レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2021/07/30
- 登録日時
- 2021/09/03 00:30
- 更新日時
- 2021/09/03 00:30
- 管理番号
- 6001048790
- 質問
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解決
ドイツの作家、ハインリッヒ・クローレン(Heinrich Clauren)について書かれた資料はないか。
- 回答
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「クローレン」もしくは「クラウレン」で人名事典や文学事典を調査したが、日本語で書かれた資料は見当たらなかった。英語で書かれた次の資料を紹介。
・『The Oxford companion to German literature』(by Henry and Mary Garland Clarendon Press Oxford c1976)
p.134-135 CLAUREN,HEINRICH
Heinrich Claurenは筆名で、本名はKarl Gottlieb Samuel Heun(1771-1854)。※Karlの綴りは原文ママ
ベルリンで生まれた。筆名のClaurenはCarl Heunのアナグラム。プロイセンの公務員として人生の大半を過ごした、等の情報あり。
通俗小説の書き手であるクローレン(以下、クラウレンとする)は、一般的なドイツ文学関連の本ではほとんど触れられていない。前述の資料でも説明の大部分を割かれている通り、クラウレンについては、ヴィルヘルム・ハウフによる批判から始まる通俗小説と芸術性に重きを置く従来の文学との対立の文脈で言及されることがほとんどで、そういった内容が書かれた資料や論文をいくつか紹介。
(図書)
・『ドイツ言語文化と社会 : 作家・思想家たちの軌跡」(中谷彰/[ほか]著 北樹出版 1994.2)
「第三章 ヴィルヘルム・ハウフと読者の世界」(p.76-106)の中で19世紀前半の人気作家の一人としてH.クラウレンに言及している。「クラウレンとその読者たち」(p.96-98)ではクラウレンの作品や人気について説明し、続く「パロディー『月のなかの男』」(p.98-100)、「『論難のための説教』」(p.100-102)では、ハウフが書いたクラウレンの作品のパロディから発生した事件や、それをきっかけに幅広い読者層を持っていたクラウレンの人気が下がり、下層階級の読者に向けた作品を書くようになっていった顛末について書かれている。
・『若き日の森鷗外』(小堀桂一郎/著 東京大學出版會 1969.10)
p.365-371ドイツ留学時代の森鷗外は、クラウレンのレクラム文庫版『ミミリ』を入手。その所蔵本『ミミリ』に、鷗外が「春水々々、不圖獨逸國中又見女」と書き込み、その「為永春水顔負けの、あぶな絵的表現に辟易した」というところから、著者がハウフによるクラウレンへの攻撃について言及。p.369-371には、ハウフの説を支持した鷗外によるクラウレン論「毒を以て毒を制す」の全文を引用掲載している。
(論文)
・中谷彰「H.クラウレンの「ミミリー」とその読者たち」『九州共立大学紀要』53(九州共立大学経済学会 1992.8) p.151-163
国立国会図書館デジタルコレクション(図書館送信参加館内公開)で閲覧可能。(2021/7/30現在)
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1755318/78
ID: 000000026871 コマ番号:78-84
当時の社会情勢やクラウレンの『ミミリー』受容の状況から、19世紀ドイツにおける「ポピュラーな」文学の読者界について論じている。
次の資料の補論となっているようだが、『西日本ドイツ文学』の内容は未確認。
・中谷彰「「ミミリー様式」との対決-ヴィルヘルム・ハウフのH.クラウレン批判に見るtrivialな文学の価値評価について」『西日本ドイツ文学』4(日本独文学会西日本支部 1992.11)
・識名章喜「「野盗(おいはぎ)の城」と「アッシャー家の崩壊」 : H.クラウレンとE.A.ポーをつないだ翻訳について (巽孝之教授 退任記念論文集)」『藝文研究』119(1) p.121-138(慶應義塾大学藝文学会 2020)
クラウレンは、英国ゴシック小説への影響についても言及されていることがあり、本論文はクラウレンの“ Das Raubschloß ” (「野盗(おいはぎ)の城」)とE.A.ポーの「アッシャー家の没落」と、物語のうえでの類似点について論じている。p.126-128「3.ハインリヒ・クラウレンについて」で、クラウレンについても説明あり。
慶應義塾大学学術情報リポジトリで公開。(2021/7/30現在)
https://koara.lib.keio.ac.jp/xoonips/modules/xoonips/detail.php?koara_id=AN00072643-01190001-0121&ml_lang=ja
[事例作成日:2021年7月30日]
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
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- 小説.物語 (943 10版)
- 参考資料
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- The Oxford companion to German literature by Henry and Mary Garland Clarendon Press c1976 (134-135)
- ドイツ言語文化と社会 中谷/彰∥[ほか]著 北樹出版 1994.2 (76-106、96-102)
- 若き日の森鷗外 小堀/桂一郎∥著 東京大學出版會 1969.10 (365-371)
- https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1755318/78 (国立国会図書館デジタルコレクション(図書館送信参加館内公開):中谷彰「H.クラウレンの「ミミリー」とその読者たち」(2021/7/30現在))
- https://koara.lib.keio.ac.jp/xoonips/modules/xoonips/detail.php?koara_id=AN00072643-01190001-0121&ml_lang=ja (慶應義塾大学学術情報リポジトリ:識名章喜「「野盗(おいはぎ)の城」と「アッシャー家の崩壊」(2021/7/30現在))
- キーワード
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- クラウレン(クラウレン)
- クローレン(クローレン)
- 通俗小説(ツウゾクショウセツ)
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 人物・団体
- 質問者区分
- 個人
- 登録番号
- 1000304182