レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2023年01月20日
- 登録日時
- 2023/03/01 13:39
- 更新日時
- 2023/03/09 21:20
- 管理番号
- 県立長野-22-204
- 質問
-
解決
画家・河野通勢(こうの みちせい)の父である河野次郎について知りたい。明治9年前後に描かれたスケッチ「明善館にて」は、長野県で描かれたものか。
- 回答
-
信濃美術館で開かれた展覧会の小冊子に、『河野通勢 その父と子と』 長野県信濃美術館編・刊 1978 【N723/59】に、孫にあたる画家・河野通明が「三代展について」という文章を寄せている。ここに、次郎の略歴がある。また、巻末河野家3代の略年譜も掲載されている。
河野次郎は、安政3年(1856年)足利戸田藩士杉本奥太郎の子として江戸で生まれる。足利で田崎早雲に南画を学び、明治7年(1874年)上京し洋画家高橋由一に学んでいる。明治9年(1876年)足利県下等小学校の教師となる。河野権平の養子になる。明治11年(1878年)愛知県師範学校絵画教師となり愛知県洋画用教科書を作成する、とあるが、年表では、愛知県に赴任するまでの間、長野県を訪れた記述はない。
明治15年(1882年)長野県松本師範学校に移り、洋画用教科書をリトグラフで作製する、とあり、明治19年には長野師範学校へ移っている。明治28年(1895年)に長野師範学校を退職し、長野市内で写真館を開業している。
『河野通勢 大正の鬼才』 河野通勢[画] 美術館連絡協議会 2008 【N723/218】p.181にも、「河野次郎年譜」があり、上記よりも詳しい。この「1876(明治9)年」に
「足利県下等小学校の教師となる。5月に河野権平家へ入籍する。
10月30日「明善館にて」とする号「華江」書き込みの作品あり。
愛知県第一師範学校および愛知県第一中学校を兼務して雅楽教員となる。
『古今中京画壇』によるとこの頃の号を「中華」としているが、実際の作品には「華江」の号が
使用されており「中華」は実見できなかった。
また、水彩画、油彩画にはQ.KOUNOのサインがある。」
の記述があった。
明善館は栃木県にある可能性が高いと思われる。
また、河野次郎が教員時代に口述した「鉛筆画及毛筆画に就テ」が雑誌『信濃教育』第33号(1889)p.11-15、『信濃教育』第34号(1889)p.14-19に掲載されている。
『河野次郎と明治・大正の画人ネットワーク』 木村理恵子編 足利市立美術館ほか 2014 が展覧会カタログとしてあるので、所蔵館を紹介した。(現在は【N723/378】で所蔵。)
- 回答プロセス
-
1 河野7次郎について、『長野県歴史人物大事典』で調べる。1882年に長野県松本市に赴任してきたことがわかる。その他、美術事典類を調べる。
2 問い合わせは明治9年の作品であることから、河野次郎の作品、年譜から調べることとする。子どもの通勢も画家であるため、所蔵する郷土資料を「河野」で検索する。ヒットした資料を確認する。
3 問い合わせの「明善館」のスケッチについては、『河野通勢 大正の鬼才』の「河野次郎年譜」に、「1876(明治9)年」の作品と確認できた。その当時は、栃木県で教員をしていたことがわかった。
4 長野県に旅行した際の作品とも限らないため、「明善館」という建物もしくは会館を調べることとする。効率的な検索方法がないため、調査の精度は低くなるが、当館契約の「信濃毎日新聞データベース」を「明善館」で検索するが、ヒットしたものはない。また、信州ナレッジスクエアのコンテンツの一つで、県内外のデータベースやアーカイブの中から「信州」に関することがらを探し出すことができる「信州サーチ」で、「明善館」を検索したが、該当はなかった。
「河野次郎」でヒットした記事は次のとおり。
・平成27年(2015年)1月9日 朝刊13面
「いざない=知られざる先駆者・河野次郎 明治の信州で図画教育 後進育て、自身の制作も深め」
・平成元年(1989年)4月26日 朝刊23面
「不折の世界・伊那の作品展から(1)=河野次郎に学んだ水墨画」
(数行ですが、次郎について触れている。)
他に通勢の展覧会の小さな案内記事に名前があったものが4件あった。
・平成21年(2009年)1月13日 朝刊9面
「展覧会・県内では=長野が生んだ鬼才・河野通勢展 ほか」
・平成20年(2008年)12月9日 朝刊15面
「展覧会・県内では=北信美術会写生会作品展 ほか」
・平成20年(2008年)11月11日 朝刊17面
「展覧会・県内では=大自然を謳う―写団F第13回写真展 ほか」
・平成11年(1999年)1月7日 朝刊14面
「カンバス信州=河野通勢展 目を引く「佐久間象山像」(伊藤正大)」
<調査資料>
・『長野県美術大事典』 小崎軍司編著 郷土出版社 1986 【N703/2】 p.281
・『信州美術年鑑 2002』 長野県美術商協同組合監修 新葉社 2002 【N703/2】 p.189
・『長野県歴史人物大事典』 神津良子編 郷土出版社 1989 【N283/13】 p.274-275
・『信州美術家群像』 矢島太郎著 新信州社 1972 【N702/4】
- 事前調査事項
- NDC
-
- 洋画 (723 10版)
- 参考資料
-
-
河野, 通勢, 1895-1950. 河野通勢 : その父と子と. 長野県信濃美術館, 1978.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002217014-00 (【N723/59】) -
河野 通勢/[画] , 河野‖通勢. 河野通勢 : 大正の鬼才. 美術館連絡協議会, 2008.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I040705629-00 (【N723/218】p.181) -
河野/次郎‖[ほか画] , 河野/次郎‖[ほか画]. 河野次郎と明治・大正の画人ネットワーク. 栃木県立美術館, 2014.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I061852331-00 (【N723/378】)
-
河野, 通勢, 1895-1950. 河野通勢 : その父と子と. 長野県信濃美術館, 1978.
- キーワード
-
- 河野次郎
- 河野通勢
- 明善館
- 信州学
- 洋画
- 長野師範学校
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 郷土 人物
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000329485