レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2022/11/27
- 登録日時
- 2023/10/08 00:30
- 更新日時
- 2023/10/08 10:23
- 管理番号
- 0000001543
- 質問
-
解決
石川県の天然砥石の産地について調べていただきたい。今のところ金沢市の倉谷、熊走、二又新町と 山中温泉坂下町、白山市河原山町、津幡町瓜生の6か所が判明していますが、能登半島は産地が一つも見つかっていません。明治期の郡村史や産物志などのほか、昭和初期の町村史が調査に有望かと思います。
- 回答
-
1.石川県全体の石材の産地について
○ 『石川県史 第5編 風土誌』 第2章自然 第3節鉱物 の記述が参考になると思われます。有用土石、非金属鉱物、鉱山 に分けて詳しく記述があり、有用土石の中の石材は、地域別に石の名前と産地、性質、特徴などが書かれています。
○ 『石川県史 現代篇2』 第3篇経済篇 第4章鉱業 に、鉱産物の現況の記述、鉱山分布図、および石材の名称・産地・用途・年産量が表になって掲載されています。
※『石川県史 第5編 風土誌』(1933年刊行)および『石川県史 現代篇2』(1963年刊行)は、国立国会図書館デジタルコレクションにインターネット公開されています。https://dl.ndl.go.jp/ どちらも国立国会図書館デジタルコレクションデジタル化送信サービス参加館にて閲覧可能です。お近くの同サービス参加館へお問い合わせください。
2.能登地方の石材の産地について
○ 『加能郷土辞彙』の項目「舐石(ねぶりいし)」に以下の記述があります。
能登には左岸凝灰石・凝灰砂岩の累層を被覆して、砂・年度・轢等から成る若き地層がある。この層の年度は瓦の材料となるものであるが、他に屡黒曜石標の玻璃質の岩塊を含み、これが風化し粘土化する時、その残骸を留めて、結核様の外観を呈する。それを舐り石といい、粘土中にその多数を含むことがある。珠洲郡小木・上戸・石坂・平床の仏体石、鹿島郡能登島の布袋石はこれである。
「舐石」を広辞苑などの大きな国語辞典で引いてみましたが、出ていませんでした。
また、ここに出てくる小木石については回答資料『小木石』に詳しく書かれています。
※『加能郷土辞彙』は、国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/ ログインなしで閲覧可能資料です。ご自宅のパソコンから紙面を見ていただけます。
○ 『能登 自然・文化・社会』 第1篇第3章中世・近世における能登 2.3生産と労働における能登型 に以下の記述があります。
先づ、近世能登の生産物を文政元年の「諸産物盛衰書申帳」(宇ノ気町・林広子家文書)より拾ってみると次のごとくである。
奥郡の部では、(略)鉱産物として小木村、輪島埼村等の切石、(略)
口郡の部では、(略)鉱産物とし瓜生村の砥石、宝達村の金山、(略)
3.加賀地方の石材の産地について
○ 加賀市片山津温泉が砥石の産地であったようです。
『石川県の地名』の「片山津玉造遺跡」の項目に以下の記述があります。
…当遺跡で製作された碧玉(緑色凝灰岩)製の玉類や石製品には、(略)ほかに砥石・たがね・錐形鉄製品など工作具とみられるものが多数の古式土師器とともに出土している。(以下略)
○ 『加賀市史 通史 上巻』の第2編原始・古代 第3章江渟国 第1節 片山津の玉造 その他の石製石など の項に以下の記述があります。
…次に、玉生産の工具として欠くことができぬものに砥石と叩石がある。叩石は手頃な河原石などを用いたのであろう。叩石の石質には、粉岩(ふんがん)、凝灰岩、粘土岩、硬質砂岩(こうしつさがん)、砂岩などがあるが、大半は砂岩質である。種類には、玉類の外面を磨くものとして、平砥石・筋砥石・板砥石・角砥石などがあり、内側湾曲部を磨く内磨砥石としては棒砥石がある。(以下略)
○ 「加南地方史研究」第3号掲載の論文「砥石について」は、以下の柴山潟周辺地域の砥石を扱っています。
柴山出村遺跡、片山津町本町管玉製造址、片山津町新堀川遺跡、橋立町大野山
○ 『角川日本地名大辞典:石川県』 の「風谷(山中町)」中の「[近世]風谷村」に以下の記述があります。
…なお江戸期の特産物には荒砥石があった(笈憩紀聞)。
○ 『石川県の地名』の「上林村(かんばやしむら)」(石川郡野々市町 現石川県野々市市)の項目に以下の記述があります。
…複合集落遺跡の上林遺跡は、昭和四九年(一九七四)加賀産業開発道路建設に伴う発掘で、弥生初期の柴山出村式土器・石器一括と平安後期の土器類・石帯・フイゴ羽口・砥石・土錘などを出土。
4.金沢市については市の図書館が回答済とのことで、省略いたします。
5.その他
○ 『石川県の地名』と『角川日本地名大辞典: 石川県』にはここで述べた地域以外にも、砥石についての記述がある可能性がありますが、合理的調査の観点から、当館ではこの2冊の全ての記述に目を通すことは不可能です。
○ 『石川県史資料 近代篇』に「皇国地誌」の掲載があります。各村の「物産」の記述(品名 とれ高)が参考になるかと思われます。
- 回答プロセス
-
①shosho で「砥石」検索→ 加南地方史研究(通巻3号) に「砥石について」という論文を発見、現物確認
②上記で片山津の玉造遺跡から砥石が出土したことが判明
③レファレンス協同DBで他館事例を閲覧
- 事前調査事項
- NDC
-
- 化学工業 (57 9版)
- 機械工学.原子力工学 (53)
- 参考資料
-
- 1 石川県史 第5編 石川県∥編 石川県図書館協会 1974 K209/24/5 325-379 第2章自然 第3節鉱物
-
2 石川県史 現代篇 2 石川県∥編 石川県 1963 K209/1/2 147-197 第3篇経済篇 第4章鉱業 -
3 加能郷土辞彙 改訂増補 日置 謙∥編 北国新聞社 1979.6 K030/1 648 舐石 -
4 小木石 小木公民館∥編集 小木公民館 2020.3 K458/1005 -
5 能登 九学会連合能登調査委員会∥編 平凡社 1955 K210/3 86 第1篇第3章中世・近世における能登 2.3生産と労働における能登型 -
6 石川県の地名 平凡社∥[編] 平凡社 1991.9 K290.3/309 130、290 片山津玉造遺跡 上林遺跡 -
7 加賀市史 通史 上巻 加賀市史編纂委員会∥編 加賀市 1978 K228/10/5 218-219 第2編原始・古代 第3章江渟国 第1節 片山津の玉造 その他の石製石など -
8 加南地方史研究 / 加南地方史研究会 [編] 通巻3号 加南地方史研究会 加南地方史研究会 1955- 郷土雑誌/K206/カナ 4-6 「砥石について」中口裕 -
9 角川日本地名大辞典 17 「角川日本地名大辞典」編纂委員会∥編 角川書店 1981.7 K290.3/228 252 風谷(山中町) -
10 石川県江沼郡誌 石川県江沼郡役所∥編 加賀市教育委員会 1971 K227/1 344-345 [三州奇談]砥蔵の霊風 -
11 石川県史資料 近代篇1 石川県∥編 石川県 1974 K209/26/1-1
- キーワード
-
- 砥石
- 天然砥石
- 舐石
- 覗石(のぞきいし)
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000339508