レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2023年03月05日
- 登録日時
- 2023/03/05 15:54
- 更新日時
- 2023/03/05 15:54
- 管理番号
- 2022-038
- 質問
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解決
旧約聖書に出てくる「ツァラート」はハンセン病のことを指すのか。
- 回答
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・蔵書検索システムにて「聖書」でタイトル検索
→スタンレー・G・ブラウン『聖書の中の「らい」』(キリスト教新聞社、1981年9月)
「医学的には、ツァーラハトに関して書かれていることのどれ一つとして、らいの特徴や症状にあてはまらないのです。あげられている特徴はらいにあてはまるどころかむしろ否定的なのです。更にらいの特殊な性質はどれ一つとして暗示されていません。」
→犀川一夫『聖書のらい その考古学・医学・神学的解明』(新教出版社、1994年9月)
「レビ記一三章を見ると、ツアーラハトは、人間の皮膚表面に現れる種々なる症状群、例えば斑紋、白癬、毛髪の白色変化、腫物、傷、潰瘍などを意味し、特定のある疾病の病名を称しているとは思えない。」
「ハンセン病の特徴的な症状は、末梢神経の症状、即ち、知覚麻痺や、運動神経麻痺症状、更にそれに起因する二次的症状なのである。その二次的症状とは、手指、足趾の屈曲、切断、短縮、更に顔面に見られる変容(眉毛脱落、鼻柱の陥凹、顔面神経麻痺、顔面膨脹)などで、これらの症状の記述がない限り、それをハンセン病と断定することは難しい。」
・J-STAGEにて「旧約聖書 ハンセン病」で検索
→隅田寛「旧約聖書にみる皮膚疾患とハンセン病」(『形態・機能 3巻1号』2004年)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/keitaikinou2002/3/1/3_1_21/_article/-char/ja
→山吉 智久「旧約聖書における疫病」(『宗教研究 95巻2号』2021年)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/rsjars/95/2/95_145/_article/-char/ja
「このツァーラアトの語は、ギリシア語訳の七十人訳ではレプラ(lépra)と訳され、伝統的に「らい病」 、すなわちハンセン病として長らく理解されてきた。しかしながら、旧約聖書時代のパレスチナにハンセン病が存在した証拠は見つかっていない。アレクサンドロス大王による東方遠征の結果、ヘレニズム時代になってはじめてオリエント世界に入り込んだものと考えられている。そもそも『レビ記』一三章に描かれる症状すべてに当てはまるような、ある一つの疾病を見出すことはできず、ツァーラアトをハンセン病と同一視するのは誤りである。」
とあり、近年ではハンセン病のことを指すのではなく、重い皮膚病の総称とする説が有力なようです。
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
-
- 聖書 (193 9版)
- 参考資料
- キーワード
-
- ハンセン病
- 聖書
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 質問者区分
- 登録番号
- 1000329870