レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2023/05/13
- 登録日時
- 2023/05/13 14:41
- 更新日時
- 2024/02/29 10:04
- 管理番号
- 鳥県図20230002
- 質問
-
解決
雉の鳴き声は、なぜ「ケーン」と表記されるのか。
- 回答
-
■図書
・『ちんちん千鳥のなく声は 日本語の歴史 鳥声編』
p.183~「妻恋う声はけんけんほろろ-キジ」に、雉の鳴き声の変遷が記載されている。
p.198 鎌倉中期の辞書『名語記』…「けいけいほろろ」
p.199 室町末期の『日葡辞書』…「ケイケイ」
p.200 浄瑠璃『百日曾我』(1700頃)…「けいけいほろろ」
浄瑠璃『檀浦兜軍記』(1732)…「けんけんほろろ」
・『暮らしのことば擬音・擬態語辞典』
p.156「けんけん」、p.157「けんけんほろろ」の項に、雄雉の鳴き声、江戸時代(中頃)から例が見られると記載されている。
・『図説鳥名の由来辞典』
p.130~「きじ【キジ】」の項に、
・奈良時代から「きぎし」「きぎす」等の名で知られる
・「きぎし」「きぎす」の語源…「きぎ」は鳴き声、「す」は鳥を表す接尾語という説が最も有力
との記載がある。
・『日本国語大辞典』第2版
・4巻「きじ【雉・雉子】」の項
p.86 「四~七月の繁殖期に雄はケン・ケーンと二声に鳴く。」
p.87(雉の語源のひとつとして)「(3)キンキンと鳴くところから〔嚶々筆語〕」※『嚶々筆語』は、天保13年刊(1842)
・5巻「けんもほろろ」の項
P.127に「(「けん」も「ほろろ」もきじの声。また、「ほろろ」はキジの羽音とも。)」とあり。
また、『天草本伊曾保』(1593)に「qenmo fororoni(ケンモ ホロロニ)」の記載があったことが記してある。
その他、江戸時代の出典あり。雉と関連付けたものとしては、
『俚言集覧』(1797頃)「けんもほろろ・・・(略)・・・権威と雉の声とになそらえ云云」、
『俳諧・文政句帖-八年』(1825)一月「何か気に入らぬかもして山きじのけんもほろろに行ん」がある。
・『時代別国語大辞典』
・上代編
p.238「きぎし[雉]」の項に「【考】」として、「和名抄」等に「キギス」の形も見える、「キギは、特徴ある鳴き声に基づくものであろう。」との記述あり。
・室町時代編 二
p.892「けいけいと」「けいけいほろろ」の項に、雉の鳴き声と説明あり。出典は『日葡辞書』(1603)。
p.1001「けんもほろろ」の項はあるが、雉への言及なし。出典として『イソポのファブラス』(1593)が挙げられている。
※「けん」の項に雉の鳴き声無し。
・室町時代編 五
p.108「ほろろ」の項に「雉の鳴き声の形容」「雉の羽の騒がしい音」とあり。
- 回答プロセス
-
・質問そのものに回答できる資料はなかなか見当たらなかったため、近世以前の文献で雉の鳴き声がどのように表記されていたのか、いつ頃から「ケーン」という表記になっていったのかを中心に調査した。
・『日本国語大辞典』『時代別国語大辞典』等、辞典類で雉やその鳴き声に由来するとされる「けんもほろろ」を調べる。
・GoogleScholarで古典作品中の雉の鳴き声について触れている論文を検索。
・「枕草子「風は」の段「黄なる木の葉どものほろほろとこぼれ落つる……」と和漢の伝統 : 黄葉紛々如涙庭と、文脈のスリカエ」中島 和歌子『札幌国語研究』10巻 pp. 21-52
p.26『赤染衛門集』『古今和歌集』『和泉式部続集』に記載されている雉(きぎす)の鳴き声…「ほろろ」「ほろほろ」
・「櫻田治助の作品に見られるオノマトペの特徴」中里理子『佐賀大学教育学部研究論文集』Vol. 6, No. 1(2021)p.73-83
p.78『吾妻鏡』に出てくる雉の鳴き声…「ほろほろ」
「けいせい反魂香」近松門左衛門…「ほろゝ」
・「⼤隈⾔道研究Ⅷ 『草径集』箋註(1)」進藤康子『九州情報大学研究論集』第24巻(2022年3月)p.50-66
p.57「春きてはめづらしき野のきゞすかな その⼆声をいくこゑもせよ」の訳
「春となると、珍しい野の雉がいるではないか。「けん、けーん」という⼆声の鳴き声を聞きたいから、何度でも鳴いてくれ。」
・類似するレファレンス事例を参考にするため、「ニワトリ_鳴き声」というキーワードでレファレンス協同データベースを検索。
事例「にわとり(鶏)の鳴き方のさまざまな表現を知りたい」に、雉の鳴き声についての記述がある資料あり(回答欄参照)。
https://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=ref_view&id=1000012969
・その他、『キジのくらし』『鳴き声から調べる野鳥図鑑』『日本の野鳥さえずり・地鳴き図鑑』等の資料で、「ケーン」以外の表記についての調査を行った。
(インターネット情報 最終確認日 2023年5月17日)
- 事前調査事項
- NDC
-
- 鳥類 (488 10版)
- 参考資料
-
-
山口仲美 [著] , 山口, 仲美, 1943-. ちんちん千鳥のなく声は : 日本語の歴史 鳥声編. 講談社, 2008. (講談社学術文庫)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000009785686-00 , ISBN 9784062919265 -
山口仲美 編 , 山口, 仲美, 1943-. 暮らしのことば擬音・擬態語辞典. 講談社, 2003.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000004270048-00 , ISBN 4062653303 -
菅原浩, 柿澤亮三 編著 , 菅原, 浩, 1913-1998 , 柿沢, 亮三, 1944-. 図説鳥名の由来辞典. 柏書房, 2005.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000007737217-00 , ISBN 4760126597 -
日本国語大辞典第二版編集委員会, 小学館国語辞典編集部 編 , 小学館. 日本国語大辞典 第5巻 第2版. 小学館, 2001.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000003002007-00 , ISBN 4095210052 -
上代語辞典編集委員会/編. 時代別国語大辞典 上代編. 三省堂, 1983.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I005717490-00 , ISBN 4385132372 -
室町時代語辞典編修委員会 編. 時代別国語大辞典 室町時代編 2 (か~こ). 三省堂, 1989.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001999531-00 , ISBN 4385132976 -
室町時代語辞典編修委員会 編. 時代別国語大辞典 室町時代編 5. 三省堂, 2001.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002956564-00 , ISBN 4385136068
-
山口仲美 [著] , 山口, 仲美, 1943-. ちんちん千鳥のなく声は : 日本語の歴史 鳥声編. 講談社, 2008. (講談社学術文庫)
- キーワード
-
- 雉
- キジ
- 鳥
- 鳴き声
- 鳴声
- 変遷
- 由来
- 歴史
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000333105