レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 20211020
- 登録日時
- 2021/12/17 00:30
- 更新日時
- 2021/12/17 12:52
- 管理番号
- 中央-2021-31
- 質問
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解決
(中学生からの質問)雅楽器の笙(しょう)の作り方が知りたい。特に、竹管の窓孔の位置と長さが知りたい。
- 回答
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都立図書館蔵書検索でキーワード<雅楽><笙><和楽器>等で検索した。都立多摩図書館のこどものへや、青少年エリアで、笙について記載がある資料を調査した。
この結果、資料1と2に笙の作り方が掲載されていた。
また、上記で見出した資料を確認したところ、笙の竹管の窓孔は、「屏上(びょうじょう)」または「裏鋲錠(うらびょうじょう)」という名称であることが分かったので、<屏上><裏鋲錠>をキーワードに加えた。さらに、「CiNii Articles」(https://ci.nii.ac.jp/)と「Google」(https://www.google.com/)及び「Google ブックス」(https://books.google.co.jp/)で、<雅楽><笙><屏上><裏鋲錠>等を掛け合わせて検索した。この結果、資料3~8に竹管の屏上の位置と長さについての記載が見出せた。
「国立国会図書館デジタルコレクション」(https://dl.ndl.go.jp/)で資料2はインターネット公開、資料3は図書館送信されている。
(1)笙の作り方について
資料1 『音遊び図鑑 身近な材料で楽器を作ろう』
p.99-105「I 吹く 7.リードが自由に動いて振動するもの~笙属~」に、リード弁と笙の作り方が紹介されている。ただし、竹管の屏上の位置と長さについての記載はない。
資料2 『楽家録 1-10巻』
p.304-349「楽家録 巻之十 鳳笙」の章の第4から第21にかけ、笙の製作についての記載がある。このうち、「第十二 開屏上之法」(p.321-322)で屏上について記載しており、屏上の位置を示した図がある。資料の本文は漢文で書かれている。
(国立国会図書館デジタルコレクション インターネット公開 https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1125427)
(2)竹管の屏上の位置と長さについて
資料3 『日本の楽器 日本楽器事典』
p.170-185「第一部門 現在使用されている古典邦楽器 第二 管楽器 B 縦笛類 (4)笙」に、笙の構造や奏法、歴史などがまとまっている。「構造」の項目に、「それで管の途中には細長い長方形の窓が設けてある。これを屏上という。この屏上から根までの部分の管内空気が簧(した)の振動に共鳴して音を発するのである。従って各管に設けた屏上の位置とその長さは簧の振動数に応じて定められている。」(p.172)と記載がある。p.176-177には、笙の17本それぞれの管の長さ、根から屏上の下端までの距離、屏上の長さを示した表がある。
(国立国会図書館デジタルコレクション 国立国会図書館/図書館送信参加館内公開 https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2504929)
資料4 『雅楽事典』
p.111「楽器・奏法 笙」の項目に、「『楽家録』によれば、笙管の大小は定まらず、大は一尺五寸(四五・四センチ)、小は一尺二寸(三六・三センチ)。以上は九の管の長さで根継(ねつぎ)は除く。現行では全長(頭(かしら)も入れて)が四十七センチ前後のものが多い。」とある。
また、p.121「屏上」の項目に、「表面にある小孔を押さえて吹いた時に、簧より屏上までの長さで音高が決まる。屏上より管の上方は音を出す上で実際的機能は果たしていない。屏上は乞の管が簧より最も高い所に、千の管が最も低い位置にある。」と記載がある。
資料5 『日本伝統楽器小辞典』
p.161-166「しょう(笙)」の項目に、笙の構造や奏法についてまとまった記載がある。p.163に「竹管・笙の管の長さは匏の上面から計られ、機能的な管長は屏上の下端までで、「楽家録」によれば、乞管(下黄鐘)7寸2分(約21.8cm)、千管(上下無)1寸6分(約4.85cm)で、その間の各音の機能的管長は等差で定められる。」と記載がある。
資料6 『雅楽 伝統音楽への新しいアプローチ』
p.56 「第三章 楽器各論 第二節 笙 リードの製作」の項目の(8)に、「笙管に屏上を開ける位置を、そのリードのもっともよく鳴る位置をしらべて決める。屏上はもともと笙管を作る段階においてあらましの位置に開けられているが、これをさらにリードをつけて吹いてみた上で位置を調節する。穴の位置が高すぎる場合はさらに下に小さい孔をあけ(図13)、低すぎる場合は屏上の穴をロウで埋める(図14)。この屏上の位置によって事実上の管長がきまる。」と記載がある。p.55の図13と図14は竹管の屏上の位置を示したものだが、位置や長さ等の具体的な数字の記載はない。
資料7 『図解世界楽器大事典』
p.147「第4章 気鳴楽器 3 リード笛の系統 笙・鳳笙・莟笙」の項目に、「管の長さは音律に直接の関係はないが、長い管で五十四センチ内外である。」と記載がある。
資料8 『雅楽入門』
p.67-80「第三章 楽器について (三) 笙」の項目に、笙の構造や奏法についてまとまった記載がある。p.69に「(前略)実際はそれぞれの管の裏側に「屏上」という切れ目(スリット)が入れられており、この切れ目からリードまでの長さが実際に共鳴する管長となる(したがって外見の竹管の長さがそのまま音の高さに反映するとは限らない)。」と記載がある。
なお、資料1,2,3,5,8は都立中央図書館資料、資料6,7は都立多摩図書館資料である。
インターネット情報の最終アクセス日は2021年10月19日。
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
-
- 邦楽 (768 9版)
- 参考資料
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- 【資料1】音遊び図鑑 身近な材料で楽器を作ろう / 藤原義勝/著 / 東洋館出版社 / 1993.8 <3757/3063/93>
- 【資料2】楽家録 1-10巻 (日本古典全集) / 安倍季尚/編 / 羽塚啓明/校訂 / 日本古典全集刊行会 / 1935 <7682/A162/G1-1>
- 【資料3】日本の楽器 日本楽器事典 / 田辺尚雄/著 / 創思社出版 / 1964 <7681/47/64>
- 【資料4】雅楽事典 / 音楽之友社 / 1989.6 <R/7682/3001/98>
- 【資料5】日本伝統楽器小辞典 / 郡司すみ/編 / エイデル研究所 / 2006.1 <R/768.1/5033/2006>
- 【資料6】雅楽 伝統音楽への新しいアプローチ / 増本喜久子/著 / 音楽之友社 / 1979
- 【資料7】図解世界楽器大事典 / 黒沢隆朝/著 / 雄山閣 / 2019.7 <763.0/5053/2019>
- 【資料8】雅楽入門 (オルフェ・ライブラリー) / 新版 / 増本伎共子/著 / 音楽之友社 / 2010.5 <768.2/5004/2010>
- キーワード
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 質問者区分
- 小中学生
- 登録番号
- 1000309173