レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2006/03/11
- 登録日時
- 2006/03/31 02:11
- 更新日時
- 2006/03/31 02:11
- 管理番号
- C2006M0246-2
- 質問
-
解決
廃藩置県前後に洋学校等で使用されていた数学の教科書
- 回答
-
【 】内は当館請求記号です。
調査に当たっては、まず、数学の教育史という観点から当館の所蔵資料を調べました。
小倉金之助著の『数学史研究 第二輯』(岩波書店 昭和23 【410.2-O26ウ】)には、長崎海軍傅習所や沼津兵学校などにおける明治維新前後の数学教育に関する記述がありましたが、東京開成学校以外で使用されていた教科書の書名は見つかりませんでした。教科書として使われていたかどうかは定かではありませんが、同資料の176~178ページには、維新前に輸入された数学書の中で、著者に所在の判明している主な資料の一覧を記載していましたので、ご参考までに代表的なものをご紹介します。なお、()内の「山」は山本信実蔵書、「学」は帝国学士院蔵書、数字は各版の刊行年を示しているとのことです。
算術 Jacob de Gelder : Grondbeginselen der cijferkunst.(山 1793)
代数 J.Badon Ghijben en H.Strootman : Bebinselen der stelkunst.(学 1854)(学 1854)(小1840,1854)
幾何 J.Badon Ghijben : Beginselen der meetkunst(山 1852)(学1852)
また、『日本数学教育史 3』(風間書房 1985 【MA29-52】)のⅠ章では「学制公布までの藩学、郷校、私塾の状況」が書かれており、15ページには「加賀藩の藩学で使われていたと思われる書物の1部が現在の金沢泉丘高等学校の図書館に所蔵されている」ことが記されていました。同資料によれば、金沢泉丘高等学校は「善本」と称するコレクションを所蔵しており、その数は和漢書1051部、欧文書126部に上るとのことです。このうち数学関係のものは和漢書44部、欧文書7部の計51部ですが、廃藩置県後に出版されたと思われる資料も含まれており、どの資料が加賀藩の藩学で使われていたのかは特定できませんでした。
なお、当館所蔵の『金沢泉丘高等学校蔵善本解題目録』(石川県立金沢泉丘高等学校 1981 【UP72-37】)には、金沢泉丘高等学校が所蔵する善本のコレクションの解題等が記されていました。数学関係の資料に関しては、238~251ページに和漢書、357~358ページに欧文書についての記述があります。
『日本数学教育史 3』では、他に熊本藩の時習館や薩摩藩の造士館などについて触れていましたが、廃藩置県前後に洋学校などで使用されていた教科書の書名は見つかりませんでした。藩学ではありませんが、同資料5~8ページには金沢の算学塾に関する記述があり、塾を盛り立てた数学者関口開の著書や、原稿のままで出版されなかったものの、門人たちが転写して教科書としたとされる資料が記載されていました。これらの資料は廃藩置県よりも後に書かれたものがほとんどですが、ご参考までに、代表的なものをご紹介します。
関口開の著書
『数学稽古本』 明治3年
『数学問題集』 明治4年
原稿のままで出版されなかったものの、門人たちが転写して教科書としたとされる資料
『平三角』 1冊 明治4年
『測量』 2冊 明治5年
『答氏 幾何学』 5冊 明治9年―13年
なお、『数学問題集』は「チャンパー」の数学書を土台としており、『答氏 幾何学』の「答氏」とはトドハンターのことと記されています。
さらに、『数学教育史』(岩波書店 1973 【MA29-10】)の第5章には、「日本における封建末期の教育-主として寛政の頃より明治5年に至る-」が記述されていましたが、該当する教科書の書名に関する記述はありませんでした。
続いて、洋学の歴史という観点から当館の所蔵資料を調べました。
『幕末の洋学』(ミネルヴァ書房 1984 【M32-64】)199ページ~202ページには、福井藩の藩校である明道館における算学が取り上げられていました。教科書かどうかは確認できませんでしたが、同資料202ページには「福井県立図書館蔵の『明道館書目、信』には算科局御書籍目録が含まれている」という記述があり、これは大部分が伝統的な和算書で占められるものの、柳河春三の『洋算用法』(1857)やLoomisの『代微積拾級』(1859)も含まれている事が記されていました。
その他、次の資料を調べましたが、お探しの記述は見つかりませんでした。
『日本数学教育史』1,2,4(風間書房 【MA29-52】)
『数学教育史』(槙書店 1972 【FC88-100】)
『日本数学教育史』(明治図書出版 1978 【FC88-200】)
『現代数学教育史』(大日本図書 1957 【410.7-O321g】)
『数学教育史研究』1~4号(日本数学教育史学会 【Z74-C625】)
『日本洋学史 : 葡・羅・蘭・英・独・仏・露語の受容』(三修社 2004 【KE29-H23】)
『幕末洋学教育史研究 : 土佐藩「徳弘家資料」による実態分析』(高知市民図書館 2004 【M32-H14】)
『洋学の書誌的研究』(臨川書店 1998 【M32-G17】)
『幕末明治洋学史』(中谷一正 1978 【GB385-13】)
『幕末洋学史』(刀江書院 1950 【402.1059-N994b】)
『長崎洋学史』(長崎文献社 1983 【M32-68】) 『日本洋学史の研究』(創元社 1968 【402.105-A783n】)
『日本洋学史の研究』2~10(創元社 【402.105-A783n】)
なお、戦前の教科書を所蔵している機関には次のようなものがありますので、ご参考までにご紹介します。
教科書研究センター附属教科書図書館
〒135-0015 江東区千石1-9-28 03-5606-4314
http://www.textbook-rc.or.jp/library/
東書文庫
〒114-0005 北区栄町48-23 03-3927-3680
http://www.tosho-bunko.jp/
福岡教育大学附属図書館
〒811-4192 福岡県宗像市赤間文教町1番5号 0940-35-1258
http://www.fukuoka-edu.ac.jp/toshokan/index.html
広島大学図書館
〒739-8512 広島県東広島市鏡山一丁目2番2号 082-424-6214
http://www.lib.hiroshima-u.ac.jp/index.html
広島大学図書館所蔵教科書コレクションのURLはhttp://cross.lib.hiroshima-u.ac.jp/ です。
インターネットの最終アクセス日は2006年3月3日です。
- 回答プロセス
- 事前調査事項
-
・『明治の教育』(三秀舎印刷 1967)
・『東京大学百年史 通史』(東京大学 1984)
・『幕末教育史の研究』(吉川弘文館 1986)
・『日本新教育百年史 総説』(玉川大学出版部 1970)
- NDC
-
- 教育課程.学習指導.教科別教育 (375 9版)
- 参考資料
- キーワード
-
- 教科書-日本-歴史-明治時代
- 数学教育-日本-歴史-明治時代
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 質問者区分
- 大学図書館
- 登録番号
- 1000028178