レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2023年05月12日
- 登録日時
- 2023/06/02 09:25
- 更新日時
- 2023/06/19 21:20
- 管理番号
- 県立長野-23-033
- 質問
-
解決
長野県諏訪の周辺から東京の大森への出稼ぎに来ていた人たちについて知りたい。特に、海苔問屋に来ていたらしい。
- 回答
-
利用者調査済みの『海苔の歴史』 宮下章著 全国海苔問屋協同組合連合会 1970【667/9】に詳しく書かれている。p.234-246に、海苔の振り売りや大森の海苔仲買商についての記述があり、さらにp.681-731に「諏訪乾海苔商団御湯花講」の章が設けられている。
また、『御湯花講(おゆばなこう)由来』宮下章著 御湯花講 1978【N672/6】に、大森への出稼ぎ人の多くは諏訪からだったことが書かれている。[国立国会図書館デジタルコレクションで図書館送信参加館・個人送信公開 最終確認2023.6.7]
諏訪地域の郡誌『諏訪史 第4巻』にあたる『諏訪の近世史』諏訪教育会編・刊 1966 【N241/6/4】に、農閑期である冬季の農民の出稼ぎ先として、p.624に「海苔屋」の項目があり、出稼ぎの状況やその後に設立された信濃出身者による海苔業者の組合「御湯花講」についても触れている。[国立国会図書館デジタルコレクションで図書館送信参加館・個人送信公開 最終確認2023.6.7]
『諏訪市史 中巻 近世』 諏訪市史編纂委員会編 諏訪市 1988 【N241/69/2】のp.556-558の「年季稼と半期稼」に記述がある。これらの出稼ぎ(作間稼ぎ)は、江戸後期に藩から許可されるようになったため、江戸前期にはなかった模様。「御湯花講」の講員で出身地域をみると、「西山方面(諏訪市湖南)と、山浦方面(茅野市)の村々に多かった。」とある。
『湖南村誌』 湖南村誌編纂委員会編・刊 2017【N241/240】p.149「海苔屋出稼ぎ」に、記述がある。また、p.223-228に、「御湯花講」の記述があり、結成から近・現代までの動向が記されている。出稼ぎの制約が無くなった明治期だが、御湯花講の講員が減少したことが書かれている。
『豊田村誌 下巻』 豊田村誌編纂委員会編・刊 2013【N241/203/2】p.168-170の「出稼ぎと奉公」「海苔屋奉公」に、記述があり。また、p.223-228に、「御湯花講」の記述があり、結成から近・現代までの動向が記されている。出稼ぎの制約が無くなった明治期だったが、御湯花講の講員が減少した記述がある。また、時代が下がって「乾海苔の需要も食生活の変化とともに増加し、大正末期から昭和初期の不況時代には出稼ぎの全盛期となり多数の人が出かけた」との記述もあった。
『中洲村誌』細野正夫, 今井広亀著 中洲公民館 1985【N241/126】p.520-527の「出稼ぎ」「海苔屋」「諏訪明神と湯花講」「湯花講の発足」に、記述がある。また、p.223-228に「御湯花講」の記述があった。
『原村誌 下巻』原村役場編 原村 1993【N241/109/2】p.419-420に海苔屋に出稼ぎをしていた旨の記述がある。[国立国会図書館デジタルコレクションで図書館送信参加館・個人送信公開 最終確認2023.6.7]
『茅野市史 中巻』茅野市編・刊 1987【N241/111/2】の江戸期の出稼ぎについて書かれた節のp.842-844に「海苔稼ぎ」がある。海苔稼ぎで全国的な活動をした人物についての記述、御湯花講についても記されている。[国立国会図書館デジタルコレクションで図書館送信参加館・個人送信公開 最終確認2023.6.7]
上記の市町村の誌史には、江戸期の出稼ぎの記述は多く見られるが、明治期に入ると諏訪地域に地場産業(製糸)が発達したことから、これらの記述が中心となり、地域を離れての就労である出稼ぎについての記述は見られなくなっている。
『御湯花講由来』は、諏訪の出稼ぎの状況、ノリ屋出稼ぎ、御湯花講の結成、明治期の出稼ぎ、戦前戦後の諏訪商人などについて書かれており、上記各地域の誌史類の記述もこの資料を参考文献に挙げているものが多く見られる。また、巻末資料として、文書等の翻刻が掲載されている。
- 回答プロセス
-
1 利用者調査済資料の『海苔の歴史』を確認する。江戸期の海苔の生産地、問屋などの変遷が書かれている中に、信州からの出稼ぎ者についての記述があった。諏訪地域からの出稼ぎが多いことがわかった。「諏訪乾海苔商団御湯花講」の章があり、出典として『御湯花講由来』が紹介されていたため、所蔵と内容を確認する。
2 諏訪地域の郡誌『諏訪史 第4巻』にあたる『諏訪の近世史』を確認する。
3 「長野県市町村誌目次情報データベース」 で諏訪地域の市町村史誌の目次から「出稼ぎ」や「海苔」を含むものを検索し、内容を確認する。[最終確認2023.6.12]
4 3で調べた資料から、特に旧村名が上がっていた地域の区誌を調べる。3の資料も、4の資料も、『海苔の歴史』や『御湯花講(おゆばなこう)由来』を参考にしているものが多かった。
5 県内で他地域からの出稼ぎもあったかもしれないので、『長野県史 通史編 第6巻近世3』を調べたが、諏訪地域が中心だったようだ。
<調査資料>
・『長野県史 通史編 第6巻近世3』 長野県編 長野県史刊行会 1989【N209/11/-4】
江戸後期の商圏の広がりを扱う節で、p.364-367「江戸売りと旅師」に海苔稼ぎについての記述がある。
・『諏訪史 第5巻』諏訪教育会編・刊 1986 【N241/6/5】
近代史を扱う巻で、出稼ぎについての記載は、諏訪で製造して行商する鋸商の記述があったが、海苔屋への出稼ぎの記述は確認できなかった。
・『山国からやってきた海苔商人』島利栄子著 郷土出版社 1991 【N960/268】
- 事前調査事項
-
『海苔の歴史』 宮下章著 全国海苔問屋協同組合連合会 1970
- NDC
-
- 水産製造.水産食品 (667)
- 商業史.事情 (672 10版)
- 中部地方 (215)
- 参考資料
-
-
宮下章 著 , 宮下, 章, 1922-2002. 御湯花講由来 : 諏訪海苔商団二百年史. 御湯花講, 1978.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001379965-00 (【N672/6】) -
宮下章/著 , 宮下 章 , 宮下 章. 海苔の歴史. 1970-00.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I058996305-00 (【667/9】) -
諏訪教育会/編 , 諏訪教育会. 諏訪史 第4巻. 諏訪教育会, 1966-03.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I059276695-00 (【N241/6/4】) -
諏訪市史編纂委員会/編 , 諏訪市史編纂委員会. 諏訪市史 : 近世 中巻 . 諏訪市, 1988-00.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I059104774-00 (【N241/69/2】)
-
宮下章 著 , 宮下, 章, 1922-2002. 御湯花講由来 : 諏訪海苔商団二百年史. 御湯花講, 1978.
- キーワード
-
- 出稼ぎ
- 作間稼ぎ
- 海苔問屋
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介 事実調査
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000334088