レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2021年09月27日
- 登録日時
- 2021/09/28 00:30
- 更新日時
- 2024/03/13 00:30
- 管理番号
- 7221007597
- 質問
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解決
赤留比売命(あかるひめみこと)神社について知りたい。
- 回答
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「赤留比売命(あかるひめみこと)神社」は大阪市平野区平野東にある神社です。「三十歩(さんじゅうぶ)神社」とも呼ばれ、祭神の赤留比売は新羅国から渡来した女神です。かつては住吉大社の末社で荒和祓家(アワラヤ)の神事が行われていましたが、明治に廃止となり、現在は杭全神社の飛地境内末社となっています。
以下の資料に、この神社についての記述が見つかりました。
(1) 国立国会図書館デジタルコレクション『大阪史蹟辞典』(三善貞司 編 清文堂出版, 1986.7) (国立国会図書館/図書館・個人送信限定) <当館書誌ID:0000214926>
https://dl.ndl.go.jp/pid/12193120 (2024.2.19確認)
p.221-222(コマ番号114-115)「三十歩神社(さんじゅうぶじんじゃ)」の項に、社名について「応永年間(1394-1428)に覚証上人が祈雨のため法華経三十部を奉読して霊験があったので、三十部神社といったのが訛ったとか、祭神の赤留比売が住吉の姉神より、「三十町歩を分け与える」といわれたのを耳が遠いため三十部と聞き違えたとか伝える。(中略)社地が三十歩しかなかったのでこの名がでたとの説が妥当であろう」とあります。
祭神や例祭について、「祭神の赤留比売は、新羅国の天日矛(あめのひぼこ)の妻で、日矛の虐待に耐えかねて垂仁天皇の頃わが国に逃げてきて、追ってきた日矛を難波の渡りの神に防いでもらい、女神として定住したと、『古事記』や『日本書紀』にある有名な女性である。それで赤留比売神社ともいうが、住吉神社の祭神と姉妹であるのとの説が付会されて住吉の末社となり、例年六月の例祭には花笠姿の子供たちが乗馬して桔梗の造花を捧げる催しが名物だった。明治二十四年(1891)この行事は廃止、同三十年天神社、琴平社を合わせ、大正三年(1914)には杭全神社に合併されて飛地境内末社となっている。」とあります。
(2) 国立国会図書館デジタルコレクション『平野郷町誌』(平野郷公益会 編 平野郷公益会 昭和6) (インターネット公開) <清文堂出版復刻版 当館書誌ID:0000196608>
https://dl.ndl.go.jp/pid/1192188 (2024.2.19確認)
p.408-409(コマ番号281)「赤留比賣命神社」の項に詳しい記述があります。「往昔は流町の門外字中山に三百歩の境内を占めて奉祀したが、後世に現地に移し祀った」とあり、由来や社殿再興の逸話等のほか、神事について詳しく、「本社は住吉末社たる由緒で古来六月晦に坂上七名家の内から花笠の兒禰宜を出し、是を荒和祓家(アハラヤ)の神事と称して居った。當日兒禰宜は惣會所で身支度をした。身を清め結髪化粧し、床間の神影には神饌を供へ衆中と同じく之を拜し、桔梗の造花を奉幣として馬上にて神輿に供奉して神役に勤仕した。此神事は其費用多大であるから寛文年中凶作が打續いた時に中絶した。(中略)享保八年には舊の如く再興」し、その後も凶作で休役と再興を繰り返し、「此神事は明治三年六月限り廃止した。」とあります。
(3) 国立国会図書館デジタルコレクション『大阪府全志. 巻之3』(井上正雄 著 大阪府全志発行所 大正11) (インターネット公開) <清文堂復刻版 当館書誌ID:0000172308>
https://dl.ndl.go.jp/pid/965800 (2024.2.19確認)
p.191-192(コマ番号123-124)「赤留比賣命神社」の項に、由来や神事についての記述のほか、「古事記應神天皇の段に見ゆる比賣碁曾社は即ち當社ならん。」として、「延喜式に載せられたる今の東成郡鶴橋町大字東小橋に祀れる比賣許曾神社」とは違う説を載せています。
(4) 国立国会図書館デジタルコレクション『平野郷 : 大阪市編入五十周年誌』(平野振興会 1980.3) (国立国会図書館/図書館・個人送信限定) <当館書誌ID:0000244921>
https://dl.ndl.go.jp/pid/9574502 (2024.2.19確認)
p.192-193(コマ番号107)「赤留比売命神社」の項に、社名の由来から「耳が悪いと大変損をするから大切にせねばというので耳の神さまとして、耳の病気をすると平癒祈願にお詣りする人も大正中期まではあった」とあります。
(5) 『平野区誌』(平野区誌編集委員会/編 平野区誌刊行委員会 2005.5)
p.91-92コラム「中世平野の伝承世界」に、社名の由来があるほか、p.208「荒和祓家(あわらや)と七名家」に、「七名家が「荒和祓家」神役をつとめることについて、嘉永七年(1854)五月に記された「荒和祓家由緒書」は、平野郷に鎮座する三十歩神社(赤留比売命神社)に、その根拠を求めている。(中略)けれど「荒和祓家」神役の場合は、その名称が示すとおり、住吉大社の年間最大の行事である荒和大祓の象徴ともいうべききわめて重要な神事役であるから、ただ三十歩神社が末社であったということだけで、平野郷の七名家がこれをつとめた理由を説明するのは難しく、その始源についても残念ながら判然としない。」とあります。
(6) 国立国会図書館デジタルコレクション『摂津名所図会. 上巻』(秋里籬島 著 臨川書店 1974) (国立国会図書館/図書館・個人送信限定) <当館書誌ID:0080191209>
https://dl.ndl.go.jp/pid/9572921 (2024.2.19確認)
p.63(コマ番号52)の「三十歩神祠」の項に、「平野郷中野堂町にあり。延喜式に曰く、赤留比賣命神社。祭神玉依姫。例祭三月二十六日。夏日旱天の時、雨を祈るに霊驗速なり。神木に楡の大木あり。」とあります。
またp.124(コマ番号83)の平野の画中に、「三十歩社」が描かれています。
『摂津名所図会』は当館デジタルアーカイブでもご覧いただけます。
(7) 大阪市立図書館デジタルアーカイブ『摂津名所図会- 1 住吉郡』([秋里 籬嶌/著] 田村九兵衛 1796)
http://image.oml.city.osaka.lg.jp/archive/detail?cls=ancient&pkey=17880010 (2024.2.23確認)
42コマ目:管理番号143989に「三十歩神祠」、72コマ目:管理番号144019に「三十歩社」
(8)国会図書館デジタルコレクション『大阪府神社史資料』(大阪府 編 大阪府, 昭和8)(国立国会図書館/図書館・個人送信限定) <当館書誌ID:0080218670> https://dl.ndl.go.jp/pid/1688263 (2024.2.23確認)
江戸時代から大正時代までの郷土史から採録した赤留比売命神社の記述が年代順に掲載され、一覧できます。
p.696-697(コマ番号363)に『摂津名所図会大成』より「赤留比賣命神社」、p.699(コマ番号364)に『摂陽群談』より「三十歩社」、『難波丸綱目』より「三十歩大明神」、『摂津志之二』より「赤留比賣命神社」、『稿本『名葦探杖』』より「赤留比賣神社」、『摂津名所図会』より「三十歩神祠」、p.700-701(コマ番号365)に『大阪府誌』より「赤留比賣神社」、『大阪府全志』より「赤留比賣命神社」、『大阪府史蹟名勝天然記念物』より「赤留比賣神社」の記述があります。
(9) 国立国会図書館デジタルコレクション『東成郡誌』(大阪府東成郡 編 大阪府東成郡
大正11) (インターネット公開) <名著出版復刻版下巻 当館書誌ID:0070093613>
https://dl.ndl.go.jp/pid/978621 (2024.2.19確認)
p.1255(コマ番号676)「赤留比賣命神社」の項に、祭神や由来、寛文頃の社殿再興の逸話などが記述されています。
(10) 国立国会図書館デジタルコレクション『東住吉区史』(川端直正 編 東住吉区 1961) (国立国会図書館/図書館・個人送信限定) <当館書誌ID:0000301758>
https://dl.ndl.go.jp/pid/3026655 (2024.2.19確認)
p.452(コマ番号255)「赤留比売命神社」の項に、祭神や由来などが記述されています。
- 回答プロセス
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1.平野区の郷土関係資料を確認。資料(5)に記述がみつかる。資料(5)の記述から別名「三十歩(さんじゅうぶ)神社」が判明、また資料(6)に記載があることがわかる
2. 当館データベース「大阪関係資料目次検索」(外部非公開)にてキーワード”赤留比売命神社””三十歩神社”で検索、資料(2)、資料(3)、資料(9)、資料(10)が見つかる。
3. 大阪府立中之島図書館「おおさかポータル」( https://www.library.pref.osaka.jp/site/osakaportal/index.html )にて、キーワード“赤留比売命神社”“三十歩神社”で検索、ヒットせず。
4. プロセス1で見つかった資料(6)を大阪市立図書館デジタルアーカイブで確認(資料7)。
5.大阪の史蹟事典や平野区関連の他の郷土資料を確認。資料(1)資料(4)に記述がみつかる。
6. 「大阪春秋総目次・索引集」( http://osaka-web-museum.na.coocan.jp/index-top-shunjyu.htm ) にて、「地名/事項編」を確認。「赤留比売命神社」「三十歩神社」の項なし。
7.商用データベース「JapanKnowledge」にて、キーワード“赤留比売命神社”“三十歩神社” で検索、見つかった資料を確認するが新たな有用情報なし。
8.「国立国会図書館デジタルコレクション」にて、キーワード“赤留比売命神社”“三十歩神社”で検索、資料(8)が見つかる。
- 事前調査事項
- NDC
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- 日本 (291 9版)
- 神社.神職 (175 9版)
- 参考資料
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- 当館書誌ID <0000214926> 大阪史蹟辞典 三善 貞司/編 清文堂 1986.7 9784792423414 (資料1)
- 当館書誌ID <0000196608> 平野郷町誌 清文堂出版 1991 4-7924-0091-0 (資料2)
- 当館書誌ID <0000172308> 大阪府全志 巻之3 井上 正雄/著 清文堂 1985 9784792402723 (資料3)
- 当館書誌ID <0070093613> 東成郡誌 下巻 東成郡役所/編 名著出版 1972 (資料9)
- 当館書誌ID <0000244921> 平野郷 -大阪市編入五十周年誌- 平野振興会/[編] 平野振興会 1980 (資料4)
- 当館書誌ID <0000301758> 東住吉区史 川端 直正/編 東住吉区創設一五周年四カ村編入三周年記念事業委員会 1961 (資料10)
- 当館書誌ID <0011041212> 平野区誌 平野区誌編集委員会/編 平野区誌刊行委員会 2005.5 (資料5)
- 当館書誌ID <0080191209> 摂津名所図会 上巻 秋里 籬島/著 臨川書店 1974 (資料6)
- 当館書誌ID <0080218670> 大阪府神社史資料 大阪府/編 大阪府 1933.3 (資料8)
- 大阪市立図書館デジタルアーカイブ『摂津名所図会-1 住吉郡』 http://image.oml.city.osaka.lg.jp/archive/detail?cls=ancient&pkey=17880010 (資料7)(2024.2.23確認)
- キーワード
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- 大阪府大阪市平野区
- 赤留比売命神社
- 赤留比売神社
- 三十歩神社
- 三十歩神祠
- 三十歩社
- 三十歩大明神
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000305172