レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2024年02月16日
- 登録日時
- 2024/02/22 12:38
- 更新日時
- 2024/03/12 14:36
- 管理番号
- 島根郷2024-005
- 質問
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解決
「松江の七不思議」にあたるものは何か。小泉八雲が作品で書いていると聞いた。
※小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)は、1890年に来日、約1年松江で教鞭をとった。
- 回答
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当館所蔵資料と、調査結果をお伝えし、回答とした。
〇資料1: p.35-56「松江の七ふしぎ」には、次の伝説が掲載されている。出典は『日本の面影』だとある。
①源助柱
慶長期、初代松江藩主堀尾吉晴時代に、松江大橋普請の際、工事が難航したため、源助という男を人身御供にした。
そこに建てられた柱は、「源助柱」と呼ばれ、夜には鬼火が飛び交ったという。「源助柱」は三百年の間びくともしなかった。
②嫁が島
この島は、ある夜、美しく信心深いが、非常に不幸せな女性の水死体を乗せて、夢のように浮かび上がった。
土地の人々は、神様の思し召しだと、畏れ慎み、島を弁天様に寄進することにし、島に宮を建てた。
※嫁ヶ島は、宍道湖東岸、松江市嫁島町沖にある島。「出雲国風土記」の「蚊島」だと比定されている。
③お城山のきつね
松江藩松平家初代藩主、松平直政が初めて入城した際、ひとりの美少年が進み出て、自分は直政を守るために越前から来たこと、城内に住処を作ってくれるなら、城内・城下一帯・江戸上屋敷を火難から防いで差し上げることを申し出て、最後に稲荷新左衛門だと名乗って姿を消した。
そこで、直政は城内に稲荷社をたてて、石で作った狐で取り囲んだ。
※松平直政の父秀康は越前藩主であった。
④松江城の人柱
築城当時、ひとりの踊りが好きな少女が、人身御供となり、城壁の下に生き埋めにされたといわれる。
それ以来、女子が盆踊りをすると、城山が揺らぐので、松江では女子は盆踊りを踊ってはいけないという禁令がでたといわれている。
⑤小豆とぎ橋
松江東北部の普門院という寺の近くに、「小豆とぎ橋」と呼ばれる橋がある。
昔、女の幽霊が夜な夜な、この橋の下に座り、小豆をあらったという。
⑥子育てあめ
中原町の大雄寺の墓場に伝わる話。中原町の飴屋に、毎晩、白い着物を着た顔色の悪い女が水あめを買いに来る。
ある晩、飴屋が女のあとをつけると、女は大雄寺の墓場へ入っていくので、飴屋は恐ろしくなって飛んで帰った。
そのあくる晩、女はやってきて、自分と一緒に来てくれと言うので、飴屋が友人と一緒に女のあとについて、墓場へ行くと、ある石塔の前で女の姿がぱっと消え、地面の下から赤子の泣き声が聞こえてきた。
飴屋たちは驚いて、石塔を起こしてみると、墓の中には女の死骸があり、そばには生きている赤子がいた。
⑦子どもの幽霊
八雲が地蔵を祀る岩屋を訪れた時の見聞記。
この岩屋の中には、石を積んだ塔がいくつもあるが、これは子どもの亡霊が夜のうちに積んだものだという。
〇資料1の出典『日本の面影』の原題は“Glimpses of unfamiliar Japan”で、「知られぬ日本の面影」や「知られざる日本の面影」、「日本瞥見記」の邦題で出版されている。
ここでは、資料2を使用する。
・資料1の伝説は、内容から、①~⑥が「神々の国の首都」(p.194-234)、⑦は「潜戸」(p.282-306)から抜粋したものだと考えられる。
つまり、小泉八雲が上記の伝説を「松江の七不思議」と唱えたのではなく、資料1の訳もしくは編集段階で「七不思議」とされた可能性がある。
「神々の国の首都」は、八雲が松江の印象や見聞を綴った内容で、資料1の伝説にあたる部分は次の通り。
①源助柱:p.205-208
②嫁が島:p.208-209
③お城山のきつね:p.209-211
④松江城の人柱:p.221-224
⑤小豆とぎ橋:p.224-225
⑥子育てあめ:p.226
⑦子どもの幽霊:p.220-221,293-298
・p.224には「いまでも、ときどき、松江の辻々で、松江の七不思議を歌ったおもしろい唄を聞くことができる」とある。
しかし、歌の内容や、七不思議が何かは書かれていない。
「その時分、松江の町は七つの区域に分かれていた。その七つの区には、どの区にも、かならず何かしら変わったものや、変わった人間がいたのである」
とも書かれているので、「七不思議」は七つの区、それぞれから一つずつ集めたものだった可能性もある。
・さらに八雲は、松江の寺や三十三の町内それぞれにも、特異な怪談があるものと思われると述べ、こういった怪談の例として、⑤と⑥を挙げている。
・⑦は、p.220-221の文章から加賀浦の伝説。
資料3p.47によれば、加賀浦は明治22年に加賀村になり、昭和31年島根村に合併、昭和44年島根町に変遷し、平成17年松江市に合併した。
よって、当時は加賀村であった。
「神々の国の首都」では、八雲が行ってみたい場所として、出雲大社の次に挙げている。
実際に訪れた時の見聞記が、「潜戸」である。
〇資料2で触れられている、小泉八雲が聞いた唄について調査したが、該当と思われるものは見つけることができなかった。
各町の奇人をうたった唄が一種、資料4に紹介されている。
p.479-481「茶町女房じゃ大がかさん」
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
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- 伝説.民話[昔話] (388 8版)
- 参考資料
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【資料1】ラフカディオ・ハーン 著. 松江の七ふしぎ. 偕成社, 1977. (新・日本児童文学選 ; 21)
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000001-I30111100109652 (当館請求記号 子島根F3/コ66) -
【資料2】小泉八雲著 ; 平井呈一訳. 日本瞥見記 上 第2版. 恒文社, 1986.
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000136-I1130000794442395264 , ISBN 4770401892 (当館請求記号 郷貸出H938/ハ/1) -
【資料3】島根県の地名鑑 第10次改訂版. 島根県地域振興部市町村課, 2018.
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I028960660 (当館請求記号 郷貸出291.7/シ18) -
【資料4】荒木英信 編著. 新編松江八百八町町内物語. ハーベスト出版, 2012.
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I023597827 , ISBN 978-4-86456-023-8 (当館請求記号 郷貸出291.72/ア12)
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【資料1】ラフカディオ・ハーン 著. 松江の七ふしぎ. 偕成社, 1977. (新・日本児童文学選 ; 21)
- キーワード
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- 伝説--島根県--松江市
- 昔話--島根県--松江市
- 松江七不思議
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000346451