レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2022年8月17日
- 登録日時
- 2022/08/25 15:30
- 更新日時
- 2022/12/21 20:06
- 管理番号
- 県立長野-22-092
- 質問
-
解決
長野県 東御市の白鳥神社に伝わる海野幸氏の短歌「この海野清き流れに白鳥はあとたれ初めて幾世へにけん」の出典を知りたい。
- 回答
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「善光寺道名所図会」に記載があることが確認できた。
『新編 信濃史料叢書 第21巻』(後述)の解題によると、「善光寺道名所図会」は、江戸時代後期 天保14(1843)年に豊田利忠という美濃国今尾城主竹腰氏の家臣が記した、善光寺道の名所古跡を記録した資料。
「善光寺道名所図会」は下記資料で確認できる。
<活字翻刻されている資料>
・『新編 信濃史料叢書 第21巻』信濃史料刊行会編・刊 1978【N208/43/21】[最終確認日 2022年12月10日]
p.351に建久2(1191)年3月に詠まれた歌として、「古の海野清き流れにしら鳥ハ跡たれ初て幾世経ぬらむ」という記述が確認できた。
また、この資料は国立国会図書館デジタルコレクションで図書館・個人送信限定で公開されている。
<ウェブ上で公開されている資料>
・「善光寺道名所図会 巻之5」豊田 利忠/編・画1849[最終確認日 2022年12月10日]
当館が運営するデジタルアーカイブ「信州デジタルコモンズ」で公開している。
江戸後期にあたる嘉永2(1849)年に名古屋で出版された刊本。
該当箇所はリンク先25コマ目の右ページ。
また、参考に調査の中で確認できた、関連すると思われる資料を紹介した。
1「この海野 清き流れに 白鳥は あとたれ初めて 幾世へにけん」という歌について
・『上田・小県文化大事典』伊澤和馬編集 信濃路出版 1986【N221/109】[最終確認日 2022年12月10日]
p.369「白鳥神社歌碑」の項目で、上記の短歌の歌碑が紹介されている。ただし、短歌の作者は「海野幸平」とある。
また、ほかにこの歌碑や「海野幸平」についての資料は確認できなかった。
2. 白鳥神社と海野幸氏に関わる資料について
下記資料に海野幸氏が白鳥神社を現在の位置に移した旨の記述が確認できた。
・『歴史の道調査報告書 1-5』長野県教育委員会編 長野県文化財保護協会 1984 【N682/53-1】
「3 北国街道」 p.27-31「海野宿」のp.29に白鳥神社について書かれている部分があり、「建久二年に海野幸氏が社殿を今の地に遷したと伝承されている」とある。
・『本海野の歴史』本海野の歴史編集委員会編 小県郡東部町本海野区 1995【N221/152】
p.127-130「海野の産土神白鳥神社」の項目のp.128に「寛正二年(一四六一)八月、海野幸氏は社殿を現在の位置に移して再建いたしました。」とあり、拝殿の棟札に残されていた文言が翻刻掲載されている。
- 回答プロセス
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1 和歌に関する資料を参照する
和歌の出典を調べるための資料として、『新編国歌大観』の索引巻にあたる各巻の2冊目を参照するも、海野幸氏の短歌及び「この海野」で始まる短歌は確認できなかった。
・『新編国歌大観 第1巻 [2]』「新編国歌大観」編集委員会編 角川書店 1983【911.1/シン/1-2】
・『新編国歌大観 第2巻 [2]』「新編国歌大観」編集委員会編 角川書店 1984【911.1/シン/2-2】
・『新編国歌大観 第3巻 [2]』「新編国歌大観」編集委員会編 角川書店 1985【911.1/シン/3-2】
・『新編国歌大観 第4巻 [2]』「新編国歌大観」編集委員会編 角川書店 1986【911.1/シン/4-2】
・『新編国歌大観 第5巻[2]』「新編国歌大観」編集委員会編 角川書店 1987【911.1/シン/5-2】
・『新編国歌大観 第6巻[2]』「新編国歌大観」編集委員会編 角川書店 1988【911.1/シン/5-2】
・『新編国歌大観 第7巻‐[2]』「新編国歌大観」編集委員会編 角川書店 1989【911.1/シン/7-2】
・『新編国歌大観 第8巻‐[2]』「新編国歌大観」編集委員会編 角川書店 1990【911.1/シン/8-2】
・『新編国歌大観 第9巻‐[2]』「新編国歌大観」編集委員会編 角川書店 1991【911.1/シン/9-2】
・『新編国歌大観 第10巻-[2]』「新編国歌大観」編集委員会編 角川書店 1992【911.1/シン/10-2】
・『三省堂名歌名句辞典』佐佐木幸綱編 三省堂 2004【911.1/サユ】
・『和歌大辞典』犬養廉[ほか]編集 明治書院 1986【911.1/イキ】
2 海野幸氏について調べる
下記人物事典を参照したが、有力な情報は得られなかった。
・『長野県歴史人物大事典』神津良子編 郷土出版社 1989【N283/13】
p.112「海野氏」、「海野幸氏」の項目
・『角川日本姓氏歴史人物大辞典 20』角川書店 1996【N288/158】
「海野幸氏」の項目は確認できなかった。
なお、「海野幸平」という人物についても、上記2冊と『角川日本姓氏歴史人物大辞典 20』の巻末資料の海野氏の系図を参照したが、関連項目や人物を確認することはできなかった。
3 東御市周辺の市町村史誌を参照する
・『上田・小県文化大事典』(回答参照)
・『本海野の歴史』(回答参照)
・『長野県史 民俗編 第1巻(2)東信地方』長野県編 長野県史刊行会 1986【N209/11-3/1-2】
・『長野県史 民俗編 第1巻(3)東信地方』長野県編 長野県史刊行会 1987【N209/11-3/1-3】
・『上田小県誌 第1巻 歴史篇上(2) 古代・中世』上田小県誌刊行会編 小県上田教育会 1980【N221/12/1-2】
・『上田小県誌 第3巻 社会篇』上田小県誌刊行会編 小県上田教育会 1968【N221/12/3】
4 石造物に関する調査資料を参照する
・『長野県石碑目録』長野県教育委員会編 長野県文化財保護協会 1990【N714/44】
p.56-62「東部町」の部分
・『東部町の石造文化財』東部町教育委員会編・刊 1983【N714/20】
p.152-153 「東部町石造文化財一覧表」の「本海野」の部分
p.94-99 「三十一、文学碑」の部分
・『東御市の石佛 (小縣石造文化財集成)』岡村 知彦 編 2009【N714/89/1】
p.649-674「田中 本海野の石仏」
・『東御市の文化財』東御市教育委員会編・刊 2006【N202.6/255】
5 白鳥神社及び神社に関する資料を参照する
・『長野県百科事典』信濃毎日新聞社開発局出版部編 信濃毎日新聞社 1981【N030/2a】
p.403「白鳥神社[しらとりじんじゃ]」の項目
・『全国神社名鑑 上巻』全国神社名鑑刊行会史学センター編・刊 1977【175.9/ゼン/1】
p.494「白鳥神社」の項目
・『信州休日の社寺巡り 東北信編50社寺』北沢房子文 信濃毎日新聞社 2003【N171/23/1】
・『松代 白鳥神社調査報告書』真田宝物館[編] 長野市教育委員会文化財課・松代文化施設等管理事務所 2010【N171/55】
6 地名辞典を参照する
・『日本歴史地名大系 20 長野県の地名』平凡社 1979【N290.3/54】
p.199「白鳥神社」の項目
7 海野宿に関わる資料を参照する
・『歴史の道調査報告書 1-5』(回答参照)
<その他調査資料>
下記を参照したが、回答につながる情報は得られなかった。
・「信濃史料データベース」
長野県立歴史館が提供する、長野県に関する古代から江戸時代初期までの古文書などの史料が収められている『信濃史料』を検索、閲覧できるデータベース。
「白鳥」、「海野幸氏」などのキーワードで検索したが、お問い合わせの歌に関わる記述は確認できなかった。
・「長野県の民話 検索」
県立歴史館が提供する、長野県の民話を検索することができるデータベース。
「白鳥神社」と検索したが、回答につながる記述は確認できなかった。
以下、愛知県立大学学術研究情報センター 様からご教示いただき、再調査した内容。
8 関連する論文を探す(情報提供 愛知県立大学学術研究情報センター 様)
CiNii Researchで「海野幸氏」のキーワードで検索したところ、下記の論文が確認できた。
・西澤美仁「信州に西行塚 : 海野幸氏・禰津甚平・真田信之をめぐる西行伝承生成の仮説」『上智大学国文学科紀要』 (24) 51-72, 2007[最終確認日 2022年12月10日]
p.72(注8)に、「この海野・・・」を含む三首について、「出典は三首とも『善光寺道名所図会』で」との記述が確認できた。
9 「善光寺道名所図会」を探す
(1) 国文学研究資料館「日本古典籍総合目録データベース」で「善光寺名所図会」と検索したところ、デジタルアーカイブで閲覧が可能な資料が多数確認できた。[最終確認日 2022年12月10日]
このほか、長野県内のデジタルアーカイブとして、当館が運営する「信州デジタルコモンズ」でも検索を行い、該当資料を紹介した7[最終確認日 2022年12月10日]。
(2) 翻刻資料を探す
『新編信濃史料叢書』の目録を確認したところ、第21巻に所収されていることが分かり、回答のとおり掲載を確認できた。
- 事前調査事項
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「白鳥神社 信州海野宿 公式ホームページ」[最終確認日 2022年8月25日]
- NDC
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- 神社.神職 (175)
- 詩歌 (911)
- 参考資料
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信濃史料刊行会 編 , 信濃史料刊行会. 新編信濃史料叢書 第21巻. 信濃史料刊行会, 1978.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001399104-00 -
上田・小県文化大事典. 信濃路出版, 1986.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001839795-00 -
長野県教育委員会/編 , 長野県教育委員会. 歴史の道調査報告書 1-5 復刊版. 長野県文化財保護協会, 1984-02.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I059104453-00 -
本海野の歴史編集委員会/編 , 本海野の歴史編集委員会. 本海野の歴史. 小県郡東部町本海野区, 1995-12.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I059382249-00
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信濃史料刊行会 編 , 信濃史料刊行会. 新編信濃史料叢書 第21巻. 信濃史料刊行会, 1978.
- キーワード
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- 白鳥神社(長野県東御市)
- 海野幸氏
- 照会先
- 寄与者
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- 愛知県立大学学術研究情報センター[最終確認日 2022年12月10日]
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000320266