レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2024年02月07日
- 登録日時
- 2024/03/11 00:30
- 更新日時
- 2024/03/15 00:31
- 管理番号
- 5423009874
- 質問
-
解決
此花区の渡船について知りたい。
- 回答
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此花区内には安治川沿いには多いときで10箇所ほどの渡しがありましたが、現在は天保山(港区築港3丁目)と此花区桜島3丁目を結ぶ天保山渡船場だけになっています。
以下の資料に「此花区の渡船」について記述が見つかりました。
(1) 国立国会図書館デジタルコレクション『此花区史』(大阪市此花区 1955) (図書館・個人送信限定) <当館書誌ID:0000228462>
https://dl.ndl.go.jp/pid/3008454/1/70 (2024.3.2確認)
p.92-93 (コマ番号70)「第二編 各説 第五章 渡船」の「渡船の市営」の項、「明治三十八年天保山渡船場が始めて市営となり、翌三十九年市内全渡船場の市営が認められ、大阪府より有料経営の認可があつた。また四十年より市営名義に改められ請負経営によった。」とあり、p.93「安治川墜道」の項に「昭和十九年九月十五日十カ年の歳月と約二百五十万円の巨額が投ぜられて源兵衛渡附近に安治川墜道の開通をみるに至った。(中略)かくてこの開通によつて従来の源兵衛・二丁目・二丁目荷車・玉船の四渡船がやめられ、十九年十一月には請負事業の三ノ免・大浦の二渡船を休止、さらに二十年六月安治川筋築地、二十一年十一月には安治川筋一丁目渡船も廃され」とあります。また、p.83-85 (コマ番号65-66)「同編 第1章 土木事業 三 河川 1 新淀川」のp.85に「またこのため西淀川区との生活関係は漸次遊離することとなり、僅かに渡船によつて連絡するのみとなつた。(稗島渡・大浦渡)」の記述があります。
(2)『西淀川区史』(大阪都市協会/編集 西淀川区制七十周年記念事業実行委員会 1996.3)
「第三編 まちづくり 第1章 土木・建設」のp.219「稗島渡・大浦渡」の項に、「野里の下流、新淀川左岸のいまの此花区高見一丁目から北へ姫島に渡り、姫島小学校の西側に通じる道筋に稗島渡があった。なお稗島は、後の姫島であり、この渡は後に三ノ免渡と称されていたこともあった。さらに下流、左岸のいまの此花区伝法五丁目から、右岸福町にいたる尼崎街道の道筋に大浦渡があった。(中略)これらの稗島渡、大浦渡は、民営により運営されていた。(中略)戦後も運行していたが、昭和二十五年のジェーン台風で棧橋が流失するなどして廃止された。」とあります。また、「同編 第7章 教育・史跡等」のp.437~438「尼崎街道と大浦渡し跡」のp.438に「明治四十二年に新淀川が開削されると、この間を結ぶ交通手段として大浦(福村)渡しが開設された。またこのとき西成大橋が架橋され、(中略)南北に分断された稗島町を結ぶ渡船として、阪神電鉄本線下流に稗島渡しも開設された。この両渡船は地域住民の利用が多く、昭和八年の一日平均交通量は、乗船客二千八百八十八人、自転車三百三十四輛、荷車十八輛、荷物二百五十二個にもなっていた。」とあります。
(3) 国立国会図書館デジタルコレクション『大阪港史 第2巻 (各説篇)』(大阪市港湾局 1961) (図書館・個人送信限定) <当館書誌ID:0070051522>
https://dl.ndl.go.jp/pid/2469007/1/219 (2024.3.2確認)
p.380-392 (コマ番号216-222)「第二篇 管理・運営 第五章 交通・通信施設 第一節 渡船」のp.386に「渡船場の変動」の項があり、「[大正]一二年には、安治川源兵衛渡付近に荷物運搬専用の渡船場が新設されたりした」とあります。p.387「天保山渡船」の項には、「天保山渡船は明治三八年七月築港棧橋と西区天保町(水上警察署前)および桜島町(西成線天保町駅前)の三カ所間連絡用として設けた。渡船に発動機船一隻を配したが、築港の繁栄をはかる上で渡船賃は無料とした。(中略)大正一一年になって天保山棧橋完成し、(中略)市電との連絡を緊密にするため天保山・桜島間の運航を終夜運航とした。」とあります。次の「桜島丸の沈没事件」の項には、「また一二年には桜島丸の沈没事故があった。すなわち同年一二月一日午後九時頃大阪鉄工所その他各軍需工場の夜業帰りの工員九○余人をのせ、桜島渡船場を発して安治川中流にさしかかったところ、突然突風にあふられ顚覆沈没して五二名の犠牲者を出した。近来の渡船経営史上に稀な痛恨事であった。何分わずか十四、五トンの船に九○余人が乗ったのであるから無理からぬことだというほかはない。」とあります。
(4)『大阪春秋 -大阪の歴史と文化と産業と- 第56号 特集 おおさか歴史の散歩道 続篇』(大阪春秋社 1989)
p.82~90「渡船場の歴史散歩 三浦行雄」「安治川筋の渡し」の項p.86に「三丁目渡の右岸は、赤白に塗りわけられた大きな煙突をもつ関西電力春日出発電所があり、発電所の北に春日出橋があり、春日出南部一帯は工業地帯である。(中略)安治川の河口にあるのが、天保山渡である。(中略)明治三十年十月、起工式があげられた。この付帯工事として桜島渡の開設をみた。昭和十二年冬、桜島渡の用船が突風のため転覆して、乗客の工員ら五二名が溺死するという惨事があった。その後、港湾部所管から土木部所管に移され、桜島渡の呼称は悲惨な事故の記憶につらなるというので、天保山渡に改められたらしい。」p.86には「3丁目渡左岸(昭和63年11月)いま廃止」、そのほか天保山渡の写真2枚があります。
(5)国立国会図書館デジタルコレクション『大阪と淀川夜話』(三浦 行雄著 大阪春秋社 1985) (図書館・個人送信限定) <当館書誌ID:0070001810>
https://dl.ndl.go.jp/pid/9585772/1/64 (2024.2.24確認)
p.105-130(コマ番号56-69)「Ⅱ 渡船に関する覚書」のp.119-120「戦争と渡船事業」の項に「この土木部所管の三〇渡船場のほかに、天保山渡があり、築港工事の関係から港湾部所管であったが、後に土木部に移管された。天保山渡は、はじめ桜島渡と呼ばれていたが、昭和十二年冬、渡船が安治川を航行する汽船と衝突して転覆し、乗客の工員ら五二名が死没するという事故があった。桜島渡の呼称は悲惨な記憶を想い起させないように天保山渡と改称することになったようである。」とあります。 またp.121-125(コマ番号64-66)の「姿をなくしてゆく渡船場」の項p.122に「昭和のはじめ安治川筋で、もっとも交通量が多かったのは源兵衛渡であった。右岸に安治川発電所をはじめ工場も多く、左岸は松島新道に通じる要路にあたり、朝夕のラッシュアワーには乗客が狭い道路に曳々として列をつくる有様であった。三隻の用船が終夜運航で一日の乗客約九千人、自転車約千五百両を運んでいた。(中略)海底隧道は(中略)戦争たけなわの十九年九月に竣工し、源兵衛渡船場は廃止された。」とあります。
(6)『大阪春秋 -大阪の歴史と文化と産業と- 第57号 特集 大阪と長崎』(大阪春秋社 1989)
p.110~112「二月一日に廃止された「三丁目渡し」の二百年 小西義麿」にp.110「第一図 三丁目渡し廃止のお知らせ」、「第二図 お別れの乗船風景」の写真があります。
(7)『大阪市土木局業務論文報告集 第3巻』(大阪市土木技術協会/[編] 大阪市土木技術協会 1980.3)
p.183~191「土木局における渡船事業概要」の表-1「渡船場一覧表」、図-1「渡船場所在地図」、表-2「渡船場別配置人員、船舶及び運航時刻表(昭和54年4月1日現在)」、表-3「渡船別、交通量推移調(昭和44年~54年の11年間)」、表-4「渡船使用船舶一覧表」、図-2「渡船場推移図(明治40年以降)」があります。
(8) 国際日本文化研究センター「所蔵地図データベース」
『大阪市街全圖 : 實地踏測』(1916 和楽路屋)
<当館書誌ID:0000198180>
https://lapis.nichibun.ac.jp/chizu/map_detail.php?id=002462703 (2024.2.24確認)
大正時代の頃の安治川の上流の西九条渡から下流の天保山渡の間の、渡しの場所が確認できます。
(9)『目で見る此花の“昨日今日明日"』(大阪市此花区役所 2008.3)
p.10「昭和初期 渡し船の風景」、「昭和初期 1丁目の渡し船。電気科学館や四ツ橋へ行くのに使った」で1丁目の渡しの、p.128「昭和30年代 渡し船の風景」とp.129「平成19年」で桜島の渡しの、p.206「大正10年 安治川渡し入口」の写真があります。
(10) 国立国会図書館デジタルコレクション『西成郡史 第1編 第2編 第3編 第4編 第5編』(大阪府西成郡 編 大阪府西成郡 大正4) (インターネット公開(保護期間満了)) <当館書誌ID:0070052032 >
https://dl.ndl.go.jp/pid/950864/1/11 (2024.3.2確認)
図版 (コマ番号11)「新淀川の流末、大浦渡南岸より海口を眺む。」の写真があります。
大阪市および此花区のホームページにて、現在運行中の天保山渡船場の説明やX(旧ツイッター)での渡船の運航情報、昔の乗り場の写真などが公開されています。
(11)大阪市ホームページ 「大阪 渡船場マップ」
https://www.city.osaka.lg.jp/kensetsu/page/0000011242.html (2024.2.24確認)
(12) 大阪市此花区役所ホームページ「天保山渡船」
https://www.city.osaka.lg.jp/konohana/page/0000001418.html
(2024.2.24確認)
(13)大阪市此花区役所ホームページ「わがまちの写真館(詳細)」
https://www.city.osaka.lg.jp/konohana/page/0000001397.html#no04
(2024.2.24確認)
- 回答プロセス
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1.商用データベース「JapanKnowledge」にて、キーワード“渡船 此花区”で検索、見出し検索ではヒットせず、全文検索で「桜島」の項がヒットするが、天保山への渡船の記述のみ。
2.当館データベース「大阪関係資料目次検索」(外部非公開)にて、キーワード“渡船 此花区”、“稗島渡”で検索、資料(1)が見つかる。
3.大阪府立中之島図書館「おおさかポータル」( https://www.library.pref.osaka.jp/site/osakaportal/index.html )にて、キーワード“渡船”で検索、資料(3)(4)(6)(7)が見つかる。
4.「国立国会図書館デジタルコレクション」にて、キーワード“桜島渡 此花区”で検索、資料(5)が見つかる。
5.「大阪春秋総目次・索引集」( http://osaka-web-museum.na.coocan.jp/index-top-shunjyu.htm )にて、「地名/事項編」を確認。「渡船」、「渡船事業」、「渡船場」、「渡船場マップ」の項があり。確認するが新たな有用情報なし。
6.国際日本文化研究センター「所蔵地図データベース」で( https://lapis.nichibun.ac.jp/chizu/ )にて渡船場開設された明治38年あたりの地図を確認。検索、資料(8)が見つかる。
7.西淀川区史で(1)の資料の“稗島渡”“大浦渡”を確認。資料(2)が見つかる。
8.当館所蔵の此花区関連資料の写真を確認、資料(9)(10)が見つかる。
9.資料(8)の写真の参照元資料を確認するも新たな有用情報なし。
10.「Google」にてキーワード“大阪 渡船場”で検索、資料(11)が見つかる。
11.「Google」にてキーワード“大阪 渡船場 此花区”で検索、資料(12)(13)が見つかる。
- 事前調査事項
- NDC
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- 海運 (683 9版)
- 日本 (291 9版)
- 参考資料
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- 当館書誌ID <0000228462> 此花区史 大阪市此花区役所/編集 大阪市此花区三十周年記念事業委員会 1955.6 資料(1)
- 当館書誌ID <0070051522> 大阪港史 第2巻 大阪市港湾局 1961 資料(3)
- 当館書誌ID <0000452770> 大阪春秋 -大阪の歴史と文化と産業と- 第56号 特集 おおさか歴史の散歩道 続篇 大阪春秋社 1989 資料(4)
- 当館書誌ID <0000624023> 大阪春秋 -大阪の歴史と文化と産業と- 第57号 特集 大阪と長崎 大阪春秋社 1989 資料(6)
- 当館書誌ID <0012092327> 大阪市土木局業務論文報告集 第3巻 大阪市土木技術協会/[編] 大阪市土木技術協会 1980.3 資料(7)
- 当館書誌ID <0000531056> 西淀川区史 大阪都市協会/編集 西淀川区制七十周年記念事業実行委員会 1996.3 資料(2)
- 当館書誌ID <0011718154> 目で見る此花の“昨日今日明日" 大阪市此花区役所 2008.3 資料(9)
- 当館書誌ID <0070052032> 西成郡史 大阪府西成郡役所/編纂 大阪府西成郡役所 1915 資料(10)
- 当館書誌ID <0070001810> 大阪と淀川夜話(大阪春秋叢書 第1集) 三浦 行雄/著 大阪春秋社 1985 資料(5)
- 国際日本文化研究センター「所蔵地図データベース」『大阪市街全圖 : 實地踏測』(1916 和楽路屋)<当館書誌ID:0070001810> https://lapis.nichibun.ac.jp/chizu/map_detail.php?id=002462703 資料(8)
- 大阪 渡船場マップ https://www.city.osaka.lg.jp/kensetsu/page/0000011242.html 資料(11)
- 天保山渡船 https://www.city.osaka.lg.jp/konohana/page/0000001418.html 資料(12)
- わがまちの写真館(詳細) https://www.city.osaka.lg.jp/konohana/page/0000001397.html#no04 資料(13)
- キーワード
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- 大阪府大阪市此花区
- 渡船
- 桜島丸
- 桜島渡
- 渡し船
- 源兵衛渡し
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000347262