レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 登録日時
- 2023/03/30 00:30
- 更新日時
- 2023/03/30 17:25
- 管理番号
- 0000001518
- 質問
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未解決
近代以降の石川県(特に加賀市)の氷室の利用について知りたい。
具体的に明治時代から昭和初期にかけて、石川県(特に加賀市)の氷業、冷蔵業について載っている資料がないか、
どのような始まりだったのか、どういう人が働いていたのかを調べている。
①氷室がいつ頃作られ、いつ頃まで、どのように利用されていたのかなどが分かる文献資料はあるか。
※下記の論文を調べ、「石川県の氷室(雪室)の調査リスト」にあるいくつかには現地に行き、近所の方に
「医療用や、料理屋が利用したり、魚屋に納めていたなどの話を聞いたことがある」という話を聞いたが、
あまり詳しくはわからない(覚えていない)とのことだった。
②湯涌温泉の氷室小屋で行われる行事について書かれた新聞(毎日新聞1999.2.1、地方版/石川)に「かつては集落ごとに氷室を持ち、…」とある。このことについての詳細な資料があれば、教えてほしい。
- 回答
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事前調査事項に挙げていただいた論文9点を確認したが、結論として、これらの論文の内容以上に、ご質問に対する詳しい回答は見つけられなかった。
① 「氷室がいつ頃作られ、いつ頃まで、どのように利用されていたのかなどが分かる文献資料」について
『大聖寺川上流域の歴史』(「石川県の氷室(雪室)の調査リスト」(北陸大学紀要第33号)参考文献(45))から、以下引用。
この図書の第5章近代・現代(明治から平成)のようす 4.氷室(雪氷りづくり)(p212-215) 中の「コラム 雪穴物語」に、加賀市の旧山中町の氷室に関する以下の記述がある。
「西谷地区で氷雪業を営むため、雪穴を掘ってあったのは、菅谷と栢野にあった。大正12年1月18日に小谷弥三郎が営業許可願いを出し、同年2月3日石川県知事 山縣治郎より認可された。小谷弥三郎・小谷平三郎の二名で仕事が始められた。終戦後中村兵次と小谷貞治に受け継がれた。」「菅谷では昭和16-7年頃より、氷室の雪を温泉旅館や料亭等の冷蔵庫用に製造販売していた。…昭和26年頃には高瀬大橋も完成し搬出は大変楽になったが、30年頃になると電気冷蔵庫が普及してくると、雪氷りの需要はぐんぐん減り、35年頃には廃業せざるを得なかった。(以下略)」
氷室がどのように利用されていたかについては、先述の「コラム 雪穴物語」に「…4月中旬頃より10月中旬頃まで、山中温泉のお得意様へ届けていた。(以下略)」とある。
また同ページに掲載の新聞記事(掲載紙・掲載年月日不明)「天然氷売り 山中温泉でことしも」という見出しの記事には、以下の文章がある。
「山中温泉夏の風物詩のひとつ天然氷売りがことしもお目見えした。(略)早いものは4月ごろから、7月からはほとんど毎日切り出し、こもに包み大八車に積んでお得意様に届けている。人造氷は山中町では40円するのにこの天然氷は18円、安いうえに冷えも持ちもこの方がよいという特徴もあってなかなか好評。(略)1日平均400キロ、7月から9月までは毎日温泉街に配っている。」
この他『山中町史』『加賀山中温泉余香』や『山代温泉案内』など、山中温泉と山代温泉の歴史・地誌・紀行の図書に当たったが、氷室に関する記事は見つけられなかった。
② 「湯涌温泉の氷室小屋が、かつては集落ごとに作られていたという記述」について
かつての湯涌温泉の集落ごとの氷室といったことに関しては『金沢市史 資料編』や『稿本金沢市史』など金沢に関する歴史の資料では見つけられなかった。
③ 石川県(特に加賀市)の氷業、冷蔵業について
『北陸冷蔵の38年』のp12-14 第2章 県下における製氷事業の発達 (1.北陸製氷と金沢製氷の設立 2.小売兼業者の進出) に、石川県下の製氷事業の始まりと、製氷事業が冷凍工業へ発展するまでの経緯が簡単にまとめられている。ただし、ここに名前が挙がっている「北陸製氷株式会社」と「金沢製氷株式会社」はどちらも金沢市の企業であり、加賀市の氷業、冷蔵業については特筆されていない。
- 回答プロセス
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1.質問者事前調査資料のうちの論文・竹井巌他「石川県の氷室(雪室)の調査リスト」(北陸大学紀要33号)に目を通す。
この論文の「3.リストに掲載した各氷室(雪室)の解説 、3-2加賀地区(金沢以南)」の部分の参考文献(36)-(45)のうち資料名のある、加賀地区の氷室の関連図書3点「加賀市史 通史 下巻」「やましろ街事典 1996」「大聖寺川上流域の歴史」の調査に当たる。
→「加賀市史 通史 下巻」と「やましろ街事典 1996」はほぼ論文自体に掲載記述が載っている。
「大聖寺川上流域の歴史」の4ページ分(p212-215)の記述は、論文中に数行でまとめられている。⇒ 回答に原文を載せる。
2.明治から昭和20年代の当館所蔵の郷土資料の商工業の名簿で、氷業、冷蔵業の人名の有無を探索
→「石川県商工要覧」は大正11-14年、昭和9年のものがあるが、いずれも氷業、冷蔵業の人名掲載無
→「石川県商工人名録」は大正8年と昭和9年のものあり。
3.金沢市立玉川図書館HPhttps://www2.lib.kanazawa.ishikawa.jp/reference/shoukoujinmeiroku/shoukoujinmeiroku_161.pdf から
昭和3年の金沢商工人名録を閲覧可能。「氷、冷蔵業」で7件記載あり(うち1件「北陸冷蔵株式会社」は重複)
4. 商工業の名簿に掲載のあった「北陸冷蔵株式会社」について社史あり
- 事前調査事項
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1竹井巌他、石川県の氷室(雪室)の調査リスト、北陸大学紀要33号
2竹井巌、石川県における明治大正期の氷室と雪氷利用、北陸大学紀要30号
3竹井巌、大正期における石川県の氷室(雪室)と鮮魚鉄道輸送、北陸大学紀要32号
4竹井巌、金沢「氷室」考、北陸大学紀要34号
5竹井巌他、加賀市の氷室・雪室跡と氷雪利用、北陸大学紀要?
6池上佳芳里、北陸地方における雪室の分布とその盛衰(地理科学 54(2) 1999-04-28 p.126-137) ※デジタルを印刷
7北島俊朗、金沢の氷室
8小林忠雄、氷室のいわれ(『金沢都市民俗文化研究所研究報告書 平成20年度 』所収)
9小林忠雄、加賀の氷室行事、石川県史だより53号、平成25年5月
- NDC
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- 日本史 (21 9版)
- 参考資料
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- 1 石川県の氷室(雪室)の調査リスト 竹井/巌?著 神田/健三?著 [北陸大学] 2009.12 K383/1017 北陸大学紀要33号
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2 大聖寺川上流域の歴史 大聖寺川上流域の歴史編集委員会∥編集 大聖寺川上流域の歴史編纂委員会 2009.4 K228/1004 212-215 4.氷室(雪氷りづくり) -
3 北陸商工業名鑑 日本勧業合資会社∥編 日本勧業合資会社 1916 K280/31 140 諸官衛及金沢市の部 雪、氷ノ部 に2件 -
4 金沢市商工人名録 大正15年 金沢市∥編 金沢市 1926 K670.3/1/26 111 レの部「冷蔵凍魚」1件 営業種目 納税額 住所 電話番号 氏名 -
5 金沢市商工人名録 昭和2年 金沢市∥編 金沢市 1927 K670.3/1/27 251-252 コの部「氷、飲料水、冷蔵業」で16件 種目 税額 住所 電話番号 氏名 -
6 石川県商工人名録 石川県商工団体総合会∥編 石川県商工団体総合会 1936.3 K670.3/4/36 59 金沢市コの部「氷、清涼飲料水」で4件あり、他地域に掲載無。営業品目 営業収益税額 商号 氏名又は名称 営業所 電話番号 -
7 石川県商工要覧 昭和27年度版 石川県経済部商工課∥編 石川県経済部商工課 1952 K670.3/5/52 66 第3章倉庫業 2冷凍倉庫業の項に県内15名の冷凍倉庫業者名簿あり。うち加賀市の住所無。 -
8 書府太郎 下巻 北國新聞社 2005.4 K030/1003/2 620 湯涌温泉 -
9 北陸冷蔵の三十八年 牧/久雄∥編 北陸冷蔵 1961.10 K335/6
- キーワード
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- 氷室
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- 雪氷利用
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- 製氷
- 氷業
- 冷蔵業
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000331234