レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2020年09月24日
- 登録日時
- 2021/03/07 14:03
- 更新日時
- 2021/03/18 17:47
- 管理番号
- 県立長野-20-105
- 質問
-
解決
長野県人の手先の器用さについての、まとまった論考、調査、研究があれば知りたい。
- 回答
-
長野県人の手先の器用さに論及したものは、確認できなかった。
『不思議の国の信州人』 丸山一昭ほか著 KKベストセラーズ 1994 【N302/7】p.132-134 に
「『現代ふるさと情報』にも、「かつての蚕糸にしろ、時計、カメラにしろ、長野県産業は技術を基礎にしながらも最終的には人間の手先に頼るタイプの産業が主流を占めてきた」とあるが、まさしくそのとおりで、その「最終」部分が、信州人の気質と合致しているのだ。
ハイテク産業とか精密機械工業というのは、最終的には「9の世界」である。「9の世界」というのは、いかにして100パーセントに近づけるか、つまり99.999999・・・の精度を求められるということだ。この「9」の数が多ければ多いほど、100パーセント=完璧に近くなる。言い換えれば精密度が高いわけである。
これは、理論的にはかならず到達できるわけで、その意味で、理屈っぽいとされる信州人には取り組みやすい仕事ということになる。しかもプライドが高いときているから、何がなんでもやり切ろうという意志も強い。
長野県の工業出荷額は6兆6901億円だが、このうち39パーセントが電気機械で占められており、精密機械、一般機械、輸送用機械まで加えると67パーセントになる。(1991年・通産省「工業統計表」による)精密機械ならずとも、機械に関連した産業は、最終的にはいかに精度の高いものをつくることができるかということが求められる。もともと日本人は手先が器用だといわれるが、その中でも信州人はとくに優秀であることが、こうしたことからもよくわかる。」
とあった。この文章の最初に引用されている『現代ふるさと情報』岩波書店編・刊 1987 【291/232】の長野県部分を確認したところ、精密機器産業が盛んなことには触れられていたが、手先が器用か否かについての記述は確認できなかった。
『信州幸せルール』 大沢玲子著 KADOKAWA 2015 【N049/140】p.96-99の「東洋のスイス・諏訪」の中で、精密機器を手掛ける工場が集まった理由を挙げている。
「一つには、明治・大正期に、日本経済をけん引した養蚕、製糸工業が栄えたこと。二つ目には“東洋のスイス”という異名をとるように、高地にあってクリーンな空気、乾燥した気候条件が精密工業に適していること。3つ目は、手先が器用で忍耐強い県民性が時計製造をはじめとする細かい作業を支えたこと。4つ目にはセイコーエプソン(諏訪精工舎)をはじめとし、戦争により東京から疎開してきた企業、工場が多かったことも挙げられる」。
『九つの信州人 風土から生まれた信州人気質』 宮坂正治著 銀河書房 1987 【N361/22】諏訪地域の人々の気質に触れた中のp.44-49「夢を見てよく働く」に
「諏訪盆地に戦前なぜ製糸業が発展したか。確かに地理学者、郷土史家がいうように、製糸業の自然立地条件や社会経済条件が良かったためであろう。しかし、一番立地条件が良いと考えられるのは、野麦峠を越えて飛騨から来た多くの女工さんが、諏訪出身の女工さんたちからおそわって、この諏訪で厳しい寒さと貧しさに耐えられたからである。彼女たちがみんな優秀であったればこそ、製糸業が成長し栄えたのである。
女性が、忍耐強く、手先が器用でコツコツと一心不乱に働く伝統は一心不乱に働く伝統は、現在の精密工業の女子行員にも伝わり残されている。」
とある。
柳平千彦著「諏訪地方における製糸業の変遷と精密工業の発展」『信濃 第3次』 第15巻2号 p.45-52および、 柳平千彦著「長野県諏訪市における精密工業の発達と展開」『信濃 第3次』 第31巻7号 p.1-13 に、発達した要因がいくつも挙げられていたが、手先が器用か否かについてはあげられていなかった。この地域の住民の教育程度が高く、根気強く一つのことに集中すること、とあげられていることは、上記の書籍の内容とも近いかと思われる。
- 回答プロセス
-
1 問い合わせの元となった資料は当館では所蔵していなかったが、webを検索すると大阪経済大学の中小企業経営研究所が『中小企業季報』【最終確認2021.3.10】を公開していた。しかし、当該論文は非公開となっており、内容を確認することはできなかった。
2 郷土分類N049(長野県の雑学)やN302(県民性)などの書架を調べる。
3 諏訪地域が製糸業から精密工業へと移行して成功している点がポイントになっていると思われたので、郷土史研究の雑誌について、記事検索をする。「精密」「工業」で検索する。何点かヒットしたので、内容を確認する。
<調査資料>
・『日本人の性格 県民性と歴史的人物』 宮城音弥著 朝日新聞社 1969 【N302/180】
・『現代の県民気質』 NHK放送文化研究所編 日本放送協会 1997 【N361.47/ニツ】
・『はみだす 1992 現代信州の基礎知識』 県民Cチーム著 銀河書房 1992 【N049/94a】
・『あんたが大将信州人。』 銀河書房編・刊 1991 【N049/99】
- 事前調査事項
-
服部正次(服部時計店社長)の社員向け挨拶の引用の中に「信州人の器用な手先」という言葉があった。(『中小企業季報』2016年10月「諏訪地域の産業の今日的課題に関する一考察」)
- NDC
-
- 政治.経済.社会.文化事情 (302 10版)
- 雑著 (049 10版)
- 社会学 (361 10版)
- 参考資料
-
-
丸山一昭, 岩中祥史著 , 丸山, 一昭 , 岩中, 祥史. 不思議の国の信州人 : 今日も何処かで「信濃の国」が…. ベストセラーズ, 1994. (ベストセラーシリーズ「ワニの本」, 919)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000096-I008463385-00 , ISBN 4584009198 (【N302/7】p.132-134) -
岩波書店編集部 編 , 岩波書店. 岩波現代ふるさと情報 : 47都道府県の現状と将来. 岩波書店, 1987.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001848359-00 , ISBN 400009825X (【291/232】) -
大沢玲子 著 , 大沢, 玲子. 信州幸せルール = Shinshu's Happy Rules. KADOKAWA, 2015.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I026797209-00 , ISBN 9784046008787 (【N049/140】p.96-99) -
宮坂 正治/著 , 宮坂 正治 , 宮坂 正治. 九つの信州人 : 風土から生まれた信州人気質. 銀河書房, 1987-07.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I059051990-00 (【N361/22】p.44-49)
-
丸山一昭, 岩中祥史著 , 丸山, 一昭 , 岩中, 祥史. 不思議の国の信州人 : 今日も何処かで「信濃の国」が…. ベストセラーズ, 1994. (ベストセラーシリーズ「ワニの本」, 919)
- キーワード
-
- 精密工業
- 信州人
- 県民性
- 諏訪
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000294809