レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2021年02月16日
- 登録日時
- 2022/12/07 22:52
- 更新日時
- 2023/02/27 21:04
- 管理番号
- 県立長野-22-162
- 質問
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解決
市町村議会の議員の兼業禁止規定抵触事例を知りたい。高知県馬路村で平成30年(2018年)3月6日に地方自治法の兼業禁止規定に抵触し議員が失職する事例があった。審議内容の詳細を知りたい。
また、類似事例はあるのか。
- 回答
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高知県馬路村議事録について案内した。
馬路村議会事務局に照会したところ、何らかの形で対応できるかもしれないので、依頼者から直接連絡が欲しいとのこと。
また、朝日新聞の記事より詳しい資料としては、「広報うまじ」第301号(平成30年6月1日発行)p.10-12に掲載されている「議会だより No.152」に記事がある。また、p.12には4月8日に行われた補欠選挙で、当該議員が当選したことが記されている。
<地方自治法第92条2項の規定に抵触した事例について>
1 岩手県宮古市
岩手県宮古市議員が取締役を務める建設会社が市からの土木・建設工事を請け負ったことが分かり、地方自治法第92条2項の禁止規定に該当すると判断され、失職。
・「宮古市議会「資格なし」松本氏失職 兼業禁止、全会一致で可決 /岩手」
平成28年(2016年)12月8日「毎日新聞」地方版
・「松本・宮古市議、辞職願を提出 兼業禁止に抵触か/岩手県」
平成28年(2016年)12月2日「朝日新聞」朝刊27面[岩手全県・1地方]
・「平成28年12月宮古市議会定例会会議録第1号」平成28年12月7日(水)
該当箇所は「日程第3、資格決定について」
2 北海道函館市
函館市教育委員会が根崎公園ラグビー場の維持管理業務を委託する函館市ラグビーフットボール協会の会長に議員が就いていたことについての事例。
調査の結果、当該議員が過去に「議員の兼業禁止」に抵触していたとの結論が出されているが、調査開始時点では市との間の委託業務契約が締結されていなかったこと、議員の改選期を迎えていたことから失職とはならなかったが辞職勧告決議案が可決された。
・函館市「市民の声」「函館市ラグビーフットボール協会における地方自治法の議員兼務禁止について」
に概要と経過がまとめられている。
・函館市「市民の声」「議員の兼業禁止問題について」令和2年3月18日回答
・「工藤篤・函館市議に辞職勧告 市議会「兼業禁止に抵触」/北海道」
令和元年(2019年)9月13日「朝日新聞」朝刊23面[1道]
・「令和元年第3回函館市議会定例会会議録 第2号」令和元年(2019年)9月12日(木)
「本日の会議に付した事件」に「決議案第1号」があり、会の最後の議題。ブラウザの検索機能(Ctrl+F)で「辞職勧告」と検索し、2つ目の検索箇所以降が該当部分。
3 埼玉県毛呂山町[もろやままち]
議員と区長の兼業に関して、区長の職務に営利性は認められず、当該普通地方公共団体に対し請負をするものに該当しないと判断された事例。
・「毛呂山町 平成29年第3回(9月)定例会 09月08日-05号」
決議の際の議論の様子は、p.174 「△発議第2号 地方自治法第92条の2の規定に毛呂山町議会議長 長
瀬衛議員が該当する事実関係がある旨及び議員資格の決定について」以降の部分。
4 広島県府中市
直接地方自治法第92条2項の規定に抵触した事例ではないが、同市議員政治倫理条例第4条で、議員だけでなく「2親等以内の親族」が経営する企業も「市の工事等の請負契約及び委託契約を辞退しなければならない」としている点に抵触し、この条例が憲法に違反するか否か裁判を行った。
参考:府中市議会議員政治倫理条例(府中市(広島県)「府中市例規集」)
1)決議について
平成20年(2008年)3月に同市の政治倫理条例に抵触したとして平成20年 第6回定例会(第5号
12月16日)で同市議会議員に対して「議員辞職決議」がされる。この決議に至った理由としては、
同市の政治倫理条例では議員の2親等以内の親族が経営する企業が受注することを制約しているが、
当該議員の兄が経営する土木建設会社が市の発注した道路工事を受注したことについて、言及している。
この日の日程に掲載されていない発言No,143以降の「決議案第3号」が該当する部分。
なお、翌平成21年3月2日開会の第1回定例会の出席者に同議員の名前があることから、
辞職勧告決議は可決されたものの、その日に議員資格を失ったわけではないと思われる。
2)裁判について
当該議員がこの辞職勧告決議を受け、決議の根拠となっている市の倫理条例が憲法に定める経済活動
の自由に反するとして市を相手に損害賠償を求めて提訴したが、訴えは退けられ、市の勝訴になって
いる。控訴審で条例は違憲であるとの判断があったが、上告審の判決では条例は違憲ではないとの判断
があり、差戻控訴審を行った経過がある。それぞれの判決文案内した。また、最高裁判所の判例における
憲法に違反するか否かの判断については『判例タイムス』に解説を紹介した。
・第一審 平成22年11月9日/広島地方裁判所/判決/平成20(ワ)2499号...等
・控訴審 平成23年10月28日/広島高等裁判所/第2部/判決/平成22(ネ)536号
・上告審 平成26年5月27日/最高裁判所第三小法廷/判決/平成24(オ)888号
<解説>
『判例タイムス』1405号p.83-86(判決文もこの中に掲載されている。)
・差戻控訴審 平成26年11月12日/広島高等裁判所/第3部/判決/平成26年(ネ)193号
・差戻上告審 平成27年9月10日/最高裁判所第一小法廷/決定/平成27年(受)360号
5 長野県高森町
町議会が議員のなり手不足対策として、兼業制限の緩和を検討しているという内容。
・「<統一地方選>兼業制限の緩和、高森町会が検討 町条例の町発注事業巡る規程
契約辞退「2親等以内」→「本人のみ」」
2019年1月4日朝刊 第4面
現在の町政治倫理条例では議員の「第2親等以内の親族」も町の発注事業の請負契約や物品納入契
約を辞退することになっているが、この部分について「本人のみ」と変更することを検討しており、
町議会側は緩和をしても地方自治法の定める兼職兼業禁止の範囲内としている。
上記と合わせて、『地方自治月報』第59号 総務省の「3.議会関係(14)議員の兼業禁止規定の該当事例に関する調 (平成28年4月1日から平成30年3月31日まで)」に、該当期間において地方自治法で定められた兼業禁止に抵触した事例がまとまっていたため、これを紹介した。他の号にも掲載がある。
- 回答プロセス
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1 朝日新聞の当該記事を当館契約の「聞蔵II(現・朝日クロスサーチ)」で確認する。兼業禁止規定は町村議員のなり手不足と関連して、総務省の研究会で議論されていることが記されている。
2 web上を「馬路村 議員議員の兼業禁止規定」で検索すると、総務省のサイトで公開しているらしいPDFファイル 議員の兼業禁止規定の該当事例に関する調がヒットした。総務省のサイトで検索し直すと、『地方自治月報』第59号に掲載されたものとわかった。
3 2のファイルに掲載されている自治体の事例をいくつか調べていく。議事録が検索できる自治体の議会サイトを見る。
・「宮古市議会 会議録検索システム」を閲覧。
・函館市「会議録検索システム」を閲覧。
・府中市「会議録検索システム」を閲覧。
4 裁判となった事例もあったため、裁判所全体に関わる情報や判例情報を掲載している裁判所のウェブサイト「裁判例検索」で判例を調べる。
5 県内事例を調べる。「信濃毎日新聞データベース」で「議員 兼業」と検索する。
<調査資料>
・『地方議会議員ハンドブック』全国市議会議長会著 ぎょうせい 2007【318.4/ゼン】
・『こんなときどうする? Q&A選挙運動早わかり』全国町村議会議長会編 学陽書房 2020【318.4/ゼン】
・『地方議員を問う』梅本清一著 論創社 2017【318.4/ウセ】
・『問答式選挙運動早わかり』 全国町村議会議長会編 学陽書房 2007【318.4/ゼン】
・『議員のなり手不足問題の深刻化を乗り越えて』江藤 俊昭著 公人の友社 2019【318.14/エト】
・「D1-Law 法情報総合データベース」第一法規[商用データベース]
- 事前調査事項
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高知県馬路村については朝日新聞の記事を見ている。
- NDC
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- 地方自治.地方行政 (318 10版)
- 参考資料
- キーワード
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- 議員の兼業禁止規定
- 地方議会
- 議員のなり手不足対策
- 地方自治法
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介 事実調査
- 内容種別
- 質問者区分
- 図書館
- 登録番号
- 1000325238