レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2016年11月23日
- 登録日時
- 2017/09/24 11:55
- 更新日時
- 2020/04/10 15:19
- 管理番号
- 17-03
- 質問
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解決
「美女と野獣」の原書に忠実な英語版と邦訳が見たい。
- 回答
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・元が民話で、多くの版や翻案が存在するため、どれを原書とするかは利用者の方針による。(d) ~ (j) の資料を紹介した。
・一般に、「美女と野獣」 のもっともよく知られた版はボーモン夫人版とされる。ボーモン夫人版は、文字であらわされた最初の 「美女と野獣」 と言われる、ヴィルヌーヴ夫人版を元にしている。
- 回答プロセス
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1. 事典等で 「美女と野獣」 について確認
(a) 「美女と野獣」 『日本大百科全書』 (JapanKnowledge, http://japanknowledge.com)より抜粋
フランスの童話作家ボーモン夫人の童話集 『子供たちの雑誌』 Magazine des enfants (1757) 中の代表童話。 (中略) この話のテーマは作者の独創ではなく、古来ヨーロッパ各地に伝承されてきた 「魔法と呪い」 のテーマをもつ 『美女と怪物』 『ヘビにされた王子』 『小蛙 (こがえる) 姫』などの民話を洗練させたものである。 (後略)
(b) 「美女と野獣」 『オックスフォード世界児童文学百科』 (原書房 1999年)より抜粋
妖精物語の1つ。イギリスにはじめて紹介されたのは1757年で、ボーモン夫人がフランス語で書いた物語 (前年に出版された) の英訳であった。 (中略) ボーモン夫人の 『美女と野獣』 (La Belle et la Bête) がもとにしたのは、ガブリエル・スザンヌ・バルボ・ド・ガロン・ド・ヴィルヌーヴ夫人の長たらしい物語 (362頁) で、『海の物語』 (Contes marins, 1740) に収められていた。 (後略)
(c) ベッツィ・ハーン 『美女と野獣 : テクストとイメージの変遷』 (新曜社 1995年)
p.17~ によれば、 「美女と野獣」 のもっともよく知られた版は1756年のボーモン夫人版で、これは数年後に英語に翻訳された。ボーモン夫人版は、文字であらわされた最初の 「美女と野獣」 として知られるヴィルヌーヴ夫人版を元にしている。
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(a)~(c) の記述から、 「美女と野獣」 は、元は民話であることが判明。また、利用者がどの版を見たいか決まっていないとのことだったため、ボーモン夫人版、もしくはヴィルヌーヴ夫人版の英語訳・邦訳を探すことを念頭に置き、本学の蔵書を調査した。
2. 本学所蔵の 「美女と野獣」 を確認
〔邦訳〕
(d) エドマンド・デュラック絵 『美女と野獣』 (新書館 1981年)
p.88~ の解説によれば、この本はアーサー・クィラー・クーチが編訳し、エドマンド・デュラックが挿絵を描いた原著から、 「青ひげ」 と 「美女と野獣」 の2編を訳出したもの。ただし、クィラー・クーチ版の 「美女と野獣」 ではヴィルヌーヴ夫人版をとり入れていたが、この日本語版はボーモン夫人版の全訳となっている。
(e) 新倉朗子編訳 『フランス民話集 (岩波文庫 赤(32)-594-1) 』 (岩波書店 1993年)
p.10~13 に 「美女と野獣」 が掲載されている。凡例を見ると、「本書は各種のフランス民話集より選んで訳出したもの」 とある。p.310 の 「出典一覧」 を見ると、美女と野獣は次の民話集に掲載されたもの。
Delarue (Paul) et Tenèze (Marie-Louise) : Le conte populaire français. Catalogue raisonné des versions de France, tome 2. 1964.
(f) ジャック・ジップス著 ; 赤尾迪子訳 『 「美女と野獣」 ほかフランス傑作お伽噺集』 (近代文藝社 2010年)
p.22~ 「翻訳についての覚え書き」 には、レプラーンス・ド・ボーモント (ボーモン夫人) の 「美女と野獣」 を完訳したと書かれている。
この本の原書 Beauty and the beast : and other classic fairy tales (Signet Classic, 1989.) は当館で所蔵していないが、この本の元となった Zipes (ジップス) の著書 Beauties, Beasts and Enchantments : Classic French Fairy Tales (g) は所蔵があり、ボーモン夫人版の英訳を読むことができる。
〔英訳〕
(g) Jack Zipes, Beauties, Beasts and Enchantments : Classic French Fairy Tales, (Meridian Books, 1994).
ボーモン夫人版と、ヴィルヌーヴ夫人版の 「美女と野獣」 が収録されている。
p.13~ A note on the translation を見ると、ボーモン夫人版・ヴィルヌーヴ夫人版とも Zipes が訳したもの。ヴィルヌーヴ夫人版は、『妖精の小部屋、その他のおとぎ話』 (1786年) に再録されたフランス語のヴィルヌーヴ夫人版をテクストにしている。
なお、 Zipes の著書 Beauty and the beast : and other classic fairy tales (f) はこの Beasts and Enchantments を元に刊行したものだが、 ボーモン夫人版のみが収録されており、ヴィルヌーヴ夫人版は入っていない。
(h) The fairy tales of Charles Perrault, (Folio Society, 1998).
序文によれば、この本に収録された 「美女と野獣」 は、1912年にイギリスで刊行されたアーサー・クィラー・クーチの The Sleeping Beauty and Other Fairy Tales from the Old French を元にしている。ベッツィ・ハーン 『美女と野獣 : テクストとイメージの変遷』 (c) p.134 によると、クィラー・クーチ版の美女と野獣は、ヴィルヌーヴ夫人版を翻案したもの。
(i) Charles Lamb, Beauty and the beast ; Prince Dorus, (Thoemmes Press, 2003).
タイトルページの裏 (t.p. verso) を確認すると、この本に収録された「美女と野獣」は、 Charles Lamb の Beauty and the beast (1887) を元にしたもの。
『オックスフォード世界児童文学百科』 の 「美女と野獣」 の項 (b) と、ハーンの 『美女と野獣 : テクストとイメージの変遷』 (c) p.78 を参照すると、この版 (ラムが作者とされる) はいわゆるチャップブックで、二行連句の韻文体を取っており、物語のほとんどがベルと野獣との対話によって進められる。
(j) Andrew Lang, The blue fairy book (Folio Society, 2003).
アンドルー・ラングの監修により1889年に刊行された本の復刻版で、 Beauty and the beast を収録している。 Introduction や Preface には、原典について明記されていない。この本の日本語訳 『あおいろの童話集 (アンドルー・ラング世界童話集第1巻) 』 (東京創元社 2008年) に 「美女と野獣」 は収録されていないが、原書目次で Beauty and the beast の著者を確認するとヴィルヌーヴ夫人となっている。
ハーン 『美女と野獣 : テクストとイメージの変遷』 (c) p.108 によれば、このラング版はミニー・ライトという女性がヴィルヌーヴ夫人の物語を縮小したもの。
マリーナ・ウォーナー 『野獣から美女へ : おとぎ話と語り手の文化史』 (河出書房新社 2004年) では、ミニー・ライトがヴィルヌーヴ夫人とボーモン夫人による二種類のフランス語版のテクストを混合したものとする。
3. その他
ベッツィ・ハーン 『美女と野獣 : テクストとイメージの変遷』 (c) の参考文献の項 (p.434~) には、多くのテクストが示されている。また、註Ⅱ (45) によれば、同著ではボーモン夫人版の 「美女と野獣」 を引用する際、オーピー夫妻のテクストを使用している (Iona and Peter Opie, The Classic Fairy Tales, Oxford University Press, 1974、オーピー夫妻編著 『妖精物語』 神宮輝夫訳、草思社、1984年)。
- 事前調査事項
- NDC
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- 伝説.民話[昔話] (388 9版)
- 児童文学研究 (909 9版)
- 小説.物語 (953 9版)
- 参考資料
- キーワード
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- 美女と野獣
- Beauty and the beast
- La Belle et la Bête
- ボーモン夫人
- ヴィルヌーヴ夫人
- 民話
- 妖精物語
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介 書誌的事項調査
- 内容種別
- 質問者区分
- 学生
- 登録番号
- 1000222368