レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2023年10月12日
- 登録日時
- 2023/10/15 12:20
- 更新日時
- 2023/10/24 20:29
- 管理番号
- 県立長野-23-107
- 質問
-
解決
木曽川で行われていた大川狩りがいつ廃止になったか知りたい。大井発電所ができたことにより廃止になったと思う。
- 回答
-
大川狩りの廃止について記載のある資料を紹介した。資料によって廃止年や廃止経緯の表現に違いがある。
(サイト最終確認日:2023年10月12日)
※大川狩りの行程は「木曽川本流から錦織綱場(現在、岐阜県八百津町)までの運材行程」とのことから、
錦織綱場の廃止についても調査した。(中部森林管理局サイトの木曽式伐木運材法のページより)
※大井発電所の竣工は、『関西電力五十年史』関西電力五十年史編纂事務局編纂 関西電力 2002
【540.9/46】年表p.1175に、大正13年(1924)12月とあり。
『木曽川物語』矢頭純著 郷土出版社 1987【N234/79】p.81 森林の変遷
「川下しを中止させる、文明の所産が現れてきた。水力発電所の建設である。
福沢諭吉の養子、福沢桃介が経営する大同電力(関西電力の前身)が、木曽川の水利権を得て、
大正八年に賤母(山口村)に発電所を完成させ、ついで大正末までに大桑(大桑村)、須原(同)、
桃山(上松町)、読書(南木曽町)などで建設を進めた。川から取り入れた水を導水管で山の中を
通す水路式。これで木曽川の流量は大幅に減って、川流しはできなくなった。(後略)」
『木曽福島町史 第2巻』木曽福島町教育委員会編 木曽福島町 1982【N234/76/2】
第2章政治 第7節森林鉄道問題と大同電力問題 p.594(311コマ)
「明治四十四年中央線が全通すると、帝室林野管理局木曽支庁は、今まで行ってきた、木曽川を流送
する木材搬出法を、中央線を利用する貨車輸送に切替えることにした。(中略)
そこでまず、木曾川本流を利用する大川狩りを鉄道による陸送に切替え、つづいて、小谷狩りに替
えて森林鉄道を中央線に連絡し、逐次流送を陸送へ転換していくといった、木材輸送の近代化をは
かることになったものである。(後略)」
『木曽の上松 わが郷土の文化と歴史』「木曽の上松」編集委員会 1984
p.148(80コマ)
「(前略)大正初期以降の“森林鉄道時代”をむかえて本格的な林鉄が敷設されたところでは、小谷
狩りが林鉄で、大川狩は国鉄へと輸送近代化の形態が確立した。しかし、大量輸送ができない軽便
軌道の線区や、軽便も敷かれていない森林もあり、小谷狩り、大川狩りも依然として続けられてい
た。大正七年、大川狩りに最後がおとずれた。名古屋電灯(中部電力の前身)が木曽川本流にダム
をつくることになったからである。
帝室林野局では、これを機会に一才の川狩りをやめ全面的な森林鉄道への切り替えを計画した。
(後略)」
『図説日本文化地理体系』10巻浅香幸雄ほか編小学館1960【291.08/18/10】
木曽川筋 大川狩りから発電へ p.81-82(45コマ)
「木曽谷の木材は、以前は川を利用して、秋から翌春にかけて、加茂郡八百津町錦織まで川狩りされ
た。(中略)錦織は綱場で、川狩りされた木材は、ここで綱を張ってとめ、いかだに組んで熱田の
白鳥湊に回漕された。
木曽川によるこのような運材は、中央本線の開通に伴い、明治の後期からしだいに萎えた。一九二
一年(大正十)大井ダムが建設されるようになって、木材の川下しは全くすたれ、一六六五年(寛
文五)以来続いた錦織の綱場は廃止された。」
『南木曽町誌通史編』南木曽町誌編さん委員会編・刊1982【N234/74/1】
第八章南木曽の歩んだ道 第二節変ぼうする南木曾 三御料林と村人たち P.647
「(前略)その後、こうした小谷狩や大川狩は、流送期間が限られていることや大洪水による流材の
損害等、時代に適応できない深刻な問題が起きてきた。一方、交通機関の発達に伴い、明治四十年
代に中央西線の開通を見るに及んで、鉄道輸送への切り替えが可能となった。折しも欧州大戦が勃
発し、工業が急速に発展すると、電力の需要がにわかに高まり、木曽川での水力発電所の建設が企
図されるにいたった。大同電力の前身である名古屋電燈株式会社は、すでに明治四十年に、読書・
大桑・駒ヶ根の水利権を得ていたが、これには木材流送を保護するため、使用水量に制限が付され
ていた。しかし、名古屋電燈は、大正六年三月、上記地点の下流賤母の水利権を得、木曽川流域の
発電所建設の工事にとりかかるにあたり、使用水量を増加させるため、木曽材流送を廃止し、代り
に森林鉄道を敷設することを意図し、当局の許可を得ることに成功した。こうして大正十五年一月、
木曽川上流の御料林伐出材は、すべて鉄道輸送となり、この年度からついに錦織綱場が廃止され
た。」
『帝室林野局五十年史』帝室林野局編・刊 1939【651/24】
に、錦織綱場(大正3年に錦織出張所に改称)についての記述があった。
第一章帝室林野局の沿革 第三節管理経営機構 p.193-194(127-128コマ)
「(四)綱場 水路を利用する運材作業に於て必要な綱場の中、大規模のものは名古屋支局の錦織綱
場であった。
(中略)
大正三年八月十五日出張所改定の際同綱場を錦織出張所と改称した。」
第一章帝室林野局の沿革 第三節管理経営機構 p.149(105コマ)
「(五〇)名古屋市局錦織出張所の廃止 大正十年六月六日名古屋市局錦織出張所を廃止した。同出
張所は木曽材川狩の綱場として設置したが森林鉄道の設備が中央線と連絡し運材は大部分鉄道運輸
となり存置の必要がなくなったのである。」
第二章御料地の沿革 第三節第二類御料地 p.313-314(187-188コマ)
「(二七)錦織綱場及び白鳥、桑名両貯木場の沿革 (中略)
錦織綱場は明治二十三年世傳御料に編入せられ、二十七年更に綱場附属用地として四十四町二反二
畝余(大正九年実測二十二町二反四畝余)の民有地を交換編入したが、其の後交通運輸機関の発達
と共に次第に用途を減じ、大正十年世傳御料を解除せられ、昭和六年不要存地に決定し同年略處分
済となった。」
同資料の帝室林野局五十年史附録年表に、錦織綱場の廃止について記述あり。
p.34 大正10年6月
「名古屋支局錦織出張所を廃止す。」
p.40 大正15年1月
「木曾川上流御料林伐出材は総べて鉄道輸送となりたるを以て本年度より錦織綱場を廃す。」
『南木曽町桃介橋河川公園・大川狩り碑文について』ぼんでん倶楽部他編 ぼんでん倶楽部 1999
【N234/116】に、『錦織綱場 : 木曽川筏流送の歴史』各務賢司編 八百津町教育委員会 1979の紹介があ
るが、当館未所蔵のため確認できなかった。
大川狩りとは
『長野県百科事典』信濃毎日新聞社開発局出版部/編信濃毎日新聞社1981【N030/2】p.102
「木材を原木のまま1本ずつ流送する方法をいい,「管流し」ともいう。流水量が多い木曽川本流や
小渋川,遠山川などで行われ,さらに流量が多くなるといかだに組まれて輸送された。大川狩りは
集中豪雨など異常出水による流失を少なくするため,冬季を中心に営まれた。浮力をつけるために
伐採後1カ年間へた木材を運送したが,河底に沈むもの,また採暖のために4割程度は消耗した。鉄
道,森林鉄道,トラック輸送の発達とともに,その運材法は消滅したが,交通不便な秋山郷では第
二次大戦後まで行われていた。」
- 回答プロセス
-
1 『長野県百科事典』で大川狩りについて概要を確認する。
2 大井発電所の竣工時期を確認する。
3 町村市史を調べる。
4 当館蔵書検索でキーワード「大川狩り」で検索、1件ヒット。
『南木曽町桃介橋河川公園・大川狩り碑文について』ぼんでん倶楽部他編 ぼんでん倶楽部 1999
【N234/116】
5 国立国会図書館デジタルコレクションでキーワード「大川狩り」「錦織湊」「錦織綱場」
で全文検索する。
調査資料
『長野県百科事典』信濃毎日新聞社開発局出版部編 信濃毎日新聞社1981【N030/2】
『図説・木曽の歴史』生駒勘七著 郷土出版社 1982【N234/73/1】
『木曽式伐木運材図会』長野営林局作業課編 長野営林局互助会 1954【N657/2】
『岐阜県史通史編近代下』岐阜県編・刊 1972【215.3/ギフ/1-5-3】
『木曽 歴史と民俗を訪ねて』木曽教育会郷土館部編著 信濃教育会出版部 2010【N234/99c】
『関西電力五十年史』関西電力五十年史編纂事務局編纂 関西電力 2002【540.9/46】
『中部電力70年史』中部電力株式会社編 中部電力 2021【N540/7f】
『名古屋電灯株式会社史』名古屋電灯編 中部電力株式会社能力開発センター【540.9/67】
『世界経済年表』大阪商科大学経済研究所編 岩波書店 1937
- 事前調査事項
- NDC
-
- 森林利用.林産物.木材学 (657 10版)
- 参考資料
-
-
矢頭純 著 , 矢頭, 純, 1932-. 木曽川物語. 郷土出版社, 1987.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001891242-00 -
木曽福島町教育委員会 編 , 木曽福島町教育委員会 (長野県). 木曽福島町史 第2巻 (現代編 1). 木曽福島町, 1982.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001591963-00 -
木曽の上松 : わが郷土の文化と歴史. 「木曽の上松」編集委員会, 1984.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001699987-00 -
図説日本文化地理大系 第10 (中部 第2). 小学館, 1961.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000000853492-00 -
南木曽町誌編さん委員会/編 , 南木曽町誌編さん委員会. 南木曽町誌 : 通史編. 南木曽町誌編さん委員会, 1982-00.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I059397205-00 -
帝室林野局 編 , 帝室林野局. 帝室林野局五十年史. 帝室林野局, 1939.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000000726049-00
-
矢頭純 著 , 矢頭, 純, 1932-. 木曽川物語. 郷土出版社, 1987.
- キーワード
-
- 大川狩り
- 木曽式伐木運材法
- 大井ダム
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000339814