レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2023年6月9日
- 登録日時
- 2023/09/01 16:24
- 更新日時
- 2023/12/03 16:32
- 管理番号
- 島根郷2023-017
- 質問
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解決
テレビ番組で、島根県では盆に、お供えを山のように乗せたシャーラ船を、海に送り出す習俗があると知った。このシャーラ船の写真や由来について知りたい。
- 回答
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当館所蔵資料を紹介し、回答とした。
※資料1p.821には、「シャアラは隠岐や出雲の東部に残ることばで、ショウリョウのなまりである」とある。
また、資料2p.290「しゃーらぶね」でも「精霊を送る船」とあり、この方言を採取した分布は出雲地方(島根県東部)や隠岐地方となっている。
よって、「シャーラ船」は「精霊船」のことであり、市町村史などを見ると、島根県日本海沿岸地域に広く伝わる習俗である。
テレビ番組で取り上げられていたことから、ここでは、特に有名な隠岐郡西ノ島町の美田・浦郷地区のものについて調査・回答した。
【習俗について】
〇資料3p.405「シャーラ船流し」が詳しい。
西ノ島町でおこなわれる「シャーラ船流し」について、次のような説明がある。
・「シャーラ船とは精霊流しをする船のこと」
・西ノ島では8月16日におこなわれているが、西ノ島内でも、東部地区と美田、浦郷地区と方法が異なる
・「東部地区では各戸めいめい、供物をじかに海に流し、シャーラ船をつくるのは初盆の家だけである」
・「美田、浦郷(旧本郷)地区は集落で大型のシャーラ船を作って早朝に流す」
・三度、珍崎地区も集落でシャーラ船を作るが、これらの地区では船を担いで供物を集め、夕方にかけて海に流す。
また、美田、浦郷地区の同行事についても、次のような詳しい説明がある。
・船の規模は3~10メートル
・大型の船は明治中期につくられるようになったといわれている
・明治の中頃、村で疫病(赤痢)が発生、子どもが流れ着いた供物を食べたことが原因かも知れないとされ、船越万福寺の住職が、大きい精霊船をつくり供物を積んで、沖まで持って出て流すことを考案したといわれている
・大型の船は美田地区で始まり、浦郷(旧本郷)地区でもおこなわれるようになった
・シャーラ船作りは、8月に始まり、戦後は中学生が中心になっておこなわれている
・材料は、船の骨格部分が木と竹、外板は小麦藁、洋式の帆船タイプで、帆をかたどって張られる縄には、経文を書いた色紙幡(盆幡)を無数に付ける
・島の観光資源として紹介されるようになったが、近年は材料の藁が地元で調達できなくなったり、中学生が船作りに参加できなくなってきたなどの問題も生じている
〇資料4p.279-280によれば、島前知夫でも明治の終わりころから大型のものがはやり出し、部落共同で長さ1~2間の大きなものをつくるようになったとのこと。
【西ノ島町美田・浦郷地区のシャーラ船の写真が掲載されている資料】
・資料5:p.130-133 船側面、海へ運ばれる船(前後からの撮影) ※カラー写真
・資料6:標題紙から51、52ページ目 海へ運ばれる船(後方から撮影)、マスト部分のアップ ※カラー写真
・資料7:p.41 船の全体像 ※カラー写真
・資料8:p.154-155 船の全体像 ※カラー写真
・資料9:p.13 船の全体像 ※カラー写真
・資料10:p.126 船の全体像 ※モノクロ写真
- 回答プロセス
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「シャーラ船」は隠岐でおこなわれている行事だという認識であったが、資料1、2を見たところ、「シャーラ」が「精霊」の方言であるとわかった。
隠岐郡の民俗に関する資料を調べると、隠岐地方内でも地区によって、船の大きさや行事の内容に違いがあることがわかった。
ほかの日本海沿岸の各市町村史などを見ると、「盆に精霊船を海に流す」行事について書かれている地域が多くあった。
しかし、テレビで放映されていたということから、質問の「シャーラ船」は、集落で一つの大きな船を流す、西ノ島町浦郷・美田地区のものだと判断し、これらの地区について調査を進めた。
- 事前調査事項
- NDC
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- 年中行事.祭礼 (386 8版)
- 参考資料
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【資料1】島根県大百科事典編集委員会 企画・編集. 島根県大百科事典 上巻. 山陰中央新報社, 1982.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I023450481-00 (当館請求記号:郷貸出030/サ82/1) -
【資料2】広戸惇, 矢富熊一郎 編 , 広戸, 惇, 1911- , 矢富, 熊一郎, 1893-1981. 島根県方言辞典. 島根県方言学会, 1963.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001060424-00 (当館請求記号:貴重098/18 ※貸出禁止資料) -
【資料3】西ノ島町 (島根県). 隠岐西ノ島の今昔 : 町誌. 西ノ島町, 1995.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002468094-00 (当館請求記号:郷貸出217.31/ニ95) -
【資料4】島根県教育委員会 編 , 島根県教育委員会. 隠岐島の民俗 : 隠岐島民俗資料緊急調査報告. 島根県教育委員会, 1973.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I069348459-00 (当館請求記号:093.8A/86 ※貸出禁止資料) -
【資料5】川本貢功 著 , 川本, 貢功, 1933-. 隠岐 : 川本貢功写真集. 山陰中央新報社, 2010.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000010962489-00 , ISBN 9784879031464 (当館請求記号:郷貸出748/カ10) -
【資料6】丹野志摩 著 , 丹野, 志摩, 1972-. 隠岐の島西ノ島 = A camera a car an island Nishinoshima-Oki Islands. 芸術新舎, 2018.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I029034711-00 , ISBN 9784907004019 (当館請求記号:郷貸出748/タ18) -
【資料7】並河萬里 [撮影] , 並河, 万里, 1931-2006. 神々の座出雲 : 写真集. 島根県文化振興財団, 2009.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000010155224-00 (当館請求記号:097.4/109 ※貸出禁止資料) -
【資料8】西ノ島町 編 , 西ノ島町. 運河のある町 : 隠岐西ノ島のアルバム. 西ノ島町, 1978.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I069375666-00 (当館請求記号:郷貸出291.71/ニ78) - 【資料9】シマネスク : 島根PR情報誌 No.100. 島根県公聴広報課, 2016. (当館請求記号:SZ29/01 ※貸出禁止資料)
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【資料10】速水保孝 著 , 速水保孝. 隠岐 : -隠岐国新風土記-. 山陰郷土文化研究所, 1981.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I069485434-00 (当館請求記号:郷貸出291.7/83)
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【資料1】島根県大百科事典編集委員会 企画・編集. 島根県大百科事典 上巻. 山陰中央新報社, 1982.
- キーワード
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- 精霊流し--島根県--隠岐郡西ノ島町
- シャーラ船
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000338090