レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2021/04/24
- 登録日時
- 2022/03/19 00:30
- 更新日時
- 2022/03/19 00:30
- 管理番号
- 6001054653
- 質問
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解決
江戸時代に大坂を観光や買い物などで訪れた人の紀行文や日記には、どのようなものがあるか。
- 回答
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江戸時代の紀行文や道中記で、当時の大坂の様子についてふれられている資料は以下のとおりです。
なお、宿泊など一時的な滞在によるものだけではなく、役務に伴う赴任等により大坂に長期間滞在した中で大坂の様子をまとめた資料も含んでいます。
■『西遊草』(清河八郎/著 岩波書店 1993.12)
庄内藩の清河八郎が安政2年(1855)、半年近くにわたり主に西日本を旅行した際に執筆した日記です。道中で大坂も訪れており、巻の四~巻の八(p.129-376)の一部に大坂を訪ねた際の記述が見られます(例:巻の六 六月朔日「・・・八ツ頃よりいで心斎橋通大丸屋にいたり、呉服もの二両弐分ばかり求とむ・・・」(p.232))
■『日本庶民生活史料集成』第2巻 探検・紀行・地誌 西国篇(谷川健一/編集委員代表 三一書房 1969.4)
・安田相郎/著「大和巡日記」(p.441-476)
同書の解題に「彼は藩主参覲のお供達深尾内匠(家老)の附属として、天保九年三月二十八日高知を出足、北山を越え、丸亀より室ノ津へ渡り、姫路、須磨を通り、伏見で一行に別れて、単身で大和を巡る。大坂からはいらないで、伏見から奈良に出たのは、貝原篤信の『和州巡覧記』によったためである。(中略)彼は比叡山を最後に、京都から大坂に出、閏四月十一日大坂出帆、十四日に高知に帰っている」などとあります(p.441-442)。
・富本繁太夫/著「筆満可勢」(p.557-608)
解題に「第三巻(東国篇)に収めた『筆満可勢』(一、二巻)の続巻で、天保六年五月から翌七年に及ぶ京坂滞留の日記である」とあります(p.557)。
※本資料に収録されているのは五巻になります。第三巻(東国篇)に収録されている一・二巻は東北から長岡までの記述が中心であり、三・四巻の所在は現存状況が不明のようです。
■『日本庶民生活史料集成』第8巻 見聞記(谷川健一/編集委員代表 三一書房 1973)
・久須美祐雋/著「浪花の風」(p.433-447)
大坂町奉行を勤めた著者が在職期間中の安政2年(1855)5月から文久3年(1863)8月までの間に任地大坂で見聞したことについてまとめられたものです。
解題には「大坂の庶民の生活が(中略)日常生活に密着し、具体的に江戸との対比の上で書かれている」とあります(p.433)。
■『日本庶民生活史料集成』第20巻 探檢・紀行・地誌(谷川健一/編集委員代表 三一書房 1972.7)
・菱屋平七/著「筑紫紀行」(p.155-262)
尾張の商人である著者が享和2年(1802)3月に名古屋を出発し、約4ヶ月にわたり京都・周防・九州などを巡った道中日記です。道中で大坂にも訪れています。
・「伊勢参宮献立道中記」(p.599-622)
弘化5年(1848)春、「讃岐国寒川郡神埼村の某」が志度ノ浦講中と伊勢参宮に赴いた際に料理屋、旅籠屋、街道の名物、各地の名所旧蹟、寺社詣りなどについて記した道中日記です。解題には「京、大坂見物を中心に旅程の大半を費やしている」とあります(p.599)。
■『江戸後期紀行文学全集 第2巻 新典社研究叢書』(津本信博/[編]著 新典社 2013.9)
・大堀守雄/著「蜻蜒百首道の記」(p.279-304)
天保10年(1839)に彦根から讃岐金比羅への道中記です。文中に「・・・天満ノ天神にまゐりぬ しばゐなどもありてにぎはひぬ・・・」(p.285)など大坂に関する記述が一部あります。
・松岡行義/著「かりの冥途」(p.349-357)
執筆年は不明(同書の解題には天保10年(1839)から嘉永元年(1848)までの間とあります)ですが、作者が君主の命により江戸から久留米に至る道中に記した旅日記で、文中に難波の記述が見られます。
■『江戸後期紀行文学全集 第3巻 新典社研究叢書』(津本信博/[編]著 新典社 2015.7)
・伴林光平/作「野山の歎き」(p.115-133)
著者が和泉国・河内国・大和国にある御陵の踏査に行った際、見聞したことや詠んだ歌をまとめたものです。
■『蜀山人全集 巻1 新百家説林』([大田南畝/著] 吉川弘文館 1907)
太田南畝の全集です。享和元年(1801)3月から12月までの大坂滞在期間中、神社や仏閣などについて記した「葦の若葉」(p.53-130)などが収録されています。
なお、本資料は「国立国会図書館デジタルコレクション」でもご覧いただけます。
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/993336
■『大坂見聞録 関宿藩士池田正樹の難波探訪』(渡辺忠司/著 東方出版 2001.7)
資料そのものの翻刻ではなく、関宿藩の藩士池田正樹が大坂市中に滞在中に大坂の風聞を書き留め、近辺の史跡や寺社についてまとめた『難波噺』を題材に現在地を訪ね歩き、紹介した資料です。
■『随筆百花苑 第14巻』(森銑三/[ほか]編 中央公論社 1981.10)
・池田正樹/著「難波噺」(p.37-169)
前述の資料です。解題に「大阪の風物や風俗を江戸と比較して捉えようとしたところに特色がある」(p.424)とあります。
・久須美祐雋/著「在阪漫録」(p.289-358)
大坂西町奉行として在阪した久須美祐雋が大坂で見聞したことを書き綴った随筆です。内山彦次郎、坂本鉉之助等、親交のあった人々についての記載もあります。
■『近世紀行日記文学集成 1』(津本信博/編著 早稲田大学出版部 1993.2)
・深草元政/著「温泉遊草」(p.70-88)
有馬温泉を訪ねた際の紀行文で、途中で天王寺、住吉を訪れています。
■『近世紀行日記文学集成 2』(津本信博/編著 早稲田大学出版部 1994.9)
・今村楽/著「天路の橋」(p.443-444)
著者が京都を出発して難波の藩邸で船を待つまでの歌文が綴られています。
[事例作成日:2022年3月7日]
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
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- 日本 (291 10版)
- 参考資料
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- 西遊草 清河/八郎∥著 岩波書店 1993.12 (p.129-376)
- 日本庶民生活史料集成 第2巻 三一書房 1969.4 (p.441-476,557-608)
- 日本庶民生活史料集成 第8巻 三一書房 1973 (p.433-447)
- 日本庶民生活史料集成 第20巻 谷川/健一∥編集委員代表 三一書房 1972.7 (p.155-262,599-622)
- 江戸後期紀行文学全集 第2巻 津本/信博∥[編]著 新典社 2013.9 (p.279-304,349-357)
- 江戸後期紀行文学全集 第3巻 津本/信博‖[編]著 新典社 2015.7 (p.115-133)
- 蜀山人全集 巻1 [大田/南畝∥著] 吉川弘文館 1907
- 大坂見聞録 渡辺/忠司∥著 東方出版 2001.7
- 随筆百花苑 第14巻 森/銑三∥[ほか]編 中央公論社 1981.10
- 近世紀行日記文学集成 2 津本/信博∥編著 早稲田大学出版部 1994.9 (p.443-444)
- 近世紀行日記文学集成 1 津本/信博∥編著 早稲田大学出版部 1993.2 (p.70-88)
- https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/993336 (国立国会図書館デジタルコレクション『蜀山人全集 巻1 新百家説林』)
- https://www.library.pref.osaka.jp/nakato/shotenji/43_kou.html (大阪府立中之島図書館小展示「浪花講定宿帳と道中記」)
- https://www.library.pref.osaka.jp/nakato/shotenji/85_trip.html (大阪府立中之島図書館小展示「近世大坂の旅」)
- https://www.library.pref.osaka.jp/nakato/shotenji/67_shoko.html (大阪府立中之島図書館小展示「江戸・明治の大阪買物案内」)
- キーワード
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 大阪
- 質問者区分
- 個人
- 登録番号
- 1000313780