レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2023年05月09日
- 登録日時
- 2023/07/20 16:01
- 更新日時
- 2023/07/25 16:53
- 管理番号
- 000011055
- 質問
-
解決
山口県の紹介として、「(山口県は)大きくは、瀬戸内海沿岸地域、内陸山間地域、日本海沿岸地域の3つに分けられ」とされることが多いが、その根拠、及び、各々の地域に含まれる市町が知りたい。
- 回答
-
今回調査した限りでは、山口県を「瀬戸内海沿岸地域」「内陸山間地域」「日本海沿岸地域」の3つに分けること(以下、3区分という。)は、昭和24年(1949年)ごろから行われている。また、区分は、地形又は気候に基づくものとされ、各区分にどの市町(村)が含まれるかは明確でない。
今回調査した中で、3区分の例として最も早いものは、下記資料1『県勢概要 昭和24年』で、昭和24年(1949年)3月発行。同書p132-134では、県の気候の特徴を「中央山間部」「瀬戸内海沿岸部」「日本海沿岸部」に分けて説明している。それぞれに含まれる市町村名・地域名は明確にされていない。
同時期のものとして資料2『山口県新誌』があり、同書p126-143で、山口県の「地域区分」として「内海沿岸地域」「日本海沿岸地域」「内陸山間地域」に分けている。資料3によると、著者は地理学者で、後に山口大学名誉教授となった人物。また、同書では、この区分は市町村のような行政区画によるものではなく、「場所がらや舞台の相違」に基づくもの、としている。同書p127に地域区分の表及び図があり、各区分に含まれる地域(市町村ではない。)がどこか、大まかに分かるようになっている。区分は以下のとおり。
なお、同書以外に、各区分に含まれる地域を明示した資料は見当たらなかった。
「内海沿岸地域」は、「大島地方」、「周東沿岸(岩国地方、柳井地方)」、「周南沿岸(徳山下松地方、防府小郡地方)」、「長門沿岸(宇部地方、下関地方)」からなる。
「日本海沿岸地域」は、「響灘沿岸」、「大津沿岸(油谷湾地方、仙崎地方)」、「阿武沿岸(萩地方、須佐地方)」からなる。
「内陸山間地域」は、「周防山地(周南丘陵、山代地方、前山代地方、徳地地方、山口地方)」、「長門山地(厚狭地方、美祢地方、豊浦地方)」、「阿武山地(西阿武地方、東阿武地方)」からなる。
この資料は、国立国会図書館が電子化して“国立国会図書館デジタルコレクション”に収録されており、同館の個人登録を行うか、図書館向けデジタル化資料送信サービスに参加している図書館で、インターネットを介して利用できる。
『郷土新書』第35,日本書院,1949. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/2984572/1/67 (参照 2023-05-06)
なお、当館所蔵の『山口県新誌』は、昭和25年(1950年)2月発行となっているが、“国立国会図書館デジタルコレクション”の『山口県新誌』は、昭和24年(1949年)12月刊行となっている。
また、『山口県統計書』(現『山口県統計年鑑』の前身)でも、資料4昭和26年版(昭和27年(1952年)3月刊)の「総説」p1の気候の部分に「大体の気候条件に基いて瀬戸内沿岸、日本海沿岸及び内陸山間部に三区分される。」とある。
同様に、資料5昭和27年版(昭和28年(1953年)3月刊)では、「総説」p1に「中国地方を東西に走る中国山脈の西端が本県の背梁をなしており、それから分かれ出る支脈により、内海沿岸地域、日本海沿岸地域及び内陸山間地域を形成している。」とある。
『山口県統計書』に見える3区分は、昭和33年(1958年)3月に『山口県統計年鑑』(資料6)にタイトルを変更して刊行された際、概説部分が記載されなくなったために見られなくなった。しかし、次の年には記載が復活しており(資料7)、資料8で再び記載されなくなっている。しかし、県の長期計画である資料9にも、資料4と同様の記述があり、このころには定着した言いまわしになったものと思われる。
なお、資料1の戦前版に当たると思われる『山口県勢概要 昭和5-9年版の「地勢」「気象」の項を確認したが、3区分についての記載はなかった。また、“国立国会図書館デジタルコレクション”で「内陸山間地域」の語で検索したところ、資料2よりも古い資料はヒットしなかった。したがって、3区分は戦後のものである可能性がある。
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
-
- 地理.地誌.紀行 (290 9版)
- 参考資料
-
-
1.山口県・知事公室 , 山口県・知事公室. 県勢概要 昭和24年. 山口県知事公室, 1949.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I060439512-00 (p132-134) -
2.浜田 清吉/著. 山口県新誌. 日本書院, 1950. (郷土新書 35)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I070890496-00 (p126-143) -
3.中西輝磨 著 , 中西, 輝磨, 1931-. 昭和山口県人物誌. マツノ書店, 1990.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002080198-00 (p219) -
4.山口県 , 山口県. 山口県統計書 昭和26年. 山口県, 1952.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I060439455-00 (p1) -
5.山口県 , 山口県. 山口県統計書 昭和27年. 山口県, 1953.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I064839127-00 (p1) -
6.山口県統計課 編 , 山口県統計課. 山口県統計年鑑 昭和31年. 山口県統計課, 1958.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I060439472-00 -
7.山口県統計課 編 , 山口県統計課. 山口県統計年鑑 昭和32年. 山口県統計課, 1959.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I060439473-00 (p6) -
8.山口県総務部統計課 編 , 山口県総務部統計課. 山口県統計年鑑 [昭和39年]. 山口県総務部統計課, 1966.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I060439495-00 -
9.山口県 編 , 山口県. 山口県勢振興の長期展望. 山口県, 1962.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I060340236-00 (p7) -
10.山口県 , 山口県. 山口県勢概要 昭和5年〜9年. 山口県知事官房, 1930.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I060439510-00
-
1.山口県・知事公室 , 山口県・知事公室. 県勢概要 昭和24年. 山口県知事公室, 1949.
- キーワード
-
- 山口県--歴史地理
- 山口県--地誌
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 郷土 地名
- 質問者区分
- 団体
- 登録番号
- 1000336153