レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2022年10月26日
- 登録日時
- 2022/12/29 00:30
- 更新日時
- 2023/11/05 00:30
- 管理番号
- 0C22008671
- 質問
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解決
1939年、服部良一/作曲・奥野椰子夫/作詞の「夜のプラットホーム」と言うタイトルの曲が、検閲を受け発売中止となった。戦後、出し直してヒット曲となったが、この曲の検閲理由が知りたい。
- 回答
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下記の資料に関連する記述がありました。
(1) 『ぼくの音楽人生 -エピソードでつづる和製ジャズ・ソング史-』 (服部 良一/著 日本文芸社 1993.3)
p.179-192「東宝系映画音楽」の章のp.181に「夜のプラットホーム」の発売禁止処分について記述があり、「発禁理由は、軟弱で、厭戦思想があるというものであった。もっとも、作詞家の奥野君は、新橋駅で出征兵士を見送る勇ましい歓呼の中で、プラットホームの柱の陰で泣いている新妻らしい女性の姿に心打たれて詩を作ったという。検閲官にもそれが感じられるのか、「出征兵士を見送る風景が連想され、めめしい」と、発売を許さなかったのである。」とあります。
(2) 『上海ブギウギ1945 -服部良一の冒険-』 (上田 賢一/著 音楽之友社 2003.7)
「3 特殊工作員、服部良一」のp.95「一九三九年、今度は原節子主演の映画『東京の女性』の挿入歌、淡谷のり子の「夜のプラットホーム」が内務省の検閲に引っかかった。‟アデュー アデュー 君いつかえる“‟柱によりそい たたずむわたし”の歌詞が出征兵士を見送る場面を連想させて、「厭戦思想がある」「軟弱である」と検閲官に判断され発売禁止となる。」とあります。
(3) 『現代風俗史年表 :増補2版 -昭和20年(1945)→平成12年(2000)-』 (世相風俗観察会/編 河出書房新社 2001.2)
「一九四七年 昭和二二年」のp.25「その他のヒット曲」の項に「二葉あき子「夜のプラットホーム」(詞 奥野椰子夫 曲 服部良一)。この歌はもともと戦時中に、出征する兵士を見送る新妻の姿に心を打たれて作ったものだという。ところが当時は、別れを哀切に歌ったということで検閲にひっかかり、レコード化が禁止された。」とあります。
(4) 『ブルースの女王淡谷のり子』 (吉武 輝子/著 文芸春秋 1989.12)
「第三章 心の歌 女の歌」のp.166に「マーク・ラスの「夜のプラットホーム」を服部良一が大幅に手直ししたものを吹き込んだが、出征する夫をかげから見送る妻のかなしさを歌ったこの歌を検閲のきびしかったこの時代の当局が許すわけもなく、ただちに発売禁止となり」とあります。
(5) 国立国会図書館デジタルコレクション『東京のうた : その心をもとめて』(朝日新聞社 1968) (図書館・個人送信限定)
https://dl.ndl.go.jp/pid/2517603/1/123 (2023.10.24確認)
p.239-241(コマ番号123-124)「夜のプラットホーム-別れの悲しみに人生をみる-」のp.239に「出征の悲しみをテーマにした“反戦的”なうた、どだい検閲をパスするはずがない。淡谷のり子のうたで吹込みはしたものの、レコードはそのままお蔵入り」とあります。
資料(5)は『朝日新聞東京版』の連載コラムを元に出版されています。元となったコラムは以下(6)で閲覧できます。
(6) 『朝日新聞縮刷版 1968年3月号』 (朝日新聞社 1968)
昭和43(1968)年3月22日 p.16 「東京のうた 55 夜のプラットホーム」
(7) 国立国会図書館デジタルコレクション『月刊保団連 (190)』 (全国保険医団体連合会 1983-11) (図書館・個人送信限)
https://dl.ndl.go.jp/pid/1848835/1/42 (2023.10.24確認)
p.80(コマ番号42)「水沢透のカラオケ戦後秘史 「夜のプラットホーム」-すれちがう2人のひろ子」に「二葉あき子がうたってヒットしたこの歌は戦前、新聞記者だった奥野が作詞し、淡谷のり子がうたった『待ちわびで』に手を入れた歌。(中略)“君死にたもうことなかれ”とも聞こえる哀調を帯びたリズムと歌詞に軍部が激怒。発禁処分なった歌のリバイバルだった。」とあります。
以下の資料には、検閲理由の記述はありませんでしたが、当該レコードの発禁について記述がありました。
(8) 『機関紙の歴史 戦後編』 (林 直道/監修 日本機関紙出版センター 1999.12)
「第2章 日米安保態勢下の機関紙運動」のp.48-53 小森孝児「占領下、特高警察の罷免と検閲の虚実」のp.50-51「占領下の言論検閲と弾圧 戦争末期、内務省の言論検閲」の項に、「日本敗戦三年前には、内務省の検閲課長の配下に十一もの専門係があったいう。庶務、企画、納本、著作権、レコード検閲、出版検閲、新聞検閲、雑誌検閲、外字検閲、保管、映画検閲 の諸係である。(中略)出征をテーマにした歌謡曲『湖畔の宿』『夜のプラットホーム』を発禁にしたのも、内務省レコード検閲の一係であった」とあります。
- 回答プロセス
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1.「Google」にて、キーワード“夜のプラットファーム”を検索。「Wikipedia」の「夜のプラットホーム」のページに発禁処分について記述あり。参考文献を確認し、資料(2)が見つかる。
2.当館蔵書検索システムにて、フリーワード“歌 検閲 戦時”、“歌 検閲 戦争”で検索。有用資料見つからず。
3.「国立国会図書館デジタルコレクション」にて、キーワード‟夜のプラットホーム 検閲”で検索。資料(5)(7)が見つかる。
4.「Googleブックス」にて‟夜のプラットホーム 検閲”で検索。資料(1)(3)(4)(8)が見つかる。
5.商用データベース「朝日新聞クロスサーチ」でキーワード‟夜のプラットホーム 検閲”で検索。資料(6)が見つかる。
- 事前調査事項
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『空気の検閲: 大日本帝国の表現規制』( 辻田 真佐憲/著 光文社 2018.3)には「夜のプラットホーム」については載っていなかった
- NDC
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- 声楽 (767 9版)
- 日本史 (210 9版)
- 参考資料
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- 当館書誌ID <0000305946> ぼくの音楽人生 -エピソードでつづる和製ジャズ・ソング史- 服部 良一/著 日本文芸社 1993.3 9784537023459 資料(1)
- 当館書誌ID <0010557035> 上海ブギウギ1945 -服部良一の冒険- 上田 賢一/著 音楽之友社 2003.7 9784276211285 資料(2)
- 当館書誌ID <0000853467> 現代風俗史年表 :増補2版 -昭和20年(1945)→平成12年(2000)- 世相風俗観察会/編 河出書房新社 2001.2 9784309242415 資料(3)
- 当館書誌ID <0000173160> ブルースの女王淡谷のり子 吉武 輝子/著 文芸春秋 1989.12 9784163439501 資料(4)
- 当館書誌ID <0080101253> 朝日新聞縮刷版 1968年3月号 朝日新聞社 1968 資料(6)
- 当館書誌ID <0000772787> 機関紙の歴史 戦後編 林 直道/監修 日本機関紙出版センター 1999.12 9784889008203 資料(8)
- 国立国会図書館デジタルコレクション『東京のうた : その心をもとめて』(朝日新聞社 1968) https://dl.ndl.go.jp/pid/2517603/1/123 (2023.10.24確認) 資料(5)
- 国立国会図書館デジタルコレクション『月刊保団連 (190)』 (全国保険医団体連合会 1983-11) https://dl.ndl.go.jp/pid/1848835/1/42 (2023.10.24確認) 資料(7)
- キーワード
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- 夜のプラットホーム
- 服部良一
- 淡谷のり子
- 検閲
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- その他
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000326572