レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2021年12月03日
- 登録日時
- 2021/12/03 12:11
- 更新日時
- 2021/12/23 15:54
- 管理番号
- 2021203-1
- 質問
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解決
中国書には、出版年月がかかれているが、日が書かれていない。なぜか。
- 回答
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以下の資料がみつかった。中国書には、出版「日」を記述する習慣・規制がなかったと考えられる。
〇清代までの中国
清代までの中国の出版物は「刊記」の伝統に従って出版されており、出版年月が記載されてきた。
図書の歴史と中国 / 劉国釣著 ; 松見弘道訳 増訂2版. - 東京 : 理想社 , 1980
本館請求記号:020.22 - R98
p.118 第四章 紀元九世紀から十二世紀 第五節彫版印刷術発明後の造本様式
「書名葉の裏面には、ときには刊記か牌記があって、刊行年月、刊行地、刊行人を記載している。」
目次は、以下参照できる。(国立国会図書館サーチ)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000039-I001309457-00 (2021/12/13 確認)
※第六章以降に中華民国以降の出版について書かれているが、刊記に関する記述は確認できなかった。
〇中華民国以降現代まで
小島 浩之「現代中国書の書誌的特徴」大学図書館研究 64(0), 1-9, 2002
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcul/64/0/64_1080/_pdf/-char/ja (2021/12/13 確認)
p.3
「中国では版本記録のあるぺ一ジを版権頁,または版本記録頁と言う。『中国文献編目規則』では版権頁を,『図書の中で著作権説明,タイトル,責任表示,出版者,発行者,印刷者,出版年月,版表示,刷次,印刷部数,定価などの情報を記載したぺ一ジ。普通は標題紙裏,もしくは図書の最終ぺ一ジ(つまり裏表紙直前のぺ一ジ)』13〕だと説明している。」
中国書物物語 / 劉国鈞,鄭如斯著 ; 松見弘道訳 東京 : 創林社 , 1983.7
本館請求記号:020.22 - R98
p.193-197 Ⅳ 近代と現代の書籍制度
「近頃出版された中国の図書には、標題紙の裏面に出版地をはじめ、出版者、出版年月、印刷年月、開本、つまり判型、印刷部数、それから家格などのような、出版に関する詳細な状況を記載しているむきもみられる」
<中国書の現物表記>
本館所蔵の中国書を複数冊確認したところ、
〇年〇月第〇版 〇年〇月印刷
などと記載されていた。
<日本の場合>
明治期に公布された「出版条例」「出版法」(いずれも現在は廃止法令)に基づき、出版(発行)年月日の記載が義務付けられ、廃止後も慣例化した。
そのため、明治期以降の日本の出版物には、年月日が記載されていることが一般化している。
<確認済>
日本古典籍書誌学辞典 / 井上宗雄 [ほか] 編著 東京 : 岩波書店 , 1999.3
本館請求記号:020.33 - N71
日本書誌学用語辞典 / 川瀬一馬著 東京 : 雄松堂書店 , 1990.11
本館請求記号:020.34 - N77
中国の図書情報文化史 : 書物の話 / 工藤一郎著 東京 : 柘植書房新社 , 2007.3
本館請求記号:020.22 - Ku17
中国図書文献史攷 / 工藤一郎著 東京 : 明治書院 , 2006.10
本館請求記号:020.22 - Ku17
中国目録学史 / 姚名達著 長沙 : 商務印書館 , 1938.5. - (中國文化史叢書 ; 第2輯)
本館請求記号:020.22 - Y72
※台湾で出版された図書。奥付に「中華民国六十年一月臺四版」とあった。
- 回答プロセス
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<コトバンクの解説>
奥付(読み)おくづけ
日本大百科全書(ニッポニカ)「奥付」の解説
「刊本の末尾に、著作者、編者、訳者、発行者、印刷者の氏名、発行所、印刷所、印刷・発行年月日、刷数、版数、定価などを記したページ、またはその部分をいう。歴史的には刊記に由来するといわれる(以下略)」
図書館情報学用語辞典 第5版「奥付」の解説
「図書や雑誌の末尾に著作者や出版者の氏名と住所,発行年月日,版次と刷次,著作権表示などを記載したページまたはその部分.日本独特のもので1722年12月(享保7年11月)江戸町奉行大岡忠相が出した「新作書籍出板の儀に付触書」中の1条“何書物によらず,これ以後,新板の物,作者ならびに板元の実名,奥書に致させ申すべく候事”に由来する.(以下略)」
https://kotobank.jp/word/%E5%A5%A5%E4%BB%98-451769 (2021/12/13 確認)
刊記とは -
図書館情報学用語辞典 第5版「刊記」の解説
「刊本の出版年月,出版地,出版者名などを示した表記で,和漢書の場合多くは巻末にある」
百科事典マイペディア「刊記」の解説
「日本では江戸末期までの,中国では清朝末までの版本で,出版の場所,年次,出版者名,その他出版関連事項を記した部分をいう。」
https://kotobank.jp/word/%E5%88%8A%E8%A8%98-469418 (2021/12/13 確認)
<国文学研究資料館 研修資料>
【講 義】近代文献について① 「奥付の読み方」谷川惠一(国文学研究資料館)
https://www.nijl.ac.jp/pages/event/seminar/images/H26-kotenseki06.pdf (2021/12/13 確認)
日本の奥付の特徴について
※中国及び朝鮮の書物にならって早くから、「刊行年月、刊行者、板木の彫工者などの記録、いわゆる『刊記』を巻末か時には巻首に記すことが行われ」ていた。
※「法令で巻末に刊記を付記することが義務づけれたのは享保七(1722)年の南町奉行の町触れにおいてであるという」
<まとめ>
清代以前、清代後の中国においても、刊記の伝統に基づき、出版年月が記載されていた。
現代中国の出版物における版権頁の記載も「年月」で、「日」を記述する習慣・規制がなかったと考えられる。
- 事前調査事項
- NDC
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- 図書館.図書館情報学 (010)
- 参考資料
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日本の図書に発行した年月日が記載されるようになったのはいつか。(近畿大学中央図書館)
https://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=ref_view&id=1000308556 (2021/12/13 確認)
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日本の図書に発行した年月日が記載されるようになったのはいつか。(近畿大学中央図書館)
- キーワード
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- 中国書
- 刊記
- 奥付
- 版権頁
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介 事実調査
- 内容種別
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000308536