レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 登録日時
- 2020/06/15 14:01
- 更新日時
- 2020/06/24 16:11
- 管理番号
- O19-001
- 質問
-
1941~2年頃にフィリピンに設けられた日本の百貨店の支店について調べている。
『服装文化』第6巻6号(1943年6月発行、文化服装学院出版部)に載っている情報で、
大日本婦人会本部生活部長の土佐林テルという女性が「標準服展示会に出席して」という
講演録の中で以下のような言及をしている。
「ある百貨店がフィリッピンに支店を設けましたので、そこで働くために内地から四五十人の
婦人を呼び寄せたのだそうで・・・その百貨店の社長さんも日本のやさしい娘たちにあこがれて、
楽しみに待ちこがれておられたらしいのです。ところがいよいよ待望の船が着いて、
やがて姿を現した娘達を見ると、頬を赤く染めて髪はもしゃもしゃ、
スカートの短い洋装で練馬大根みたいな足・・・」(10)
ここで言及されている百貨店の「フィリッピンの支店」というのが、
どこにあるどの百貨店の支店なのかを確認したい。
- 回答
-
1. 本学RUNNERS OPACでキーワード「フィリピン 百貨店」で検索するが、ヒットなし。
同じくRUNNERS OPACで「百貨店 歴史」で検索したところ以下の資料があったが、
フィリピン支店についての記載はなかった。
(1)『百貨店の生成過程』藤岡里圭著, 有斐閣, 2006.3(大阪経済大学研究叢書 ; 第53冊)
(本学書誌ID:TT41686845)
(2)『日本百貨店業成立史 : 企業家の革新と経営組織の確立』末田智樹著, ミネルヴァ書房, 2010.4
(MINERVA現代経営学叢書 ; 41) (本学書誌ID:TT41868905)
2. 本学RUNNERS OPACでキーワード「比律賓」で検索したところ、以下の資料がヒットした。
『比律賓の資源と貿易』(資料番号:03110854880)
こちらの資料には、フィリピンにあった商業施設の具体的な店名の記載があった。
3. 国立国会図書館デジタルコレクションでキーワード「比律賓 年鑑」で検索したところ以下2件の資料がヒットした。
(1)『亜細亜年鑑 : 南洋版. 昭和16年版』
URL:http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1744433
※国立国会図書館デジタル資料(図書館送信参加館限定)
こちらの資料にも、当時フィリピンにあった百貨店の具体的な店名の記載があった。
(2)『比律賓年鑑』大谷純一 編,田中印刷出版
URL:http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1109517
※昭和12年度~昭和16年度版までが国立国会図書館デジタル資料で確認可能(図書館送信参加館限定)
当時の在留邦人の状況等が記載されていた(上のリンクは昭和16年度版)。
4. 国立国会図書館デジタルコレクションでキーワード「百貨店 労働統計」(出版年:1940~1949で絞込み)で
検索したところ以下1件がヒットした。
(1)『大阪商工会議所月報』
URL:http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1534931?tocOpened=1
※国立国会図書館デジタル資料/図書館送信参加館限定
上記4月號(431)の「南方關係文献目錄」に「フィリッピン」の項目があり、そこに以下の資料名があった。
(2)『比律賓在留邦人商業発達史』1935年
URL:http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1235937
※国立国会図書館デジタル資料(図書館送信参加館限定)
在比日本企業の企業情報掲載あり。
(2)の出版社である「南洋協会」に関連する資料として国立国会図書館デジタルコレクションで
キーワード「南洋協会 比律賓」で検索したところ、以下1件がヒットした。
(3) 『大南洋圏』南洋協会 編,昭和16
URL:http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1044057
※インターネット公開
p.444にマニラ市中にあった百貨店について以下の記載があった。
「市中にはマニラ銀座と云はれるエスコルタ街のニッポン・バザー、イデアル・バザー等の二大百貨店を
はじめ三十餘軒の日本人商店があつて何れも日本製品を取り扱つてゐる。」
※ニッポン・バザーとイデアルバザーについては、上記資料(2)のp.128およびp.138に店主名や創業年等
の記載あり。
なお、これらの百貨店が日本人の従業員を呼び寄せていたかについては各資料に特に記載がなく事実関係は不明であった。
- 回答プロセス
-
1. 『服装文化』について
本学OPACで検索したが、所蔵がなかった。
国立国会図書館デジタルコレクションで検索したが、公開されているデータはなかった。
CiNii Booksで検索したところ、ヒットがあった(NCID:AN1019076X)。所蔵館4館(うち該当巻号所蔵館2館)
2. 関連文献の調査
(1) 本学OPACでキーワード「フィリピン△百貨店」で検索したが、ヒットがなかった。
(2) 本学OPACでキーワード「百貨店△歴史」で検索したところ、以下の資料があった。
・『百貨店の生成過程』藤岡里圭著, 有斐閣, 2006.3(大阪経済大学研究叢書 ; 第53冊)
・『日本百貨店業成立史 : 企業家の革新と経営組織の確立』末田智樹著, ミネルヴァ書房, 2010.4
(MINERVA現代経営学叢書 ; 41)
内容を確認したが、特にそれらしき記載はなかった。
(3) 本学OPACでキーワード「比律賓」で検索したところ、以下の資料があった。
・『比律賓の資源と貿易』日本貿易振興協會,1942.11(調査彙報 / 日本貿易振興協会 [編] ; 第9輯)
こちらの資料のp251に「商業」の項目があり、そこに具体的な店名が書かれていた(「日本バザー」、
「大阪商店」など)
・『比律賓統計書』法貴三郎[ほか]共編,国際日本協会,1942.4(本学書誌ID:TT40418005)
(4) CiNii Articlesでキーワード「百貨店△フィリピン」で検索
1件ヒットするが、関係する資料のヒットはなかった。
(5) 国立国会図書館デジタルコレクションでキーワード「比律賓△年鑑」で検索
・『亜細亜年鑑 : 南洋版. 昭和16年版』という資料がヒット。この中の「比律賔群島」(p140~)に、
「DEPARTMENT STORES」という項目があった。その中の店名に「日本バザー」というものがあった。
・『比律賓年鑑』大谷純一 編,田中印刷出版
当時の在留邦人の状況等が記載されていた。
(6) 国立国会図書館デジタルコレクションでキーワード「百貨店△労働統計」で検索
・『大阪商工会議所月報』がヒット。
この中の4月號(431)の「南方關係文献目錄」に「フィリッピン」の項目があり、そこに以下資料名があった。
・『比律賓在留邦人商業発達史』1935年
在比日本企業の企業情報が確認できる。
この資料の出版社である「南洋協会」に関連する資料として国立国会図書館デジタルコレクションで
キーワード「南洋協会 比律賓」で検索したところ、下記の資料があった。
・『大南洋圏』南洋協会 編,昭和16
この資料のp.444にマニラ市中にあった百貨店についての記載があった。
「市中にはマニラ銀座と云はれるエスコルタ街のニッポン・バザー、イデアル・バザー等の二大百貨店を
はじめ三十餘軒の日本人商店があつて何れも日本製品を取り扱つてゐる。」
ニッポン・バザーとイデアルバザーについては、上記資料5)のp.128およびp.138に店主名や創業年等の
情報が書かれている。なお、これらの百貨店が日本人の従業員を呼び寄せていたかについては、それぞれの
資料には特に記載がなく事実関係はわからなかった。
(7) 国立国会図書館デジタルコレクションでキーワード「日本バザー」で検索
・『歩いて来た道 : ヒリッピン物語』金ケ江清太郎, 国政社, 1968
この資料中に「日本バザー」で働いていたという表記があった(第三章 日本バザーの小僧時代/p49~)
なお、この項目は大正時代の記録となっている。
NDLサーチで「日本バザー」で検索したが、ヒットは2件。うち1件は上記資料。
(8) 本学契約の新聞記事データベース聞蔵Ⅱビジュアル、ヨミサス歴史館、毎索、日経テレコン21で検索
東南アジアへの百貨店の進出自体は記事として出ているが、フィリピンについての記事は見当たらなかった。
「日本バザー」など店名での検索では広告記事のヒットが多く、
スタッフに関わる内容の記事は見つからなかった。
(9)Google Scholarでキーワード「比律賓 日本バザー」で検索したところ、下記の論文が見つかった
・「戦前日本企業のフィリピン進出とダバオへのマニラ麻事業進出の歴史と戦略」丹野勲,
『神奈川大学国際経営論集』(50), 33-58, 2015-11
・「近代大衆消費社会出現の一考察―アメリカ植民支配下のフィリピンと日本商店・商品―」早瀬晋三,
『人文学報』(91), 141-170, 2004
3. 百貨店の言い換えについて
調査中、フィリピンに展開していた日本の商店として、「日本バザー」「大阪バザー」等の名称が見られた。
これらの店舗が百貨店にあたるものかどうかを確認するため、本学契約データベースJapanKnowledgeにて
検索を行った。
キーワード「バザー」で検索したところ、そこに「バザールと同意」との記載があったため、キーワード
「バザール」で再度検索を行った。
「2 デパート・大商店などの特売会。また、特設売り場。(デジタル大辞泉,JapanKnowledge,2019/4/25確認)」
とあった。
以上
- 事前調査事項
-
"講演録「標準服展示会に出席して」『服装文化』第6巻6号(1943年6月発行、文化服装学院出版部)
国立国会図書館サーチ、聞蔵Ⅱビジュアル、ヨミダス歴史館"
- NDC
- 参考資料
-
-
川端 基夫「戦前・戦中期における百貨店の海外進出とその要因」『龍谷大学経営学論集』49(1), 1-22, 2009-06
https://opac.ryukoku.ac.jp/webopac/TD00079007(最終アクセス:2020年4月25日) -
丹野 勲「戦前日本企業のフィリピン進出とダバオへのマニラ麻事業進出の歴史と戦略」『神奈川大学国際経営論集』(50), 33-58, 2015-11
http://hdl.handle.net/10487/13347(最終アクセス:2020年4月25日) - 『比律賓統計書』法貴三郎[ほか]共編,国際日本協会,1942.4(本学書誌ID:TT40418005)
-
『比律賓情報』比律賓協会
URL:http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1614883?tocOpened=1(最終アクセス:2020年4月25日)
※1938~1945年発行のものが国立国会図書館デジタル資料(図書館送信参加館限定)で確認可能。 -
『アジア資料通報』26(3),1988
URL:http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/7960198(最終アクセス:2020年4月25日)
p27-40に「南洋関係諸団体刊行物目録-6-比律賓協会 / 吉久明宏」という項目があり、資料が紹介されている。(国立国会図書館デジタル資料/図書館送信参加館限定) -
『比律賓華僑信用録』渡辺薫, 松屋太市 共編,昭和7年
URL:http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1036192(最終アクセス:2020年4月25日)
(国立国会図書館デジタル資料/図書館送信参加館限定)
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川端 基夫「戦前・戦中期における百貨店の海外進出とその要因」『龍谷大学経営学論集』49(1), 1-22, 2009-06
- キーワード
-
- 百貨店
- デパート
- 呉服店
- フィリピン
- フィリッピン
- 比律賓
- 比利賓
- 比島
- 比国
- 歴史
- 派遣
- 海外
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 質問者区分
- 教員
- 登録番号
- 1000283152