「しらふく」について調査したが、意味を特定する資料の発見には至らなかった。
調査結果は次のとおり。
1 「日本昔話通観 第21巻(徳島・香川)」(稲田浩二,小沢俊夫/編 武田明/第21巻の編集委員
同朋舎 1978年発行)以外の「爺と金蔵(原題・備前さまの金蔵)」を掲載する資料の調査
「日本昔話通観 第21巻(徳島・香川)」以外の資料に収録の「爺と金蔵(原題・備前さまの金蔵)」と、
該当箇所の比較をしようと収録資料を調査したところ、「候えばくばく-讃岐塩飽の昔話」(武田明/編
未来社 1965年発行)に、「ぜにぐらの話」という題名で収録されていた。
話のすじは同じあるが、「しらふくの爺」が「白髪のお婆さん」となっていた。
なお、この変化は話者が変わったことによるものと思われる。
「日本昔話通観 第21巻(徳島・香川)」に収録の「爺と金蔵」は、出典を「讃岐佐柳島・志々島昔話集」
(武田明/採録 柳田国男/編 三省堂 1944年発行)としており、それによれば話者は和田岩吉氏
(佐柳島長崎浦)で、昭和17(1942)年10月12日頃の採集となっている。
一方、「候えばくばく-讃岐塩飽の昔話」に収録の「ぜにぐらの話」の話者は、渡テル氏(佐柳島長崎)
で、昭和37(1962)年7月23日採集となっている。
2 方言辞典の調査
「しらふく」をはじめ、「日本昔話通観 第21巻(徳島・香川)」に掲載されている昔話の本文中には、
方言部分に傍点が付されている。
そこで、1の調査結果をふまえ、「しらふく」が「白髪」を意味する方言なのかどうか下記の方言辞典で
調査したが、掲載は無かった。
〔調査した方言辞典〕
「備讃解言 方言引」(十河直樹/著 岡山県方言研究会 2003年発行)
「備讃解言 標準語引」(十河直樹/著 岡山県方言研究会 2006年発行)
「香川県方言辞典」(近石泰秋/著 風間書房 1976年発行)
「瀬戸内海方言辞典」(藤原与一/著 東京堂出版 1988年発行)
「さぬきのおもしろ方言集-香川の方言辞典」(香川県方言研究同好会/編 松林社 1986年発行)