レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 登録日時
- 2020/11/19 14:08
- 更新日時
- 2022/01/14 17:11
- 管理番号
- 180
- 質問
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解決
尼崎市北城内にある旧尼崎警察署の建物について知りたい。
- 回答
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大正15年(1926)11月30日竣工の旧尼崎警察署は、兵庫県が大正期以降県内各地に建てた鉄筋コンクリート造警察署庁舎のひとつです。
3階建てですが、1階は半地下で、正面の階段を約2.4m上がった2階が基準階となっています。左右対称の構成で、正面中央部の玄関付近に装飾が集中して配され重厚な雰囲気をもっており、当時の庁舎建築の特徴をよく表しています。建築の様式について、建築当時の記録類を参照すると、「近世式」(『兵庫県尼﨑警察署 建築概要』、大正15年12月)、「近世ルネッサン式」(神戸新聞、大正15年12月12日)、「表現派を加味したモーダンルネサンス式」(大阪朝日新聞、大正15年12月18日)など、資料によってさまざまな表現がなされています。デザインの特徴からは、当時日本にも伝えられていた建築界の新潮流である「セセッション式」と呼ばれる様式に倣ったものと考えられます。
尼崎市内の近代建築遺産のひとつであり、兵庫県内において完全な形で残る戦前期の警察署庁舎としては唯一のものです。
■建物の概要
所在地: 兵庫県尼崎市北城内48-4
構造: 鉄筋コンクリート造3階建て
起工: 大正14年(1925)12月12日
竣工: 大正15年(1926)11月30日
設計者: 置塩章(おしおあきら、兵庫県営繕課)
施工者: 松村組
建築面積: 176坪5合(約583.5m2)
延床面積: 532坪2合5勺(約1759.5m2)
■建物の沿革
大正15年12月兵庫県尼崎警察署として開庁したのち、署の名称は自治体警察の時代を挟んで尼崎市警察署、尼崎市東警察署、尼崎市南警察署、兵庫県尼崎中央警察署と変わりました。
この間、署員の増加による狭あい化と建物の老朽化が進んだことを理由に、尼崎中央警察署時代の昭和45年(1970)3月31日、同署は昭和通2丁目の新築庁舎に転出し、敷地と建物は尼崎市の管理となりました。
市では公共施設として活用するため改修工事を実施し、昭和46年6月23日に尼崎市立城内児童館を開設、建物の一部に尼崎市城内出張所が入居しました。以来20年余りにわたって一般の利用に供されてきましたが、平成7年(1995)1月17日に発生した阪神・淡路大震災により被災し、構造の安全性が確認できないとして閉鎖されました。
その後、平成10年から11年にかけて、尼崎市はこの建物の保存活用の可能性を探るべく調査を実施し、その成果が『旧城内児童館保存修復調査報告書』としてまとめられています。このほか、尼崎市立歴史博物館地域研究史料室"あまがさきアーカイブズ"が所蔵する"尼崎市広報課写真"等の写真資料中に、警察署時代や児童館に改修中の写真などがあります。
■建物の現状
城内児童館への転用時に外壁が塗装され、窓枠がスチール製からアルミ製に交換されていますが、そのほかの外観は竣工時から大きく変わっていません。その後、平成元年度に再び外壁の塗装が行われています。
内部は地階が建設当初の姿をよく留めており、留置場はほぼ完全な姿で残っています。1階と2階は児童館転用時の改造で建築当初の意匠は失われた部分が多いものの、天井に施された漆喰細工は大部分が旧状を留めているほか、中央階段室の親柱柱頭の大理石製飾り、人造石研ぎ出しの手すり、はめ込まれた装飾レリーフなど階段部分に装飾的な要素が集中して残っています。
- 回答プロセス
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1 旧尼崎警察署の建築に関する文献
◆『兵庫県尼崎警察署 建築概要』兵庫県, 大正15.12
◆『旧城内児童館保存修復調査報告書』尼崎市都市局計画部都市美担当, 平成11.3
◆尼崎市立地域研究史料館紀要『地域史研究』第39巻第1号(通巻108号), 平成21.9
平成20年10月18日に開催された「あまがさき城内フォーラム、旧尼崎警察署建物保存活用ミニシンポジウムの記録」を掲載。
このうち岡崎勝宏「旧尼崎警察署建物設計者・置塩章について」は、置塩が設計した旧尼崎警察署を含む複数の近代建物を取り上げ、その事績をくわしく紹介している。
2 尼崎警察署の歴史に関する文献
◆『尼崎地域史事典』/Web版『尼崎地域史事典』apedia
http://www.archives.city.amagasaki.hyogo.jp/apedia/
◆『兵庫県警察史 昭和編』兵庫県警察本部, 昭和50.3
県下各警察署のうつりかわりに尼崎中央署の項目がある。
◆『尼崎市警察史』尼崎市, 昭和30.2
3 城内児童館の歴史に関する文献
◆『城内児童館沿革史』, 平成8か
- 事前調査事項
- NDC
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- 日本の建築 (521)
- 参考資料
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- 『兵庫県尼崎警察署 建築概要』兵庫県, 1926 (古文書・近現代文書 文書群番号:113063)
- 『旧城内児童館保存修復調査報告書(概要編・資料編)』尼崎市都市局計画部都市美担当, 1999 (行政資料:3677~3679)
- 岡崎勝宏・笠原一人・綱本琴. あまがさき城内フォーラム 旧尼崎警察署建物保存活用ミニシンポジウムの記録. 2009.9. 尼崎市立地域研究史料館紀要『地域史研究』 第39巻第1号 (逐次刊行物)
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尼崎市立地域研究史料館 編 , 尼崎市立地域研究史料館. 尼崎地域史事典. 尼崎市, 1996.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002486437-00 (当館請求記号 219/A/ア-3) -
兵庫県警察史編さん委員会 編 , 兵庫県警察本部. 兵庫県警察史 昭和編. 兵庫県警察本部, 1975.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001207129-00 (当館請求記号 317.1/H/ヒ-3) -
尼崎市総務局行政課統計係/編集 , 神戸新聞社宣伝技術研究室/編集. 尼崎市警察史. 尼崎市役所, 1955.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I052683005-00 (当館請求記号 317.6/A/ア) - 城内児童館沿革史. 尼崎市立城内児童館, 1996か. (当館請求記号 369.6/A/ア)
- キーワード
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- 近代建築
- 警察署
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介 事実調査
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000289653