レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2018年05月21日
- 登録日時
- 2019/03/12 15:38
- 更新日時
- 2019/04/02 13:11
- 管理番号
- O18-002
- 質問
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未解決
京浜工業地帯の「工場街」で一斉に「パーマネント嬢お断り」の声明を出したと新聞記事にあるが、本当かどうか確かめたい。
またこれらの工場では労働能率統計が取られており、パーマをかけた女性がトイレに行く回数が多い、ということが言及されているが、
そのような統計はあるか。日本鋼管や川崎電話交換局などの具体名が記事の中にはある。
出典は以下2点。
・読売新聞「話の港」1938年12月14日
・朝日新聞「進め精動③殷賑工場街の光と影」1939年5月10日
- 回答
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該当する声明は見つからなかった。
また労働能率統計のようなものについても、京浜工業地帯の工場の物は見つからなかった。
調査過程でみつかった資料として、以下を案内した。
資料1)商工省生産管理委員会(1938)『工場ニ於ケル戦時対策(女工ノ使用 ; 交替制度)』 日本工業協會(本学書誌ID:TT40268310)
当時の商工省が発行した資料で、p.13に「(エ)作業用服装」として女工の勤務中の服装などが図とともに説明されているが、頭髪に関しては「髪の毛を引き締めて頭を蔽う柔らかな布製の帽子を必要とする」とのみ記載されていた。
またこの資料には、女工の作業成績の調査結果が記載されている(p.14)。
資料2)八幡製鉄所庶務部(1923)『製鉄所職工福利増進施設』[八幡] : 製鉄所庶務部(本学書誌ID:TT40434071)
八幡製鉄所の資料で、京浜工業地帯とは異なるが、当時、機関紙の製鉄所時報くろがね(くろかね)が発行されていたことが記載されていた。
資料3)日本銀行調査局「労働統計概要ト労働及賃金指数」『労働統計小報. 第三(1924.11-1930.5)』(国立国会図書館デジタルコレクション一般公開)(最終確認日:2019年3月7日)
国立国会図書館デジタルコレクションで 「工場労働統計」で検索し、1930-1939年に年代を限定したところ、31件の資料がヒットした。
八幡製鉄所の工場労働統計表がいくつか見受けられるが、このうちの「第二 勞働指數ノ性質竝ニ作成方法」という資料に、当時の労働指数についての計算方法が記載されていた。
また国立国会図書館への参考調査依頼の結果、以下の資料を案内いただいたため、利用者に紹介した。
資料4)「戦時下における婦人労働者の状態(二) 京浜間某巨大機械工場に於ける実情」『京浜工業時報』 6(13):1939.10. pp.12-14, 37 (NDL請求記号:Z3-2768)
パーマネントに関する記載はないが、京浜工業地帯の男女の能率比較に関するデータが掲載されている。
pp.12-13に、「男子との能率対比」として、婦人労働者の職種別の男子との能率比較や熟練期間について記載がある。
※国立国会図書館からの回答は以下のページで詳細が公開されている。(最終確認日:2019年3月7日)
https://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=ref_view&id=1000237938
- 回答プロセス
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1.本学契約データベース「ヨミダス歴史館」で、該当の記事を確認した。
・「『パーマネントウエヴ嬢お断り』の声明を出した」(読売新聞「話の港」1938年12月14日朝刊7ページ)
・「女工はパーマネントをかけて映画に通ふし」(朝日新聞「殷賑工場街の”光と影”愛国貯金もグンと増したが遊興額も事変前の倍」1939年5月10日東京朝刊11ページ)
2.1939年前後の新聞に「パーマネント」の女性に関する記事がないか、本学契約データベース「ヨミダス歴史館」「聞蔵Ⅱビジュアル」「毎索」にて「女工 パーマ」をキーワードに検索したが、問合せ内容に合致する内容の記事はみつからなかった。
3.本学所蔵の下記資料を確認したが、声明に関する事項については記載は無かった。
商工省生産管理委員会(1938)『工場ニ於ケル戦時対策(女工ノ使用 ; 交替制度)』 日本工業協會(TT40268310)
八幡製鉄所庶務部(1923)『製鉄所職工福利増進施設』[八幡] : 製鉄所庶務部(TT40434071)
鈴木裕子(1989)『女工と労働争議:1930年洋モス争議』れんが書房新社(TT40126344)
帯刀貞代(1980)『日本労働婦人問題』ドメス出版(TT40413098)
新聞広告奨励会編纂『新聞広告総覧(復刻版)』ゆまに書房(TT41606911)
4.1930年代の工場労働および女工に関する資料を調査したところ、女工の服装に関する資料1)および八幡製鉄所の機関誌の記載がある資料2)があった。
5.「国立国会図書館デジタルコレクション」で「女工 パーマ」で検索したが、声明についての資料はなかった。
日本鋼管(1942)『日本鋼管株式会社三十年史』(000000680092)
川崎図書館(1961)『京浜工業地帯 (京浜産業史講座 ; 第1-4集)』(000001067503)
日本銀行調査局『労働統計概要ト労働及賃金指数―労働統計小報. 第三(1924.11-1930.5)』(000001695899)
6.「国立国会図書館デジタルコレクション」で工場労働に関する資料を検索したところ、八幡製鉄所のものではあったが資料3)に労働統計が見受けられた。
7.声明を出した旨の記事に明記されていた日本鋼管(現在のJFEエンジニアリング)について本学所蔵の社史を確認したが、該当する声明文についての記載はなかった。
日本鋼管本社労働組合編(1976)『あゆみ : 本社労働30年史』(TT90991202)
今泉嘉一郎(1933 )『日本鋼管株式会社創業二十年回顧録』(TT40258621)
日本鋼管株式会社社史編纂委員会編(1952)『日本鋼管株式会社四十年史』(TT90991212)
日本鋼管株式会社50年史編纂委員会編(1962)『五十年史』(TT90991214)
日本鋼管株式会社編(1982)『日本鋼管株式会社七十年史』(TT40383863)
6. 日本鋼管の営業報告書を本学契約データベース「企業史料統合データベース」で本文を確認したが、声明については記載がなかった。
<企業史料統合データベース>
「日本鋼管」営業報告書(昭和12年、昭和13年)
7. 声明を出した旨の記事に明記されていた日本鋼管(現在のJFEエンジニアリング)へ当時の資料が残っていないか調査を依頼したが、広報のご担当者からは該当する資料はなかったと回答があった。
8.神奈川県立川崎図書館に関連資料を所蔵されていないか調査を依頼したが、声明文および労働統計は所蔵されていなかった。
9.国立国会図書館へ参考調査を依頼したが、該当する声明文、労働統計は見つからなかった。
参考として、パーマネントに関する記載は無いが、京浜工業地帯の男女の能率比較に関するデータが掲載されている資料をご紹介いただいた。
<NDL紹介資料>
戦時下における婦人労働者の状態(二) 京浜間某巨大機械工場に於ける実情. 京浜工業時報. 6(13):1939.10. pp.12-14, 37 (NDL請求記号:Z3-2768)
- 事前調査事項
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読売新聞「話の港」1938年12月14日
朝日新聞「進め精動③殷賑工場街の光と影」1939年5月10日
- NDC
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- 社会 (36)
- 家族問題.男性.女性問題.老人問題 (367)
- 参考資料
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- 商工省生産管理委員会(1938)『工場ニ於ケル戦時対策(女工ノ使用 ; 交替制度)』 日本工業協會(本学書誌ID:TT40268310)
- 八幡製鉄所庶務部(1923)『製鉄所職工福利増進施設』[八幡] : 製鉄所庶務部(本学書誌ID:IDTT40434071)
- 日本銀行調査局『労働統計概要ト労働及賃金指数―労働統計小報. 第三(1924.11-1930.5)』(国立国会図書館オンライン書誌ID:000001695899)
- 戦時下における婦人労働者の状態(二) 京浜間某巨大機械工場に於ける実情. 京浜工業時報. 6(13):1939.10. pp.12-14, 37 (NDL請求記号:Z3-2768)
- キーワード
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- 女工
- 京浜工業地帯
- 工場
- 労働統計
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介 事実調査
- 内容種別
- 質問者区分
- 教員
- 登録番号
- 1000252920