レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2022/08/24
- 登録日時
- 2023/03/30 00:30
- 更新日時
- 2023/03/30 17:25
- 管理番号
- 0000001511
- 質問
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解決
江戸時代の蘭学、医療に関して現代ではアロマテラピーに使用される精油を薬の調剤として使用したことがわかる資料はないか?
加賀藩もしくは北陸で使用された薬のレシピのようなものを知りたい。
また、どのような症状の人に使用したかも知りたい。
- 回答
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精油について
1.『日本大百科全書 13』【031/ニホ/13】p478-480には、現在確認される精油の一覧がある。
これを参考に、江戸時代の薬の処方に関する資料を調査する。
薬の成分を記載した資料について
2.以下の資料は、江戸の終わりに加賀藩で過ごした大野弁吉による民間薬の処方を蒐集して記したものと考えられている。
『大野弁吉著『一東視窮録 製薬 上』を読む』 板垣/英治?著 [北陸医史学会] 2014.2 【K499/1014】(『一東視窮録 製薬 上』の成立は嘉永五年頃(~1853)と見られている)
・内科:「丁子油」(解説に「丁子油 クローブ(Clove)は、フトモモ科のチョウジノキ(中略)クローブの精油には殺菌・防腐作用があり、弱い麻酔・鎮痛作用もある。歯痛の鎮痛剤として使用される。」とある)
・内科:「回春酒製」:「白檀三匁」含む(解説には、「頭痛、体調不良、アロマテラピー。」とある)精油として使用したかは分からないが、精油のもととなる白檀が使用されていることがうかがえる。
・内科:「阿片丸」:「龍脳五厘」含む(解説には「香気は樟脳に勝り価格も高い。香料」とある)精油のもととなる材料の樟脳への言及がある。
・外科・皮膚科の薬:「虱抜油」:「樟脳」含む
・眼科:「瞳子散大付薬」:「龍脳」含む
・眼科:「目薬」:「龍脳四十目」含む
・耳鼻科:「耳薬」:「大茴香」含む(解説に「中国原産シキミ科常緑高木の果実を香辛料に使用、ウイキョウの精油(中略)嘔吐、脚気に効あり」とある)
・歯科:「丁子油」
・歯科:「歯薬」:「龍脳」含む
3.以下の資料に明治初期に石川県で過ごした医療関係者による薬の調合が分かる記述がある。
①『「スロイス方聚」スロイスの調剤処方箋』 板垣/英治?著 北陸医史学会 2012.2 【K499/1012】
②『スロイス薬剤学に記載された生物由来の有効成分』 板垣/英治?著 [北陸医史学会] 2011.2 【K499/1009】
③『「ローレッツ氏方叢」の薬剤処方の解読』 赤祖父/一知?著 板垣/英治?著 [北陸医史学会] 2015.2 【K499/1015】
④「ホルトマン氏方集(薬剤処方集)」 板垣英治著 (『北陸医史』 北陸医史学同好会 通巻39号 【郷土雑誌/K490/ホク】
①スロイスは、明治5年に金沢医学館で薬剤の調剤処方箋の講義をしていた人物。本書は、その講義録として現存する「スロイス方聚」に記載された処方箋の一部分を使用した薬剤名とその量および適用症を紹介したもの。この資料では、薬剤名の中に「薄荷油」の記載がある。
②本論文では「龍脳生薬」について解説があり、その中に精油のもととなる材料の「樟脳の結晶についての詳しい記述をしている。」とある。
③ローレッツは、明治13年に金沢医学校に着任した人物。この資料では、薬剤名の中に「龍脳」、「アニース」、「薄荷油」の記載がある。
④ホルトマンは、明治8年に金沢医学所に来任した人物。この資料では、「アニース油」、「薄荷油」、「ア子ース油」が記載されている。
- 回答プロセス
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現在、主用途として医薬に使われている精油:アニス油(過泥子)=アニスの果実(ヨーロッパ、ソ連、近東)、しょうのう油(樟脳油)=クスノキの根、株、枝、葉(台湾、中国南部)、びゃくだん油(白檀油・栴檀)=ビャクダンの幹、根(インド、セレベス、マレー半島)、ペパーミント油(はっか油)(薄荷油)=日本ハッカの葉、花、茎(北海道)(→薄荷水や薄荷精にも使用されていると思われる)、ユーカリ油=ユーカリ属の葉(コンゴ、スペイン、ポルトガル)
記載があるとすれば、過泥子、樟脳油、白檀油・栴檀、薄荷油、薄荷水、薄荷精の可能性が高そうなので、この記載を探す。
- 事前調査事項
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『加賀藩の秘薬』、『加賀藩社会の医療と暮らし』、『近世金沢の医療と医家』は調査済
- NDC
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- 医学.薬学 (49 9版)
- 参考資料
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- 1 日本大百科全書 13 小学館 1987.1 031/ニホ/13 p478-480
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2 大野弁吉著『一東視窮録 製薬 上』を読む 板垣/英治?著 [北陸医史学会] 2014.2 K499/1014 p39-40,44,46-49 -
3 「スロイス方聚」スロイスの調剤処方箋 板垣/英治?著 北陸医史学会 2012.2 K499/1012 p19 -
4 スロイス薬剤学に記載された生物由来の有効成分 板垣/英治?著 [北陸医史学会] 2011.2 K499/1009 p39-40 -
5 「ローレッツ氏方叢」の薬剤処方の解読 赤祖父/一知?著 板垣/英治?著 [北陸医史学会] 2015.2 K499/1015 p44,48-49 -
6 北陸医史 / 北陸医史学同好会 通巻39号 北陸医史学同好会 北陸医史学会 1979- 郷土雑誌/K490/ホク p20-21,27,31
- キーワード
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- 薬剤
- 精油
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000331237