学生」のp.93~100「新島襄と薩摩藩米国留学生」に、新島と湯地らの留学中の交流について書かれている。
記述があるとされているのは以下の文献。
・1867年8月26日の新島の日記
・1868年11月14日のメアリー・ヒドゥン宛書簡
書簡の日本語訳の後に、「この薩摩藩留学生は湯地定基である。おそらく…アメリカン・ボードを通して新島の所在を知ったのだろう。…」とあり、以降、薩摩藩留学生らの留学の経緯などについて書かれているが、それ以上の新島との交流については記述なし。
(3)北垣宗治「BOSTON PUBLIC LIBRARY 所蔵の日本人名簿 (1871-1876)」(『英学史研究』(1998)1999(31), p.111-132)
https://doi.org/10.5024/jeigakushi.1999.111 [参照 2019-03-14]
p.114で、名簿の中にある人名として「湯地治右衛門」(定基)があげられており、名簿の記述も翻刻されている(湯地はp.130-131)。また、p.115-117で、名簿に記載のある人々と新島との関連が書かれているが、湯地については記述なし。
4.『新島襄全集』の確認
第3・4巻(書簡編1・2)、第9巻上・下(来簡編)巻の宛名と差出人には、「工藤十郎」「湯地定基」なし。本文中では言及がある可能性があるが、本文については索引などがない。
第5巻(日記・紀行編)
索引なし。
第6巻(英文書簡編)
・Index「Y」の項目には「Yuchi」なし。
「K」に「Kudo Juro 工藤十郎(pseudonym of Yuchi Sadamoto 湯地定基),…」があり、p.44, 45, 49を確認するが、全て新島が留学中の手紙である。
p.44, 45は1868年11月14日メアリー・ヒドゥンあて(工藤十郎が「ごきげんよろしか」と訪ねた件と、工藤が新島に信仰について語った内容)
p.49は1869年3月17日ジョン・ガードナーあて
“Cudoo (One of Japanese in Monson) remarked me, when I saw him at last time, that we cannot exist without God.・・・”
・『アメリカ「知日派」の起源』で薩摩藩留学生との交流について書かれているとあった1867年8月26日を確認。「日記」とあるが日記は見当たらず。P.18-19の手紙“17 To Susan H. Hardy North Chatham August 26, 1867”に“I have communicated very often to Japanese who are in Monson Academy.・・・”とあり、注に“Several Satsuma students were studying there, ・・・”とある。
第7巻(英文資料編)
索引に工藤十郎・湯地定基なし。
第8巻(年譜編)
明治4年(1871年)10月1日・10月17日(p.78, 79)の項に、新島七五三太(襄)と旧鹿児島藩士の湯地治右衛門(定基)・野村市助について、蝦夷地開拓御用のため帰国するよう文部省より通知された件がある。その他の情報は見つからず。
5.その他新島襄についての書籍の確認
→2.の論文より新しい情報は得られなかった。
北垣宗治著『新島襄とアーモスト大学』(山口書店, 1993)
人名索引「湯地定基」より該当ページを確認。
p.214 1868年11月14日付けの手紙が引用されており、「工藤十郎は湯地定基の偽名である。この手紙は…湯地定基と新島との、異郷における若い日々の交流の一面を伝える。ただし吉原や湯地のようなもとの薩摩の留学生たちが、帰国後明治政府の下で、どれくらいキリスト教的な生き方をしたかは、今後の研究に待たねばならない。」とあるのみ。
p.236 1868年11月14日付けのホランド(新島のルームメイト)の手紙の解説として、工藤十郎=湯地定基について触れられているが、帰国後の交流などについては書かれていない。
井上勝也著『新島襄 人と思想』(晃洋書房, 1990)
人名索引「湯地定基」より該当ページを確認。
1868年11月14日付けの手紙について書かれているのみ。
そのほか記載のなかった資料
本井康博著『新島襄の交遊 : 維新の元勲・先覚者たち』(思文閣出版, 2005)
伊藤彌彦編『新島襄全集を読む』(晃洋書房, 2002)
太田雅夫著『新島襄とその周辺』(青山社, 2007)
6.同志社社史資料センターに参考調査依頼
→現在のところは留学中の交流しか見つからないとのこと。
- 事前調査事項
- NDC
-
- 個人伝記 (289 9版)
- 参考資料
-
-
新島襄全集編集委員会 編 , 新島, 襄, 1843-1890. 新島襄全集 6 (英文書簡編). 同朋舎出版, 1985.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001775008-00 , ISBN 4810404587 (NCID:BN00185411) -
吉原 重和 , 吉原 重和. 新島襄と吉原重俊(大原令之助)の交流. 2013-02. 新島研究 104 p. 3-31
http://iss.ndl.go.jp/books/R000000024-I005252276-00 -
本井康博 著 , 本井, 康博, 1942-. マイナーなればこそ. 思文閣出版, 2012. (新島襄を語る ; 9)
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I023468786-00 , ISBN 9784784216239 (NCID:BB08486053) -
新島襄全集編集委員会 編 , 新島, 襄, 1843-1890. 新島襄全集 10 (新島襄の生涯と手紙). 同朋舎出版, 1985.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001742521-00 , ISBN 4810404404 (NCID:BN00185411) -
塩崎智 著 , 塩崎, 智, 1961-. アメリカ「知日派」の起源 : 明治の留学生交流譚. 平凡社, 2001. (平凡社選書 ; 211)
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002970276-00 , ISBN 4582842119 (NCID:BA50804400) -
北垣宗治 著 , 北垣, 宗治, 1929-. 新島襄とアーモスト大学. 山口書店, 1993.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002332836-00 , ISBN 4841108505 (NCID:BN1129744X) -
井上勝也 著 , 井上, 勝也, 1936-. 新島襄 : 人と思想. 晃洋書房, 1990.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002031868-00 , ISBN 4771004641 (NCID:BN04331592) -
同志社社史史料編集所 [編] , 同志社社史史料編集所. 同志社百年史 通史編. 同志社, 1979.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001449979-00 (NCID:BN01577053) -
同志社, 同志社山脈編集委員会 編 , 同志社. 同志社山脈 : 113人のプロフィール. 晃洋書房, 2003.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000004063629-00 , ISBN 4771014086 (NCID:BA60107607) -
新島襄 [著] , 同志社 編 , 新島, 襄, 1843-1890 , 同志社. 新島襄の手紙. 岩波書店, 2005. (岩波文庫)
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000007992318-00 , ISBN 4003310616 (NCID:BA73777817) -
小川原 正道 , 小川原 正道. 初代日銀総裁・吉原重俊の思想形成と政策展開. 2014-09. 法学研究 87(9) p. 1-26
http://iss.ndl.go.jp/books/R000000004-I025851368-00 -
北垣 宗治 , 北垣 宗治. BOSTON PUBLIC LIBRARY 所蔵の日本人名簿(1871-1876). 1998. 英学史研究 (31) p. 111~132
http://iss.ndl.go.jp/books/R000000004-I4656606-00 -
新島襄全集編集委員会 編 , 新島, 襄, 1843-1890. 新島襄全集 3 (書簡編 1). 同朋舎出版, 1987.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001883948-00 , ISBN 4810405893 (NCID:BN00185411) -
新島襄全集編集委員会 編 , 新島, 襄, 1843-1890. 新島襄全集 4 (書簡編 2). 同朋舎出版, 1989.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002001155-00 , ISBN 4810407845 (NCID:BN00185411) -
新島襄全集編集委員会 編 , 新島, 襄, 1843-1890. 新島襄全集 9 (来簡編). 同朋舎出版, 1994.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002365284-00 , ISBN 4810412008 (NCID:BN00185411) -
新島襄全集編集委員会 編 , 新島, 襄, 1843-1890. 新島襄全集 5 (日記・紀行). 同朋舎出版, 1984.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001682040-00 , ISBN 4810404013 (NCID:BN00185411) -
新島襄全集編集委員会 編 , 新島, 襄, 1843-1890. 新島襄全集 7 (英文資料編). 同朋舎出版, 1996.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002544379-00 , ISBN 4810423565 (NCID:BN00185411) -
新島襄全集編集委員会 編 , 新島, 襄, 1843-1890. 新島襄全集 8 (年譜編). 同朋舎出版, 1992.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002203094-00 , ISBN 4810410862 (NCID:BN00185411) -
本井康博 著 , 本井, 康博, 1942-. 新島襄の交遊 : 維新の元勲・先覚者たち. 思文閣出版, 2005.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000007711791-00 , ISBN 4784212329 (NCID:BA71308382) -
伊藤彌彦 編 , 伊藤, 弥彦, 1941-. 新島襄全集を読む. 晃洋書房, 2002. (同志社大学人文科学研究所研究叢書 ; 35)
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000003635058-00 , ISBN 4771013187 (NCID:BA55934265) -
太田雅夫 著 , 太田, 雅夫, 1931-. 新島襄とその周辺. 青山社, 2007.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000008542610-00 , ISBN 9784921061074 (NCID:BA81229792)
-
新島襄全集編集委員会 編 , 新島, 襄, 1843-1890. 新島襄全集 6 (英文書簡編). 同朋舎出版, 1985.
- キーワード
-
- 湯地定基(治右衛門)
- 工藤十郎
- Zuro, Kudo
- 新島襄
- 同志社
- 照会先
-
- 同志社社史資料センター
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 同志社
- 質問者区分
- 学外者
- 登録番号
- 1000251335